arkⅡ

たける

文字の大きさ
上 下
18 / 31
3.

しおりを挟む
『彼がバルサだ!』

そうブフムが言った。

「と言う事は、現在指揮を取っているのは別の者なのですね?貴方が向かわせた者の中に、反逆者がいたのです」

冷静にファイがそう告げると、ブフムは椅子を叩いた。

『どうしてだ……!どうしてこんな事に!』

酷く狼狽しているブフムを見遣りながら、ファイはストレッチャーに布を彼せた。

「事態は非常に悪い方へ向いていると言わざるを得ません。ブフムさん、教えて頂けますね?寄生された者を救う方法を」

相手は崩れた。ワイズの頭の中では、何故かチェックメイト、とファイの呟く声が聞こえた気がした。

『分かりました……お教えします。ですからファイ副艦長。バルサを殺した反逆者を必ず捕まえて下さい』

ブフムは涙に濡れた黒目でファイを見つめた。

「彼は……」

バルサが死んだ理由についてワイズが述べようとすると、それをファイが素早く制した。

「船医長、彼等の弔いをお願いします」

ちらりとワイズを振り返るファイの目が、いつも以上に無感情に見える。

「わ……分かった」

それ以上何も言えなくなったワイズは、仕方がなくストレッチャーを押しながらメインブリッジを出た。


──バルサが死んだ理由は、反逆者が殺した訳ではない。


危険を察知したサカリア人の体が突然起き上がり、ワイズへと襲い掛かろうとした。そこへファイが駆け付け、フェイザー銃で彼を撃ったのだ。そして、気絶しているものと思っていたワイズが近付いた瞬間、彼は赤紫の血を吐いて絶命した。
元々、麻酔をかけて弱っていたところへフェイザーを浴びせた体は、そのショックに堪えられなかったのだ。
医務室へ入ったワイズは、ストレッチャーの前で指を組んだ。




しおりを挟む

処理中です...