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たける

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休んでいた候補生達も含め、乗船しているクルー達は全員持ち場へと配備された。あわてふためくクルー達の中、ファイだけは冷静だった。原因が解明されない内は、手の打ちようもない。だが、表情にこそ出さないまでも、その内面は酷く狼狽えていた。


──ルドルフ号は攻撃を受けているが、ラナフ号はどうだろう?


父は現在、そのルドルフ号にいるらしい。だがそこの艦長タルトは、母の親友だと聞いている。それなら安全だろうか。
考えを巡らせながらもワープ準備が整うと、ファイは艦長を振り返った。

「艦長、準備が整いました。直ちに発進準備に取り掛かります」

コンソールを叩き、全部署の準備が調っている事を確認すると、今度は操舵席に着くハンク・デルマへと視線を向けた。それを合図に、デルマはワープを開始した。途端メインブリッジに映る景色はまばゆい光を受け、一瞬だけ航宙艦が揺れた。

「目的座標到着まで2分です」

そうデルマが報告すると、ピサロは司令席にあるコンソールを叩いた。

「エンジンの調子はどうだ?ディック」
『上々であります艦長!』

スピーカーからそう応答があり、次いでピサロは副艦長を見遣った。

「到着してすぐ戦闘になるかも知れん。シールドを上げておいてくれ」
「はい、艦長」
「ミューズ、戦闘準備を」

そう戦術士官に伝えると、艦長はそわそわしながら座り直した。ジョシュはそんなピサロの側に立ちながら、仲間達の動きを見つめていた。

「到着5秒前!……3……2……1……」

まばゆい光が消えたかと思うと、目の前に破壊されたルドルフ号の破片が浮遊していた。そんな破片の中心では、まさに撃墜されようとするルドルフ号が、応戦を試みようと必死になって体制を整えているところだった。
だがジョシュが目を見開いたのは、シールドの高さに定評があるルドルフ号の大破ではなく、攻撃を仕掛けているのが、同じ宇宙連邦に所属しているラナフ号である事実だった。

「何故ラナフ号が?」
「攻擊用意……!」

ジョシュの言葉はすぐに掻き消され、皆戦闘態勢に入った。

「攻撃照準、ラナフ号に合わせました!」

戦術士のミューズがそう言うなり、ピサロは発射命令を出した。

「攻撃開始……!」




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