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たける

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大きく揺れる艦はあちこちで爆発を起こし、アラームは鳴り続けている。メイン・システムも警報を鳴らし、システムダウンを悲しげに告げていた。


──ラナフ号はもう撃沈する。


ロンは副農長として、タルトに代わり最後の命令を下した。

「全士官に告ぐ!ただちに当艦から脱出せよ!繰り返す!ラナフ号はもうすぐ壊滅する!ただちに小型宇宙船に乗り脱出せよ!」

メインブリッジにいる士官達も席を立つ。が、ロン達を気にしてなかなか立ち去ろうとはしない。それを見たロンは、彼等に先に行けと命令した。そしてメインブリッジにタルトと2人だけになると、ロンはそっと艦長に告げた。

「艦長、すみません。もうラナフは持たない……」

自身の腕の中でタルトが震える理由が、怒りでなのか悲しみでなのかはロンには判別がつかなかった。

「あのガキ……許さない!」

忌ま忌ましい若者の顔は忘れはしない。

「艦長、我々も早く脱出しましょう」

タルトが立ち上がるのを助けてから、ロンはコンソールに向かった。するとラナフ号が受けているダメージが70%だと分かった。急いでタッチパネルを叩き、全てのシステムをメインブリッジに集結させる。
また艦が大きく揺れた。

「ロン、貴方は逃げなさい。アタシはここに残るわ」

そうタルトは言い、司令席に着いた。するとロンが慌てて側に寄って来た。

「そんな事出来ません!貴女を置いて行くなど」

このまま小型宇宙船で逃げ、アカデミーに戻ったら、タルトは宇宙連邦評議会で審議され、まず艦長の地位を失うだろう。そして宇宙艦隊からの除名。最後は被害の規模から言って、地球外追放だ。だからと言って故郷には帰りたくない。

「貴方を巻き込んでしまって申し訳なく思ってるわ。だからロン、評議会に呼ばれたら、艦長に脅迫されてやったと言いなさい。そうしたら罪は軽くなる」

そう言って笑って見せたが、副艦長はメインブリッジから出て行こうとはしなかった。代わりにタルトの手を強く握り、初めて見せる悲しい顔を向けてきた。

「私は貴女が好きです……愛している女性を見殺しになど出来ません……!」
「ロン……?」

驚きに目を丸くするタルトを抱き寄せ、ロンは崩れ行くラナフ号と共に宇宙に散る覚悟をした。

「愛してます、艦長……」
「貴方……本当バカよね。でも嬉しいわ。貴方がアタシの副藤長でよかった。ありがとう……ロン」

タルトもロンに腕を回した。小柄な男だと思っていたが、こんなにも逞しい背中をしていたのか。
やがてアラームは止み、照明も消えた。空調システムも作動しなくなるまでに、多分あと5分もない。それまでには全システムはダウンするだろう。
終わりだ。タルトは目を閉じた。




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