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たける

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5.

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転送台に4つのシルエットが見え始め、カールは腰を浮かせた。ジョシュは難題を成功させたのだ。

「戻ったぞ!おい、みんな!4人が戻ったぞー!」

インターコムに向けて叫ぶと、シルエットの1つが揺らぎ倒れた。

「艦長……!ピサロ艦長、しっかりして下さい!」

やがて4つがそれぞれの形を完成させると、倒れたのがピサロ艦長だと分かった。

「ワイズ!転送室まで今すぐ来てくれ!艦長が大怪我だ!」

ジョシュがそう叫ぶ。その横では、ファイが父親を抱えていた。

「父さん……意識を保って下さい。早急に治療しますから」

そう声をかけるが、リチャードの目は閉じられたままだった。

「父さん、ファイです。地球へ一緒に帰りましょう。母さんが待ってますよ」

聞いていられない。ジョシュは思わず顔を背けたくなったが、それを唇を噛み締めて堪えた。自分の腕の中でも、ピサロが息も絶え絶えだ。

「医療班が手術室で待機してる!」

そう言いながらワイズが飛び込んできた。その後ろからは、ストレッチャーを担いだ医療班が続いている。

「そっちも怪我をしてるじゃないか!」

ピサロがストレッチャーに乗せられる。だがファイ副長の腕の中にも、酷い怪我を負った男がいた。多分彼の父のリチャード・ムーアだろう。

「いえ、こちらはもう手術の必要はありません」

そうファイが静かに言った。ワイズは確認するようにムーアの脈診をしたが、彼にはもうそれはなかった。

「ファイ副艦長……」

何と言えば分からない。ただお悔やみを言うのは簡単だが、ワイズはそれすら言えなかった。

「早くピサロ艦長の治療をお願いします」

顔を上げたファイは、相変わらずのクールさだった。

「わ……分かった……!」

ストレッチャーが運ばれていき、ワイズも転送室を出た。そして拳を強く握りしめた。
ピサロ艦長は必ず助けてみせる。




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