幻想序曲

たける

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第一章

2.

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「離れてろ」

男は屈んで岡野と芝草に言った。まだ20歳そこそこだろう。

「何だ君は」
「いいから」

渋々2人は離れた。どうするつもりなのだろうか。スーツ姿の男の後ろを見ていた。
男はおもむろに、懐から鞘に入った短剣を取り出した。鞘には白蛇の装飾がなされ、その他は真っ黒にぬりつぶされている。
男は鞘から短剣を引き抜き、帝の足首の側に突き立てた。皆はアッと声を立てた。骨の手が見えたのだ。コンクリートをすり抜け、帝の足首をしっかり掴んでいる。

「青山帝に憑きし悪しきモノよ、この剣の力を持って封印する」

ブツブツと呪文のように唱えると、骨の手が帝から離れた。2人は慌てて帝を抱え上げた。
骨の手は狂ったように指を動かしていたが、やがてコンクリートから骸骨が出て来た。
骨の手の主だ。
男は短剣を骨の手から抜き、今度は骸骨の頭に突き立てた。骸骨は叫んだ。その叫び声に帝は目を覚ました。

「みかどぉぉぉ、苦しいよぅぅぅ」

頭が痛くなるような嫌な声だった。

「まだくたばっていないのか」
「……!兄貴!ちょっと、アンタ何すんねん!」

帝は2人の元から離れ、男の肩を掴んだ。男は振り返り、帝を睨んだ。

「帝、お前にはこいつが兄に見えるのか?」

男は肩を掴んでいる帝の手を掴み、短剣に触れさせた。

「あ……ちゃう、兄貴とちゃう。何やの、こいつ」
「こいつは帝についていたモノだ」
「みかどぉぉぉ、助けてぇ」

骸骨が手を伸ばしてきた。帝は短剣から手を離し、後ずさった。

「いやや、あんたは兄貴とちゃう!」
「滅せよ」

素早くて回りの者には分からないだろうが、帝は男が短剣をもう一押しする前に、手に光るものを作り出したのを見た。あれは何や?中国のきこう・・・とかいうやつか。しかし考えるよりも先に、目の前で骸骨は灰になって消えた。回りから拍手が起こった。

「君、もう大丈夫か?」

岡野が尋ねた。それに帝はハイと答えた。

「もう大丈夫です」
「そうか、じゃあ気をつけて帰りなさい」
「はい、ありがとうございます」

帝は深々と頭を下げた。岡野と芝草は、それじゃあと言って芝草の乗ってきた車に乗り込み、正門を出て行った。2人はそれを見ていた。ふと気がつくと、回りを囲んでいた人々もいなくなっていた。




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