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第三章
2.
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「!」
澤木は立ち上がった。顔は青ざめている。
──何だ、骨が家に入ってくるじゃないか。なのに、どうして、どうして骨なのに、僕の結界に入っても灰にならないんだ?
澤木は客室の扉を見つめていた。
「どないしたん?」
帝は不思護そうに澤木を見ていたが、急に扉が開けられたので、そちらに視線を移した。
「帝、それに茂。聖だ」
そう言って通された聖は、少しおどおどしていた。
「兄貴?」
帝はソファから飛び上がった。
──間にあわんかったって言うとったんちゃうん?でも、実際に兄貴は目の前におるし。一体どないなったんや?
「帝、やっぱりここにいたんだね。家に帰ってもいなかったから、心配して」
「おい拓巳、この聖って人、骨じゃないか。なのにどうして?どうして結界にも入れたのさ」
「やっぱり骨か。しかしな、聖なんだよ。アイツらに骨にされたんだ。オレもどうしていいか分からなくて、一か八かで家に入れたんだが……灰にはならなかった」
「兄貴、大丈夫なん?」
「何がだい?」
細い日を更に細めて、聖が言った。
「大丈夫やったらいいんやけど」
「帝、帰ろう。もう時刻も時刻だし」
「そ、そやな」
帝は2人を見た。2人は何かをひそひそと小声で話し合っている。何を言うてんねんやろう?じっと見つめた。すると藤崎が視線に気がついたのか、ふと顔を上げた。
「帰ってはいけないからな、帝」
「何でやのん。折角兄貴が迎えに来てくれたのに」
横目で聖を見た。聖はキョロキョロとしている。
「きっきも言っただろ、オレは間に合わなかったんだ。そこにいるのは聖であって聖じゃないんだ。見てろ」
そう言って藤崎は、澤木に目で合図を送った。それにおずおずと頷き、なにやら円陣を宙で描いた。
「何をするつもりや」
「あ……!」
聖がしゃがみ込んだ。その表情は苦しそうに歪んでいる。しゃがんだ足元に、青白い円陣が現れた。
「いいか帝、辛いだろうけどこれが真実なんだ。しっかり受け止めろ」
「真実?」
「み……かど……おお」
ドロリと聖の肉が落ちた。床にベチャベチャと落ちていく。帝は後ずさった。次々に落ちる。骨が見え始めた。
「あぁ……兄貴!」
両手で顔を覆って叫んだ。叫びの合間に、聖であった骨の音が聞こえる。
──カタカタカタ
「顔を隠すんじゃない。しっかり見るんだ帝。君の兄はもう死んでいる。ここにいるのは、もう昔の聖じゃないんだ!」
「信じへん!そんなん嘘や、兄貴がもうおらへんなんて!」
こんな事で大丈夫なのだろうか。一筋の不安が藤崎の心をかすめていった。こんな事、なんて言っては失礼なのだろうが、守らねばならないものはもっと大きいのだ。肉親が死んだからと言って、このようにしていられては守れない。もっと心身共に強くなってもらいたかった。しかし、無理かも知れない。まだ若いのだ、耐えられないのかも知れない。
いざとなったら、全く駄目なのかも知れない。1番重要なのに。全ては帝の力で左右してしまうかも知れないのだ。藤崎は誰に向けるでもなく、憎しみがこみ上げてくるのを感じた。自分に千里眼のようなものではなくて、帝のような破壊の力があったなら……
藤崎は唇を噛んだ。
やがて聖は骨になった。
澤木は立ち上がった。顔は青ざめている。
──何だ、骨が家に入ってくるじゃないか。なのに、どうして、どうして骨なのに、僕の結界に入っても灰にならないんだ?
澤木は客室の扉を見つめていた。
「どないしたん?」
帝は不思護そうに澤木を見ていたが、急に扉が開けられたので、そちらに視線を移した。
「帝、それに茂。聖だ」
そう言って通された聖は、少しおどおどしていた。
「兄貴?」
帝はソファから飛び上がった。
──間にあわんかったって言うとったんちゃうん?でも、実際に兄貴は目の前におるし。一体どないなったんや?
「帝、やっぱりここにいたんだね。家に帰ってもいなかったから、心配して」
「おい拓巳、この聖って人、骨じゃないか。なのにどうして?どうして結界にも入れたのさ」
「やっぱり骨か。しかしな、聖なんだよ。アイツらに骨にされたんだ。オレもどうしていいか分からなくて、一か八かで家に入れたんだが……灰にはならなかった」
「兄貴、大丈夫なん?」
「何がだい?」
細い日を更に細めて、聖が言った。
「大丈夫やったらいいんやけど」
「帝、帰ろう。もう時刻も時刻だし」
「そ、そやな」
帝は2人を見た。2人は何かをひそひそと小声で話し合っている。何を言うてんねんやろう?じっと見つめた。すると藤崎が視線に気がついたのか、ふと顔を上げた。
「帰ってはいけないからな、帝」
「何でやのん。折角兄貴が迎えに来てくれたのに」
横目で聖を見た。聖はキョロキョロとしている。
「きっきも言っただろ、オレは間に合わなかったんだ。そこにいるのは聖であって聖じゃないんだ。見てろ」
そう言って藤崎は、澤木に目で合図を送った。それにおずおずと頷き、なにやら円陣を宙で描いた。
「何をするつもりや」
「あ……!」
聖がしゃがみ込んだ。その表情は苦しそうに歪んでいる。しゃがんだ足元に、青白い円陣が現れた。
「いいか帝、辛いだろうけどこれが真実なんだ。しっかり受け止めろ」
「真実?」
「み……かど……おお」
ドロリと聖の肉が落ちた。床にベチャベチャと落ちていく。帝は後ずさった。次々に落ちる。骨が見え始めた。
「あぁ……兄貴!」
両手で顔を覆って叫んだ。叫びの合間に、聖であった骨の音が聞こえる。
──カタカタカタ
「顔を隠すんじゃない。しっかり見るんだ帝。君の兄はもう死んでいる。ここにいるのは、もう昔の聖じゃないんだ!」
「信じへん!そんなん嘘や、兄貴がもうおらへんなんて!」
こんな事で大丈夫なのだろうか。一筋の不安が藤崎の心をかすめていった。こんな事、なんて言っては失礼なのだろうが、守らねばならないものはもっと大きいのだ。肉親が死んだからと言って、このようにしていられては守れない。もっと心身共に強くなってもらいたかった。しかし、無理かも知れない。まだ若いのだ、耐えられないのかも知れない。
いざとなったら、全く駄目なのかも知れない。1番重要なのに。全ては帝の力で左右してしまうかも知れないのだ。藤崎は誰に向けるでもなく、憎しみがこみ上げてくるのを感じた。自分に千里眼のようなものではなくて、帝のような破壊の力があったなら……
藤崎は唇を噛んだ。
やがて聖は骨になった。
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