幻想序曲

たける

文字の大きさ
21 / 26
第五章

2.

しおりを挟む
骨の頭領を守るように、骸骨達は囲み、そして攻めてくる。いくらそいつらを灰にしても、骨の頭領が再生させてしまう。キリがなかった。次第に4人は疲れてきていた。

「美山さん、キリがないですよ。僕、もう駄目だ」
「本当にキリがないです。ここは骨の頭領を狙うしかないでしょう。オレら3人が回りを灰にしますから、美山さんが頭領をお願いします」

京助はなんとか頷いたが、心臓が悲鳴を上げている事は確かだった。持つのか?なんとしても持たせなければならない、なんとしても。
帝のぎこちなく危なっかしい力の使い方も、なんとかコツを掴んでいた。体力のない帝と澤木は、肩を忙しそうに上下させている。

「辛いだろうけどしっかりするんだ!」

頷く。

──カタカタカタ

3人は骸骨の群れの前へ飛び出した。それに少し遅れて京助が飛び出た。骸骨たちは次々に灰になり、再生していく。隙を見つけなければ。だが再生する骸骨の数も減ってきている。骨の頭領も疲れてきているのだ。どちらが先に参ってしまうのだろうか。京助はゴクリと唾を飲んだ。

「消えろ!」

帝が大きく叫んだ。すると帝の回りから幾つもの光る球ができ、骸骨達に向かって飛んでいく。その光に触れると、骸骨はいっぺんに灰になった。

「ミカド、イイナア。ハヤクソノノウリョクガホシイヨ」
「お前なんかにくれてたまるか!」

最初は50体程もいた骸骨達も、今はたったの10体程度に減っていた。

「美山さん、あと少しですがんばって……!」

京助はガクリと膝をつき、口元を手で押さえた。喉が熱い。何か湧き出てくる。

「ぐっっ……!」

大量の血が溢れ出た。体内だけの悲鳴が、ついに体外にも及んだのである。

「美山さん!」

3人が口々に叫んだ。骨の頭領は笑っている。

「モウオワリミタイダネ、ミヤマキョウスケ。ワタシヲコロセナカッタネ、カタキヲトレナカッタネ」

──カタカタカタ

悔しい、ここまできて自分は死ぬなんて。今の今までこいつらだけ、こいつらを倒すためだけに必死になって……

「ハァハァ……」
「美山さん、しっかりしてや。こんな中途半端なままで死ぬなんてアカン!」

帝は京助を抱え上げた──恐ろしく軽い──こう言ったものの、帝の目にも京助は、もうあと少しの命と言う事が分かっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...