幻想序曲

たける

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第五章

2.

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「帝さん……ありがとう。でも、分かっているでしょう?もう駄目なんです。これ程悔しい事はないでしょう。しかし駄目なのです」

震える手でペンダントを取り、帝に手渡した。唐佐和が下げていたペンダント、もうワタシが持っていても仕方がない。

「これ……?」
「ワタシの大切な人の形見なのですが、もうワタシが持っていても仕方がありません。貴女が持っていて下さい……」

微笑んだ。

「美山さん!」
「ヤットシンダ、ヤットシンダ!」

骸骨達は喜んだ。その姿を見て、3人の怒りは頂点に達した。その時、何かがフワリと降りてきた。神父だった。美しく白い羽を持った神父、彼は優しく微笑んでいる。まさかこの人が、美山さんの大切な人?

──京助様、お迎えに上がりました。

京助の体から魂だけが起き上がった。三人は見つめている。

──望さん、ありがとう。

最後に2人、は3人に向かってもう1度微笑み、天に昇っていった。

「美山さん……」

藤崎は、京助が生きている間に約束を果たせなかった事が悔しくて仕方がなかった。しかし、いつまでも悔いていても仕方がない。この戦いは、必ず勝つ。

「美山さん、幸せそうやったな」
「あぁ……勝つぞ絶対に」
「うん。もうあと僕達しかいないんだもんね」

──カタカタカタ

「タッタサンニンデナニガデキル!」

残りの骸骨達が襲いかかってきた。帝は京助を抱えたまま、見ていた。動けない。しかし藤崎と澤木が帝の前に立った。

「早く美山さんを!」
「う、うん」

引きずるように京助を抱え、損壊の少ない部屋に移した。美山さん、静かに眠って……。帝は立ち上がった。だが、いきなりの爆風に吹き飛び、壁に背を打った。

「痛いなあ、もう!」

ブツブツ言いながらもフラフラと立ち上がり、争いの場へと戻った。そこにはすでに天井も壁もなく、家具であっただろう破片が床を埋め尽くしていた。

「コシャクナ。モウワタシガジキジキニテヲクダストキガキチャッタナンテ」

もう骨の頭領以外に、骸骨はいなかった。床には灰と、藤崎と澤木があった。疲れ果て、2人は瞳を閉じて荒い呼吸を繰り返している。

「藤崎さん、澤木さん、こんな……!」
「アァミカド、モドッテキタンダ。モウコノフタリハダメミタイダ、サァミカド、ワタシトイッショニイコウ。ワタシニチカラヲチョウダイヨ」

首を振る。しかし骨の頭領は近づいてくる。足元で藤崎が小さく呻った。
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