ホワイト・ルシアン

たける

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第1章.初めての

3.

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食欲がない。けど、体の為に栄養は補給しなければ。と言う事で、ゼリー飲料を一気に飲む。
静寂が嫌でテレビをつけた。


『沢村朋樹26歳、悲願の世界柔道選手権大会73キロ級優勝!そして……』


優は所属してすぐ、俺の直属の後輩になった。と言うのも、フルバックとしてのキックの性能が評価され、将来の有望株である優に、その技術を教える役目を担わされただけなんだけど。
鮫嶋優21歳。大学を出たばかりで幼く見えたが、端正な顔立ち──俺から見てもハンサムだ──で女性人気だけでなく、男からも好かれる情熱家で、教え甲斐のある後輩だった。


──多分、俺の恋人になるんだと、思ってた。


ずっと告白される側だったから、優にも当然告白されると思ってた。だから、ゆっくり構えていたんだけど。
だって、優、俺が好きだって、言ってた。
照れたように、困ったように。


──なのに何で伊丹?


正直に言って、伊丹はハンサムではない。野獣系だと思う。けど、細やかで清潔感はある。


──で、いつそうなった?


考えても分からない。ただこれが、失恋ってやつなのかなって、思ってた。




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