ホワイト・ルシアン

たける

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26章.これから

3.

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到着口が騒がしくなり、康介さん等の姿が現れた。途端背後や回りから、フラッシュが降り注ぐ。

「おめでとうございます!」

あちこちから歓声が上がる中、メダルを首から下げた選手団が、キャリーケースを引いて──歓声に応えるように手を上げながら──歩いて来た。康介さんのすぐ後ろにいる朋樹は、金色のメダルだ。

「沢村!」

我孫子さんが声をかけると、康介さんがこちらへ歩み寄って来る。更にフラッシュが瞬き、抱擁する姿が神々しく見えた。

「我孫子……約束は果たしたぞ!」
「あぁ、見てた……ちゃんと見てたよ!」

泣いている姿を見ていると、こっちも胸が熱くなる。


──並々ならぬ努力をしてたから……


我孫子さんがリハビリが出来るようになってから、俺は会社を辞めた。そして──康介さんがやってあげたかっただろうけど、俺が代わりに──我孫子さんのリハビリや身の回りの世話を面会時間いっぱいまでやり、練習を終えてかけつけた康介さんと交代する。時に朋樹も一緒に来て、軽く談笑し、帰る事もあったり。
同棲を始めたけど、そんな生活サイクルに変わった為、俺達は康介さんの家──朋樹の実家でもあるんだけど──に移住し、食事や洗濯等の家事の一切を担う事になった。
それも、オリンピックでメダル獲得を目指す2人を支えたかったから。
決して楽ではなかったけど、今こうしてその成果を見る事が出来、感動もより一層強い。

「澪さん」
「おめでとう、朋樹……」

涙で声が震える。そんな俺を、朋樹はそっと抱き締めてくれた。瞬くフラッシュも、バレてはいけないと言う事も、その抱擁が忘れさせる。

「沢村監督、今のお気持ちを!」
「沢村選手、初出場で金メダルを獲得されたお気持ちは?」
「どう言ったご関係ですか?」

記者達の質問が飛び交う。康介さんは我孫子さんとの抱擁を解くと、ニッコリと微笑んだ。

「会見場でお話します」

そう言い、選手団を振り返ると、じゃあ、と言って再び歩き出す。皆それについて行く中、朋樹は俺にそっと耳打ちした。

「結婚も発表しちゃうから」
「えっ……?」

戸惑う俺を他所に、歩いて行ってしまう。下で我孫子さんが笑った。

「ついにだな、剣崎君」
「心の準備もまだなのに……」

そう言いつつも、俺は微笑まずにはいられなかった。




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