Love Trap

たける

文字の大きさ
上 下
29 / 51
6.

しおりを挟む
空港の搭乗口で、ハンクは順番を待っていた。
早く、早くと焦るが、なかなか自分の番にならない。苛々しながら腕時計を見遣ると、後ろから肩を叩かれた。

「何か……?」

振り返ると、不気味に笑うノッドが立っていた。その手にはノートパソコンを持っている。

「よぉ。1人か?」
「遅かったな。待てずに先に出発してすまない」

嘘を並べ立てると、ノッドは眉間に深い皺を刻んだ。

「俺を出し抜くつもりだったのか?」

もうその顔からは笑みが消え、ただハンクを睨みつけている。
隠し事ばかりするノッドを信用出来ない。そう言えば納得するだろうか?いや、それより、今後隠し事はしなくなるとも言えない。

「いや、そうじゃないさ。とにかくチケットを買って来いよ。もうすぐ出発の時間だ」

漸くハンクの番になり、添乗員にチケットを渡す。

「必要ない。お前がそう言うつもりなら、俺は1人で先に行く」

空港内には大勢の人間がいる。まさか彼はここでテレポートしようと言うのではあるまいか。

「まさか。そんな事はしない」

ハンクの内心に答えるようにノッドは言った。
ずっと心を読まれていたのだろうか?

「俺はお前を信用してた。だから手を組んだんだ。なのに、俺が隠し事をするからもう信用しないだって?馬鹿言うなよ。最初から俺を利用するつもりだったんだろ?」

搭乗口で口論するハンク達を、皆が嫌そうな顔で通り過ぎて行く。
そしてアナウンスが流れた。

「パバハムーラ国行きのお客様はお急ぎ下さい。まもなく出発致します」

ノッドがハンクの肩を掴んだままな為、時間が迫っているのに乗り込めない。

「放してくれないか?」

そう言って彼の手に視線を向けると、添乗員が声をかけてきた。

「スティア様、もうすぐタラップが……」
「彼は乗らない」

ノッドが言い、慌ててハンクが反論しようとするが、口が開かなかった。まさか、と思いながらノッドの方を見遣ると、彼は空いた方の手で、何かを閉じるように指先同士を重ねていた。

「かしこまりました」

そう言った添乗員は、名簿を素早く最終チェックすると、ハンクを一瞥してからタラップを上っていった。

「残念だったな」
「お前……!」

ハンクはノッドの手を弾くと、拳を握りしめた。

「自分1人で行こうとするからだ」

そう言ったノッドの横で、いよいよ飛行機が離陸体制に入ろうとしていた。




しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】異世界召喚されたらロボットの電池でした

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:10

女子大生、ストーカーに犯される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:234pt お気に入り:21

【完結】二度目の人生に貴方は要らない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:440pt お気に入り:4,700

異界の語り場 BAR〜Lantern〜へようこそ

mE.
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

俺はまた涙をながしていた。

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

運命だけはいらない

BL / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:164

処理中です...