気が付いたら厩戸王がいた世界に転生してしまったんですけど…どうなるのでしょう

Seabolt

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第5話 お金がない。文字もない。道具もない。なんにもねぇ

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播磨国のウマヤド皇子の領地で苦労したことは、ほぼ全員が文字を知らないことだった。領地を管理している極々一部のものが辛うじて、読み書きできる程度だ。しかも、平仮名やカタカナは勿論ない。

全部漢字。

紙は特に貴重で木簡に字を書いている。よって、俺には全く読めない。

ふふふ、実に困った。

当然、通貨という概念もない。こんな状態で管理が出来ていたものだと感心しているとやはり横領は多発していた。
そう言えば現代でも海外での官僚や政治家の横領は続いているのを思い出した。

とはいってもここは古代、何も証拠はないに等しい。下手に彼らを挑発すれば、私の命も危うくなる。金山一族は、既に大和に戻って生野銀山開発の準備をしている。

私の護衛と言えば、皇子様がつけた数名の剣士たち、その彼らもここでもめ事を起こしたら守ってくれるか怪しい。
ただ、この時代に来て皇子様は俺に剣術を教えてるように兵士たちと訓練をしている。とは言え運動不足の俺にはかなりきつかったが、不思議なもので今となっては何とかなるものだった。

話を戻して、文字を書くにも道具もない状態。これではお金を作って普及させるにも一苦労しそうだ。どうするとか考える前に、とりあえず書くものを借りることにした。結果、墨と筆と木簡、やはりそうか、そうだよな。この時代だものな。

この後のことを考えると頭が痛い。けど、斑鳩に戻ったら、まず村人たちに文字を教えないと。けど、どうやって?今は播磨の国か…そう言えば、かなり遠いけど、もう少し西へ行けば、そんなことを思い出していたら。金山一族の一人が

「斎藤様、そう言えば面白い石を見つけまして、これなんですけど」

私の目の前にあらわれたのはロウ石だった。

「これは…ロウ石ですね」

「これをご存じで、こうやると白く跡が残るのですよ。更に簡単に消せる」

「その通りです。しかし、木の上だとこのように見えづらいという欠点が」

「それでしたら黒板ノートを作りましょう」

「それはどういうものですか?」

「このくらいの板と墨はありますか?」

「板ですか。その半分のサイズなら今ありますがこれでいいでしょうか」

彼が出してきたのは木簡だった。少し小さいけどこれで妥協しよう。

「墨を借ります」

「はい。どうぞ」

私が作業を始めると

「ああ…真っ黒に塗るなんて…」

「これでできた」

片面が真っ黒な木簡ができたのだった。

「これをどうするのですか?」

「ロウ石でここに書くと。ほれ見やすいでしょ」

「おお…」

「これをさっき言った大きさにすれば、もっと使いやすくなりますよ」

すると彼は文字を書いて見せたのだった。

「あなたは、文字を書けるのですか?」

「ええ…」

この時代は全て漢字、かなも漢字を当てていたので読みづらい。どうしようと考えていると

「あの~」

「ああ…そうだ。この石は、斑鳩で使いたいので、今後、持ってきてもらえないでしょうか」

「いいのですが、それとこれの出来損ないがあるのですけど」

彼が差し出したのは陶石だった。

「これは…」

「使い道がないので捨てますか」

「これも持ち帰ります」

こうして播磨での仕事を終えた私は、斑鳩に戻ったのだった。

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