5 / 7
第5話 お金がない。文字もない。道具もない。なんにもねぇ
しおりを挟む
播磨国のウマヤド皇子の領地で苦労したことは、ほぼ全員が文字を知らないことだった。領地を管理している極々一部のものが辛うじて、読み書きできる程度だ。しかも、平仮名やカタカナは勿論ない。
全部漢字。
紙は特に貴重で木簡に字を書いている。よって、俺には全く読めない。
ふふふ、実に困った。
当然、通貨という概念もない。こんな状態で管理が出来ていたものだと感心しているとやはり横領は多発していた。
そう言えば現代でも海外での官僚や政治家の横領は続いているのを思い出した。
とはいってもここは古代、何も証拠はないに等しい。下手に彼らを挑発すれば、私の命も危うくなる。金山一族は、既に大和に戻って生野銀山開発の準備をしている。
私の護衛と言えば、皇子様がつけた数名の剣士たち、その彼らもここでもめ事を起こしたら守ってくれるか怪しい。
ただ、この時代に来て皇子様は俺に剣術を教えてるように兵士たちと訓練をしている。とは言え運動不足の俺にはかなりきつかったが、不思議なもので今となっては何とかなるものだった。
話を戻して、文字を書くにも道具もない状態。これではお金を作って普及させるにも一苦労しそうだ。どうするとか考える前に、とりあえず書くものを借りることにした。結果、墨と筆と木簡、やはりそうか、そうだよな。この時代だものな。
この後のことを考えると頭が痛い。けど、斑鳩に戻ったら、まず村人たちに文字を教えないと。けど、どうやって?今は播磨の国か…そう言えば、かなり遠いけど、もう少し西へ行けば、そんなことを思い出していたら。金山一族の一人が
「斎藤様、そう言えば面白い石を見つけまして、これなんですけど」
私の目の前にあらわれたのはロウ石だった。
「これは…ロウ石ですね」
「これをご存じで、こうやると白く跡が残るのですよ。更に簡単に消せる」
「その通りです。しかし、木の上だとこのように見えづらいという欠点が」
「それでしたら黒板ノートを作りましょう」
「それはどういうものですか?」
「このくらいの板と墨はありますか?」
「板ですか。その半分のサイズなら今ありますがこれでいいでしょうか」
彼が出してきたのは木簡だった。少し小さいけどこれで妥協しよう。
「墨を借ります」
「はい。どうぞ」
私が作業を始めると
「ああ…真っ黒に塗るなんて…」
「これでできた」
片面が真っ黒な木簡ができたのだった。
「これをどうするのですか?」
「ロウ石でここに書くと。ほれ見やすいでしょ」
「おお…」
「これをさっき言った大きさにすれば、もっと使いやすくなりますよ」
すると彼は文字を書いて見せたのだった。
「あなたは、文字を書けるのですか?」
「ええ…」
この時代は全て漢字、かなも漢字を当てていたので読みづらい。どうしようと考えていると
「あの~」
「ああ…そうだ。この石は、斑鳩で使いたいので、今後、持ってきてもらえないでしょうか」
「いいのですが、それとこれの出来損ないがあるのですけど」
彼が差し出したのは陶石だった。
「これは…」
「使い道がないので捨てますか」
「これも持ち帰ります」
こうして播磨での仕事を終えた私は、斑鳩に戻ったのだった。
全部漢字。
紙は特に貴重で木簡に字を書いている。よって、俺には全く読めない。
ふふふ、実に困った。
当然、通貨という概念もない。こんな状態で管理が出来ていたものだと感心しているとやはり横領は多発していた。
そう言えば現代でも海外での官僚や政治家の横領は続いているのを思い出した。
とはいってもここは古代、何も証拠はないに等しい。下手に彼らを挑発すれば、私の命も危うくなる。金山一族は、既に大和に戻って生野銀山開発の準備をしている。
私の護衛と言えば、皇子様がつけた数名の剣士たち、その彼らもここでもめ事を起こしたら守ってくれるか怪しい。
ただ、この時代に来て皇子様は俺に剣術を教えてるように兵士たちと訓練をしている。とは言え運動不足の俺にはかなりきつかったが、不思議なもので今となっては何とかなるものだった。
話を戻して、文字を書くにも道具もない状態。これではお金を作って普及させるにも一苦労しそうだ。どうするとか考える前に、とりあえず書くものを借りることにした。結果、墨と筆と木簡、やはりそうか、そうだよな。この時代だものな。
この後のことを考えると頭が痛い。けど、斑鳩に戻ったら、まず村人たちに文字を教えないと。けど、どうやって?今は播磨の国か…そう言えば、かなり遠いけど、もう少し西へ行けば、そんなことを思い出していたら。金山一族の一人が
「斎藤様、そう言えば面白い石を見つけまして、これなんですけど」
私の目の前にあらわれたのはロウ石だった。
「これは…ロウ石ですね」
「これをご存じで、こうやると白く跡が残るのですよ。更に簡単に消せる」
「その通りです。しかし、木の上だとこのように見えづらいという欠点が」
「それでしたら黒板ノートを作りましょう」
「それはどういうものですか?」
「このくらいの板と墨はありますか?」
「板ですか。その半分のサイズなら今ありますがこれでいいでしょうか」
彼が出してきたのは木簡だった。少し小さいけどこれで妥協しよう。
「墨を借ります」
「はい。どうぞ」
私が作業を始めると
「ああ…真っ黒に塗るなんて…」
「これでできた」
片面が真っ黒な木簡ができたのだった。
「これをどうするのですか?」
「ロウ石でここに書くと。ほれ見やすいでしょ」
「おお…」
「これをさっき言った大きさにすれば、もっと使いやすくなりますよ」
すると彼は文字を書いて見せたのだった。
「あなたは、文字を書けるのですか?」
「ええ…」
この時代は全て漢字、かなも漢字を当てていたので読みづらい。どうしようと考えていると
「あの~」
「ああ…そうだ。この石は、斑鳩で使いたいので、今後、持ってきてもらえないでしょうか」
「いいのですが、それとこれの出来損ないがあるのですけど」
彼が差し出したのは陶石だった。
「これは…」
「使い道がないので捨てますか」
「これも持ち帰ります」
こうして播磨での仕事を終えた私は、斑鳩に戻ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~
☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。
しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。
前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。
貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。
言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。
これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる