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第1章 立身篇

第4話 村人 村人対決する

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出世すると言われたがそれは生きて帰れた場合のことであって、決して出世が保証されている訳ではないと俺はわかっていた。だから返事は簡単だ。登録さえすれば後は狩りで稼ぐことが出来るはずだ。

「Fランクでいいです」

すると3人はがっかりした表情をしている。しかし彼らは諦めなかった再び俺を説得しようと話し始めたのだった。そしてそのことをやったのは他ならぬサマンサだった。

「それもそうですよね。街の噂ではかなり無謀な作戦だなんてみんなが言っているのは事実です。しかし、今回の責任者はゴーン様ですから全く勝機がないわけではないですし、ギルドポイントもそれなりに付きます。更に、金貨100枚ですよ。こんな報酬はありませんよ」

この世界の通貨は1文と呼ばれる銅銭を基準に銀貨、金貨となっていて、銅銭×1000が銀貨、銀貨×100が金貨となっていて、多分、今回で家くらいは建つ金額だ。

「しかし、Fランクの俺が参加しても生きて帰れる保証はない。だから…」

Fランクのままでいいですと言おうとしている俺を遮って、サマンサが話した。

「それは、大丈夫です」

なんと生きて帰れるのか?俺の怪訝そうな顔に対してサマンサはにっこりとしている。

「|村人(むらびと)さん。あなたは生きて帰れます。必ず」

「どうして、そこまで言えるのですか?」

「Dランクのあなたは補給部隊へ編成されます。ですから直接モンスターなんかとは戦闘することはありません」

「あの~襲われたらどうするのですか?」

「それも大丈夫です。Dランクの新規登録は基本的に荷物運び係ですので、補給部隊の護衛の人が守ってくれますから、それに無事に帰還出来たらギルドポイントによってはCランクに上がる機会もありますので…」

「本当か?」

「ええ…本当です…」

けど、どうも腑に落ちない。何か引っかかるけど。そう思っているとそんな俺の雰囲気を察したのか

「ちなみにFランクのお仕事って知っていますか?」

「いえ…」

「1件銅銭3枚の仕事しかありません。その仕事というのは街の近くで死んでいるモンスターや山賊、盗賊の死骸等の清掃です。しかも、ギルドへ報告が上がってからなんで、腐敗している死骸なんかもありますので…そんなお仕事をされるおつもりですか?」

サマンサはニッコリとほほ笑んでいるが想像してしまった俺は気持ちが悪い

「そ…そんな仕事しかないのですか?」

「はい。それを一万件位こなしてようやくEランクになれます。しかし、そこから更に十万件くらい同じことをしてようやくDランクになれます。しかも、このお仕事は、普段仕事がない時の農民たちがすぐにやっていて、基本的に発生しないようなお仕事ですけど、どうされます。Fランクのままでいいですか?」

そこまで言われると考えてしまう。死体処理の仕事しかなくて、しかもほとんどその仕事がない。と思うと飯の種にはできない。ここは思い切って伯爵案件に手を出すか

「わかりました」

そんな時に何故かランスロット所長は待ったをかけた。

「サマンサ!!ちょっと待った!!こいつのFランクは間違いないのか」

「はい。私のリサーチではそうでしたが」

「だったらこいつは無理だ」

そこまで言った時だった今度は、ランスロット所長の手をオードリ―が引っ張った

「所長!!でもノルマが…しかも、締め切りは今日ですよ!!」

「しかしだな…こいつはFランクだろう本部ギルドにもリサーチ能力者はいるだろうに、送り込んでFだとばれたらどうすんだ?」

「けど、所長…誰もいかないと言っているのですよ!!ここでDランクと書けばすむことです!!誰も疑いません!!」

「しかしだな」

ランスロット所長は腕を組んで俺を睨んでいた。そして、ヒソヒソと3人で話を始めた。

「やはり実際に戦っているところを見ないと」

ランスロットの話にオードリが困った表情を浮かべていた。この日は、実技試験というのをやっていない日であったのだ。

「しかし、実技担当が今日はいませんし、それに、実技人形も動かせる人間はおりません」

「弱ったな~…」

二人の視線がサマンサに向けられた。

「え?私ですか?」

「悪いけど頼めないか?」

サマンサの視線がチラリと俺に向けられた。軽く息を吐いて

「じゃあ…私が試してみます」

「いいのか?」

「はい…久しぶりに体を動かしてみたいですし」

などと言ったかと思ったら、俺の所にやってきた。

「申し訳ないのですが村人さん、Fランクの判定が出ている以上、念のために実技試験を行うことになりました」

俺としては、全く腑に落ちない。さっきまで、Dランクになりますとか進めておいておきながら、やりますと言ったら今度は実技試験かよ。マジかよ。けど、ほとんどない仕事を探すよりましかもしれん。俺の能力をもってすれば

「わかりました。で?どんな試験なのですか?」

「模擬戦闘です。相手は私です」

なんとサマンサが相手とは女の子だろう?こんな子を相手にしてもいいのか?

「俺はいいけど、大丈夫ですか?」

「それは、私の言葉ですけど…」

するとランスロット所長が横から

「彼女は、去年まで白黒のサマンサとして有名だが、知らないのかね。君は?」

「はい」

「ま…くれぐれも…即死しないように」

「大丈夫ですよ。魔法なしで十分です」

などと彼らは話をしている。こうして、俺は、ギルドの中庭に連れてこられたのだった。

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