幼馴染の旦那と不妊がきっかけで離婚する話

どんころ

文字の大きさ
3 / 7

3

しおりを挟む
ふっと意識が浮上して目が覚めた。
えっと…確か今発情期で…不思議と頭がすっきりしている。
ガチャリと寝室のドアが空いて顔を覗かせた男の顔を見て昨日の出来事がぶわわっと頭の中を駆け巡った。
思わず掛け布団を被り姿を隠した。

「一旦これで失礼しますね、体は綺麗にしてありますし、ピルも夜中0時頃服用してます。今は症状おさまっているようですが、また、」
男が話している途中で玄関のドアが開く音がして、話が止まった。
「おはようございます。今本人さんにはお話ししましたが、ピルは服用済みで、今のところ症状治っているようなので失礼します。また酷くなるようであれば呼んでください。1週間定額料金で頂いていますので、何度呼んで頂いても値段は変わりません。鍵は一旦お返ししておきます。」
「あぁ、支払いはアプリで?」
「はい、アプリに登録したカードから支払われています。」
「そう、ご苦労様。」
「失礼します。」

布団に隠れている間にやりとりが終わって男は帰って行った。
冷静になってしまった頭で整理すると、やっぱりあの男を呼んだのは奏都に違いなくて、俺が何してたかも知ってて、あの男にお金も払ってる。
どういう意味なのか考えたくもなくて、布団に身を潜めたまま居ると、ベッド際まで近付いてきて布団を捲られた。
「俺じゃない奴とのセックスは気持ち良かったか。」
「………」
「フェロモン浴びれてよかったなぁ。この尻軽Ωめ。」

言われたことが理解しきれず、反応できない。
理解したくなかっただけかもしれない。
何も言わずにいると、そのまま奏都は部屋を立ち去った。

尻軽だなんて、、差し向けたのは自分の癖に!
何であんなこと、何でわざと?
顔も見たくなくて寝室でそのまま隠れているとしばらくすると玄関の開閉音が聞こえてきた。

そっとベッドから降りて玄関を見にいくと仕事用の靴がなくなっていた。
出勤したのを確認すると急いで荷造りをした。

必要なものだけ。
最悪捨てて貰えば良いから、替えがきかないものと当面の衣類だけ詰め込むと、逃げるようにアパートを出た。
発情期だけど、中出しされたおかげか症状はほとんどない。

お金も生活費を毎月もらうくらいしかなくて、行ける先なんて実家以外に思いつかなかった。
なんて説明しよう。
あいつが勝手に発情期中にアプリで人を呼んでて、ヤられた?
そんな生々しい話実の親になんてできない。
ちょっと喧嘩して?
早く謝りなさいよって言われるだけだろうな。

ぐるぐると考えても答えが出ないまま、実家の扉を開けた。
「…ただいまー。」
「沙雪!あんた、何やってんのよ!!」
母の第一声は予想外の怒号だった。
面食らったままその場に立ち尽くしていると、母の勢いは止まらなかった。
「奏くんから電話もらって、あんた、子供ができないの奏くんのせいにして、自分は浮気ですって!?何考えてるのよ!せっかく私達もあんたがαと一緒になれて一安心してたところだったのに!どういうつもりなの!」

「ちがう、俺浮気なんかしてない!あいつが勝手に、」
「またすぐそうやって人のせいにして!ただでさえΩの息子を持って色々言われてきて、何とか受け入れてもらえつつあったのに、これだからΩはって言われちゃうじゃない。私達の肩身の狭さ、考えたことある!?」
「母さん、だから、おれ、ちがっ」
「いい加減にしなさい!奏くんからもう聞いてるのよ、あんたが不貞行為をしてたことは!とにかく、ここには戻って来れないから、ちゃんと謝って!もう大人なんだから自分の尻は自分で拭きなさい!」

すごい剣幕に押されてそのまま外に押し出された。

母さんは俺の気持ち、考えてくれたことあったのかな。
俺だって好きでΩに生まれた訳じゃない。
できることは努力してきたし、言うこともちゃんと聞いてきた。
世間の目が気になって放り出すくらいなら、産まないでくれたらよかったのに。
そんなもののために息子が路頭に迷ってもいいと思うくらいの存在なら、俺なんて居なかったほうがよかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 12/10 5000❤️ありがとうございます😭 わたし5は好きな数字です💕 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

待っててくれと言われて10年待った恋人に嫁と子供がいた話

ナナメ
BL
 アルファ、ベータ、オメガ、という第2性が出現してから数百年。  かつては虐げられてきたオメガも抑制剤のおかげで社会進出が当たり前になってきた。  高校3年だったオメガである瓜生郁(うりゅう いく)は、幼馴染みで恋人でもあるアルファの平井裕也(ひらい ゆうや)と婚約していた。両家共にアルファ家系の中の唯一のオメガである郁と裕也の婚約は互いに会社を経営している両家にとって新たな事業の為に歓迎されるものだった。  郁にとって例え政略的な面があってもそれは幸せな物で、別の会社で修行を積んで戻った裕也との明るい未来を思い描いていた。  それから10年。約束は守られず、裕也はオメガである別の相手と生まれたばかりの子供と共に郁の前に現れた。  信じていた。裏切られた。嫉妬。悲しさ。ぐちゃぐちゃな感情のまま郁は川の真ん中に立ち尽くすーー。 ※表紙はAIです ※遅筆です

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

処理中です...