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電車で実家の方まで帰ったから所持金もほとんどない。
今夜泊まる場所なんてお金が払えなくて、明かりのついてる路地を無意識に彷徨うと、街の方へと出てきていた。
「キミ、Ωでしょ?いくらなの?」
一瞬何を聞かれたのか分からなかった。
でも理解した瞬間にはそれしかないのかと受け入れた。
もうすでに守るべき貞操なんてものはなくなってしまっている。
「……いくら払ってくれるの?どこで?」
「2万かな、あそこのホテルでどう?宿泊代は持つよ。」
「ん。」
どうせ子宮が未熟なんだから子供なんてできやしない。
番にだってなりやしない。
あいつの元に帰る勇気もないし、実家にだって居場所がない。
このまま流されるように生きるしかもう俺には残されていない。
何もかもどうでも良くなって男の手を取った。
生きてくにはこうするしかない。
手を引かれるまま着いていくと、
「沙雪くん!?」と後ろから声がかけられた。
反射的に振り向くと、昨日部屋で会った男が驚いた顔でこちらを見ていた。
「お兄さんは?辛くなったら連絡くれるって言ってましたよね?」
急いでこちらに駆け寄ってきた男はそう言うと俺の空いている方の手を掴もうとした。
その前に先ほど声をかけてきた男が俺を隠すように一歩前へと出た。
「悪いね、今日は俺が声をかけたんだ。彼も了承してる。」
「沙雪くん、こっちに。お兄さんきっと心配してますよ。」
「急に出てきて横取りしようなんてマナー違反だろ!」
そう言った男が怒りのまま威圧フェロモンを撒き散らした。
遠くの方できゃーと言う悲鳴が聞こえる。
呆然としていると、そのフェロモンがいつの間にか尖りのないフェロモンに置き換わっていた。
「こんな所で威圧フェロモンを撒き散らす方がよっぽど悪質だと思いますけどね。さぁ、沙雪くんこちらに。」
穏やかなフェロモンに流されるように昨日の男の元へと動いた。
後ろからおい待てよと声がかかるのを無視して男は俺の肩に手を添えてホテル街へ背を向けて歩き出した。
「とりあえず駅へ行きましょうか。ロータリーかどこかでお兄さんに連絡します。」
「……」
「連絡が取れたら、家まで送り届けますね。症状がひどいようならそのままお相手します。」
「…兄じゃない。」
「え?」
「あいつ、俺の夫。」
「お、夫?」
「…おっかしーだろ。自分で差し向けといて、インランなΩだとよ。」
「ちょっと待って、え、じゃあ昨日の派遣も君が希望したわけじゃなかった…?」
「あいつが勝手にしただけ。…もういい?あんなフェロモン出されたら逆らえないから着いて来ちゃったけど、俺お金稼がないと生活できないんだよ。」
呆然とした様子だった男は我に帰るとガバッと頭を下げた。
「申し訳ありませんでしたっ。あなたが希望して呼んでいるものだとばかり思っていたので、同意もなくあんなこと…すみませんでした。」
「…いいよ、別に。もう終わった事だし、どのみちこれからそうやって生きてくしかないんだから、あんなこと、全然、…大したことなんかじゃ」
こぼれ落ちてしまった涙に、そっとハンカチが添えられて驚いて言葉が止まった。
途中から目に膜が張るように涙が滲んできてしまっていることには気づいていたけど、泣いてなんかないふりをしようと思っていたのに。
「誰でもいいなら、うちでもいい?」
今夜泊まる場所なんてお金が払えなくて、明かりのついてる路地を無意識に彷徨うと、街の方へと出てきていた。
「キミ、Ωでしょ?いくらなの?」
一瞬何を聞かれたのか分からなかった。
でも理解した瞬間にはそれしかないのかと受け入れた。
もうすでに守るべき貞操なんてものはなくなってしまっている。
「……いくら払ってくれるの?どこで?」
「2万かな、あそこのホテルでどう?宿泊代は持つよ。」
「ん。」
どうせ子宮が未熟なんだから子供なんてできやしない。
番にだってなりやしない。
あいつの元に帰る勇気もないし、実家にだって居場所がない。
このまま流されるように生きるしかもう俺には残されていない。
何もかもどうでも良くなって男の手を取った。
生きてくにはこうするしかない。
手を引かれるまま着いていくと、
「沙雪くん!?」と後ろから声がかけられた。
反射的に振り向くと、昨日部屋で会った男が驚いた顔でこちらを見ていた。
「お兄さんは?辛くなったら連絡くれるって言ってましたよね?」
急いでこちらに駆け寄ってきた男はそう言うと俺の空いている方の手を掴もうとした。
その前に先ほど声をかけてきた男が俺を隠すように一歩前へと出た。
「悪いね、今日は俺が声をかけたんだ。彼も了承してる。」
「沙雪くん、こっちに。お兄さんきっと心配してますよ。」
「急に出てきて横取りしようなんてマナー違反だろ!」
そう言った男が怒りのまま威圧フェロモンを撒き散らした。
遠くの方できゃーと言う悲鳴が聞こえる。
呆然としていると、そのフェロモンがいつの間にか尖りのないフェロモンに置き換わっていた。
「こんな所で威圧フェロモンを撒き散らす方がよっぽど悪質だと思いますけどね。さぁ、沙雪くんこちらに。」
穏やかなフェロモンに流されるように昨日の男の元へと動いた。
後ろからおい待てよと声がかかるのを無視して男は俺の肩に手を添えてホテル街へ背を向けて歩き出した。
「とりあえず駅へ行きましょうか。ロータリーかどこかでお兄さんに連絡します。」
「……」
「連絡が取れたら、家まで送り届けますね。症状がひどいようならそのままお相手します。」
「…兄じゃない。」
「え?」
「あいつ、俺の夫。」
「お、夫?」
「…おっかしーだろ。自分で差し向けといて、インランなΩだとよ。」
「ちょっと待って、え、じゃあ昨日の派遣も君が希望したわけじゃなかった…?」
「あいつが勝手にしただけ。…もういい?あんなフェロモン出されたら逆らえないから着いて来ちゃったけど、俺お金稼がないと生活できないんだよ。」
呆然とした様子だった男は我に帰るとガバッと頭を下げた。
「申し訳ありませんでしたっ。あなたが希望して呼んでいるものだとばかり思っていたので、同意もなくあんなこと…すみませんでした。」
「…いいよ、別に。もう終わった事だし、どのみちこれからそうやって生きてくしかないんだから、あんなこと、全然、…大したことなんかじゃ」
こぼれ落ちてしまった涙に、そっとハンカチが添えられて驚いて言葉が止まった。
途中から目に膜が張るように涙が滲んできてしまっていることには気づいていたけど、泣いてなんかないふりをしようと思っていたのに。
「誰でもいいなら、うちでもいい?」
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