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第一章
幸せの花冠 3
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ええっと?
少し戸惑っていると、エルリックがマリィの左手を握り直した。
両親に向き直り、にっこりと笑う。
「それでは、失礼」
たったそれだけで、マリィを連れ、門を抜けてしまう。
なんだったのだろう、今のは。
国家機密というやつだろうか。それとも、誕生日パーティーのサプライズの相談?
いずれにしろ、マリィが気にしたところでどうにもならないことだし、両親やエルリックから無理に聞き出していいことはない。みんなの顔は笑顔だったから、悪いことではないだろう。今は、悩むのをやめて、エルリックと二人の時間を楽しむことにしよう。
決めたら、二人で歩けていることが嬉しくなって、足取りも軽くなる。エルリックと会えたのは4ヶ月ぶり。小さな王国とはいえ、王都からここまで2日ほどかかる。これほど国の端にあるとなかなか会うこともままならない。
門の上に佇む銀色の天使の像に挨拶をして、1歩進めばそこはもうカルレンス領一大きな街だ。ここから先に出た時は、国民を守る側になる王族、貴族でなくてはならない。
マリィとエルリックの二人は、少しだけ涼やかな表情をして、少しだけ軽やかな足取りで歩き出した。できるかぎり高貴に。
歩く先々で、気づいた街の人々が、マリィとエルリックに静かに一礼してくれる。
ただ、一礼してしまえば形は整ったというもの。そこからは同じ街に住む仲間だ。
「マリィ様、後でうちに寄ってちょうだい」
というのは花屋のおかみさん。
マリィがお使いを頼まれることも多く、こうして屋敷で必要なものを運ぶことも日常だ。
エルリックも人望の厚い王子だけあって、子供達も楽しそうに寄ってくる。
「エルリック様!剣教えて、剣!」
子供達はやはり剣技に興味があるのか、城で剣術を学んでいるエルリックの剣術指南が始まる。子供用の木でできた剣を振り回し、1人ずつ丁寧に相手をしてやる。
そんな調子で街を一周し、街の中心にある広場に二人で座ったのは、すでに昼を過ぎた頃のことだった。
「今日も楽しかったね」
エルリックも街を歩くのが好きなのだろう、とても上機嫌だ。
マリィのほうは、さっき食堂のおじさんがくれた甘い砂糖菓子をひとつだけひとつだけと言いながらかじっている。
二人、目を合わせにっこり笑ったとき、大きな鐘の音が鳴った。
教会の鐘の音。
ここからは見えないが、ほどほどに近く、鐘の音も屋敷に居るときよりも大きく聞こえた。
歓声混じりのざわめきが、教会のほうから聞こえてくる。
「結婚式をしているのよ」
うっとりとマリィは教会の方を見やった。教会あたりの屋根から白い鳥が羽ばたいて行くのが見えた。
なんていうか、結婚というものに興味はある。もっと言ってしまえば、そう、憧れているのだ。例えば、今、目の前にいるエルリックと、とか。考えないではない。考えないではないというか、結婚式というものを間近に見た小さな頃から、隣に居たエルリックと釣り合う大人になりたいと、何度も思ったものだ。
この人に届くような、素敵なレディに。
少し戸惑っていると、エルリックがマリィの左手を握り直した。
両親に向き直り、にっこりと笑う。
「それでは、失礼」
たったそれだけで、マリィを連れ、門を抜けてしまう。
なんだったのだろう、今のは。
国家機密というやつだろうか。それとも、誕生日パーティーのサプライズの相談?
いずれにしろ、マリィが気にしたところでどうにもならないことだし、両親やエルリックから無理に聞き出していいことはない。みんなの顔は笑顔だったから、悪いことではないだろう。今は、悩むのをやめて、エルリックと二人の時間を楽しむことにしよう。
決めたら、二人で歩けていることが嬉しくなって、足取りも軽くなる。エルリックと会えたのは4ヶ月ぶり。小さな王国とはいえ、王都からここまで2日ほどかかる。これほど国の端にあるとなかなか会うこともままならない。
門の上に佇む銀色の天使の像に挨拶をして、1歩進めばそこはもうカルレンス領一大きな街だ。ここから先に出た時は、国民を守る側になる王族、貴族でなくてはならない。
マリィとエルリックの二人は、少しだけ涼やかな表情をして、少しだけ軽やかな足取りで歩き出した。できるかぎり高貴に。
歩く先々で、気づいた街の人々が、マリィとエルリックに静かに一礼してくれる。
ただ、一礼してしまえば形は整ったというもの。そこからは同じ街に住む仲間だ。
「マリィ様、後でうちに寄ってちょうだい」
というのは花屋のおかみさん。
マリィがお使いを頼まれることも多く、こうして屋敷で必要なものを運ぶことも日常だ。
エルリックも人望の厚い王子だけあって、子供達も楽しそうに寄ってくる。
「エルリック様!剣教えて、剣!」
子供達はやはり剣技に興味があるのか、城で剣術を学んでいるエルリックの剣術指南が始まる。子供用の木でできた剣を振り回し、1人ずつ丁寧に相手をしてやる。
そんな調子で街を一周し、街の中心にある広場に二人で座ったのは、すでに昼を過ぎた頃のことだった。
「今日も楽しかったね」
エルリックも街を歩くのが好きなのだろう、とても上機嫌だ。
マリィのほうは、さっき食堂のおじさんがくれた甘い砂糖菓子をひとつだけひとつだけと言いながらかじっている。
二人、目を合わせにっこり笑ったとき、大きな鐘の音が鳴った。
教会の鐘の音。
ここからは見えないが、ほどほどに近く、鐘の音も屋敷に居るときよりも大きく聞こえた。
歓声混じりのざわめきが、教会のほうから聞こえてくる。
「結婚式をしているのよ」
うっとりとマリィは教会の方を見やった。教会あたりの屋根から白い鳥が羽ばたいて行くのが見えた。
なんていうか、結婚というものに興味はある。もっと言ってしまえば、そう、憧れているのだ。例えば、今、目の前にいるエルリックと、とか。考えないではない。考えないではないというか、結婚式というものを間近に見た小さな頃から、隣に居たエルリックと釣り合う大人になりたいと、何度も思ったものだ。
この人に届くような、素敵なレディに。
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