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終章
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「綺麗だね」
頭の上から声が響く。
「うん……そうだね」
目の前の星空は、いつか見た星空に似ている。
悪魔の身体に熱はないのに、温かく感じるのも同じだ。
「ここに、いてくれてありがとう……」
そう呟く。
一人で国を回った結果、自由になり、自分ただ一人になった時、唯一思い描いた人。会いたいと思った人。
会いたい一心で、ここまで走って来てしまった。
ここにいてくれて、よかった。
「ああ……、そろそろ、探しに行こうかと思ってた」
「…………」
…………え?
私を?
どういう意味なんだろう。
表情どころか、声のトーンも変わらないので、喜んでいいところなのかわからない。
わからないのに、自然と心臓の鼓動が早くなる。顔が火照る。
満点の星が、チカチカと瞬く。
嬉しくなってしまう。
こうかかえられていると、抱きしめられているような気がしてしまう。
目の前には、視界いっぱいの満天の星。初めて悪魔とこの星空を見たあの日から、私の瞳は、この世界を綺麗に映す。
「冷えてしまうし、そろそろ帰ろうか」
と言い出したのは、悪魔の方だった。
確かに、ここに戻ってきてから、温度変化が以前よりも増しているような気がする。夜は思い出すいつかの夜よりも、少し寒い。
言い出したのは悪魔の方だったのに、マリィを抱き上げると、翼を羽ばたかせ、ゆっくりと街の方へ飛んだ。街は、ここへ帰ってきてからマリィが歩きまわったおかげで、少しだけではあるけれどそこここにランプがついている。
「うわ……ぁ」
ゆっくりと街を巡り、湖の上を回る。
「……綺麗ね!」
「うん、そうだね」
悪魔の声は、笑っているように聞こえた。
悪魔がマリィを下ろしたのは、やはりホールの床の上だった。
爪先をつけると、かつん、と音がした。
どうしよう。思っていたよりも、楽しくて嬉しい。
「ありがとう、悪魔さん」
嬉しくなってしまい、どうしても落ち着かない。顔はニヤついてないだろうか。顔が赤いのはバレるだろうか。
「また、いつでも。星を見に行こう」
そして嬉しかった分、離れるのもつらい。
重なった手を離さないといけないだろうか。
「うん。じゃあ、また……」
離れがたいその手をなんとか離して、自分の部屋へ早足で向かった。
勢いでベッドに飛び込む。
え……。何あれ……照れる……。
布団を力いっぱいに握った。興奮のあまり足をバタつかせる。一人身悶えていると、指先に例のマクスウェルと悪魔が表紙に描かれた本があたった。
悪魔に恋愛感情があるかどうか……わからなかった。
むしろ……自分の恋愛感情を改めて認識しただけ……。
そして、結局マリィは悪魔に恋愛感情があるかどうかはひとまず考えるのをやめて、ついさっきの悪魔の言葉や腕の力を思い出し、また幸せな気持ちに浸るのだった。
頭の上から声が響く。
「うん……そうだね」
目の前の星空は、いつか見た星空に似ている。
悪魔の身体に熱はないのに、温かく感じるのも同じだ。
「ここに、いてくれてありがとう……」
そう呟く。
一人で国を回った結果、自由になり、自分ただ一人になった時、唯一思い描いた人。会いたいと思った人。
会いたい一心で、ここまで走って来てしまった。
ここにいてくれて、よかった。
「ああ……、そろそろ、探しに行こうかと思ってた」
「…………」
…………え?
私を?
どういう意味なんだろう。
表情どころか、声のトーンも変わらないので、喜んでいいところなのかわからない。
わからないのに、自然と心臓の鼓動が早くなる。顔が火照る。
満点の星が、チカチカと瞬く。
嬉しくなってしまう。
こうかかえられていると、抱きしめられているような気がしてしまう。
目の前には、視界いっぱいの満天の星。初めて悪魔とこの星空を見たあの日から、私の瞳は、この世界を綺麗に映す。
「冷えてしまうし、そろそろ帰ろうか」
と言い出したのは、悪魔の方だった。
確かに、ここに戻ってきてから、温度変化が以前よりも増しているような気がする。夜は思い出すいつかの夜よりも、少し寒い。
言い出したのは悪魔の方だったのに、マリィを抱き上げると、翼を羽ばたかせ、ゆっくりと街の方へ飛んだ。街は、ここへ帰ってきてからマリィが歩きまわったおかげで、少しだけではあるけれどそこここにランプがついている。
「うわ……ぁ」
ゆっくりと街を巡り、湖の上を回る。
「……綺麗ね!」
「うん、そうだね」
悪魔の声は、笑っているように聞こえた。
悪魔がマリィを下ろしたのは、やはりホールの床の上だった。
爪先をつけると、かつん、と音がした。
どうしよう。思っていたよりも、楽しくて嬉しい。
「ありがとう、悪魔さん」
嬉しくなってしまい、どうしても落ち着かない。顔はニヤついてないだろうか。顔が赤いのはバレるだろうか。
「また、いつでも。星を見に行こう」
そして嬉しかった分、離れるのもつらい。
重なった手を離さないといけないだろうか。
「うん。じゃあ、また……」
離れがたいその手をなんとか離して、自分の部屋へ早足で向かった。
勢いでベッドに飛び込む。
え……。何あれ……照れる……。
布団を力いっぱいに握った。興奮のあまり足をバタつかせる。一人身悶えていると、指先に例のマクスウェルと悪魔が表紙に描かれた本があたった。
悪魔に恋愛感情があるかどうか……わからなかった。
むしろ……自分の恋愛感情を改めて認識しただけ……。
そして、結局マリィは悪魔に恋愛感情があるかどうかはひとまず考えるのをやめて、ついさっきの悪魔の言葉や腕の力を思い出し、また幸せな気持ちに浸るのだった。
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