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終章
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さて。
帰ってきたのはいいけれど。
マリィは、自室の床の上で腕組みをする。目の前には、ハリス・カルレンスが書いた、マクスウェルと悪魔が手を取り合っている表紙の本が置いてある。……すっかり愛読書だ。
そんな表紙をじっと見ながら考える。
悪魔にも、恋愛感情はあるのかしら。
これが、今のマリィにとってのもっぱらの関心事だ。
悪魔が言う“一緒にいたい”はそういう意味だろうか。嬉しいのだけれど、家族として、仲間として、なんてこともあり得るわけだ。……どうすれば確認できるだろう……。
例えばデートに誘うとか?とはいえ、一緒に出かける……といっても街中どこも二人きりだ。散歩は楽しいだろうけれど、そんな誘いに乗ってくれるだろうか。まず……話でもしてみようか。
ぐるぐると考えあぐねる。結局、一緒に食事をとることになった、何回目かの朝食で。
「悪魔さん……?今日は一緒に、星を見ない?」
……思ったよりも緊張する。
「…………」
少しの沈黙の後、
「いいね」
と言ってくれる。
待ち合わせの約束をして、マリィはまずお風呂へ入った。
別に……こ、告白しようっていうんでもないんだから、普通でいいのよ。普通で。そもそも、帰って来たときにそれっぽいことはもう言ってある……。
とは思いつつ、念入りに身体を洗い、ゆっくりと息を整える。
洗ったばかりの清潔な服に着替え、出来る限りの身なりを整えた。
廊下を歩く間でも、なぜか緊張が高まっていく。
そういえば、悪魔と待ち合わせするなんて、初めてのことだ。
落ち着いて、落ち着いて。
すっかり、ガラスがはまっていないことが普通になってしまったホールで。二人は待ち合わせをした。
扉を開けると、ホールの中心に悪魔が立っていて、幾分かほっとする。
「悪魔、さん」
「やあ、マリィ」
翼が、一度、ふわりと羽ばたいた。
マリィが近づくと、悪魔は両手にブランケットを持った。
「ふふっ、……お母さんみたいね」
「…………」
そのブランケットが、悪魔らしくて安心して、つい言ってしまったのだけれど、その瞬間、悪魔がぴったりと止まった。
……あら?気を悪くしたかしら。
何か言う間もなく、ブワッと風が舞う。
目の前の悪魔が、ふわりとマントを纏った。
「…………」
ほ、本当に気にしたんだ……。
「そんな……きゃっ」
大きな手が、マリィを持ち上げた。抱き上げられ、びっくりする。
う……わぁ……。
窓から飛び出すと、広く街が見えた。懐かしい街並み。
街は、マリィが出て行った時と変わりなく、そのままの姿で保たれている。まるで、時間が止まっているようだ。もう……あんな暗い気持ちで見ることもない。
悪魔の服にしがみつくと、ゆっくりと大きく旋回し、屋根の上へ。
屋根の上に座り込むと、そのままマントにくるんでくれた。
「…………」
自然と膝の上で後ろから抱きしめられる形になる。……以前もそんなことはあったけれど。
あれ……?なんか思ったより……恥ずかしい……。
ぽわぽわっと顔が熱くなる。
思った以上にきゅっと抱きしめられ、星を見るどころではなくなってしまう。目の前の星空を凝視しているけど、どうしよう。何も頭に入ってこない。
帰ってきたのはいいけれど。
マリィは、自室の床の上で腕組みをする。目の前には、ハリス・カルレンスが書いた、マクスウェルと悪魔が手を取り合っている表紙の本が置いてある。……すっかり愛読書だ。
そんな表紙をじっと見ながら考える。
悪魔にも、恋愛感情はあるのかしら。
これが、今のマリィにとってのもっぱらの関心事だ。
悪魔が言う“一緒にいたい”はそういう意味だろうか。嬉しいのだけれど、家族として、仲間として、なんてこともあり得るわけだ。……どうすれば確認できるだろう……。
例えばデートに誘うとか?とはいえ、一緒に出かける……といっても街中どこも二人きりだ。散歩は楽しいだろうけれど、そんな誘いに乗ってくれるだろうか。まず……話でもしてみようか。
ぐるぐると考えあぐねる。結局、一緒に食事をとることになった、何回目かの朝食で。
「悪魔さん……?今日は一緒に、星を見ない?」
……思ったよりも緊張する。
「…………」
少しの沈黙の後、
「いいね」
と言ってくれる。
待ち合わせの約束をして、マリィはまずお風呂へ入った。
別に……こ、告白しようっていうんでもないんだから、普通でいいのよ。普通で。そもそも、帰って来たときにそれっぽいことはもう言ってある……。
とは思いつつ、念入りに身体を洗い、ゆっくりと息を整える。
洗ったばかりの清潔な服に着替え、出来る限りの身なりを整えた。
廊下を歩く間でも、なぜか緊張が高まっていく。
そういえば、悪魔と待ち合わせするなんて、初めてのことだ。
落ち着いて、落ち着いて。
すっかり、ガラスがはまっていないことが普通になってしまったホールで。二人は待ち合わせをした。
扉を開けると、ホールの中心に悪魔が立っていて、幾分かほっとする。
「悪魔、さん」
「やあ、マリィ」
翼が、一度、ふわりと羽ばたいた。
マリィが近づくと、悪魔は両手にブランケットを持った。
「ふふっ、……お母さんみたいね」
「…………」
そのブランケットが、悪魔らしくて安心して、つい言ってしまったのだけれど、その瞬間、悪魔がぴったりと止まった。
……あら?気を悪くしたかしら。
何か言う間もなく、ブワッと風が舞う。
目の前の悪魔が、ふわりとマントを纏った。
「…………」
ほ、本当に気にしたんだ……。
「そんな……きゃっ」
大きな手が、マリィを持ち上げた。抱き上げられ、びっくりする。
う……わぁ……。
窓から飛び出すと、広く街が見えた。懐かしい街並み。
街は、マリィが出て行った時と変わりなく、そのままの姿で保たれている。まるで、時間が止まっているようだ。もう……あんな暗い気持ちで見ることもない。
悪魔の服にしがみつくと、ゆっくりと大きく旋回し、屋根の上へ。
屋根の上に座り込むと、そのままマントにくるんでくれた。
「…………」
自然と膝の上で後ろから抱きしめられる形になる。……以前もそんなことはあったけれど。
あれ……?なんか思ったより……恥ずかしい……。
ぽわぽわっと顔が熱くなる。
思った以上にきゅっと抱きしめられ、星を見るどころではなくなってしまう。目の前の星空を凝視しているけど、どうしよう。何も頭に入ってこない。
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