静かにしろよ、ハニー・トラップ!

大天使ミコエル

文字の大きさ
56 / 230

56 水浴びタイム(1)

しおりを挟む
「はーあ」
 明日もここで練習する事を約束し、ユキナリは一つため息を吐いた。

「じゃ、お前ら、水浴びに行くぞ」

「水浴び?」
 ハニトラが、キョトン、と首を傾げた。
「ハゥ~ン?」
 マルが犬の様な声を出す。

「このままじゃ、町まで戻れないだろ」

 3人の姿を見る。
 森の中は思った以上に湿っぽく、明るい日差しの中で見る姿は、思った以上に泥だらけだった。
 ユキナリは、着ている服に加え、髪も顔も手も足も、泥が入って来た腹まで泥だらけだ。
 マルは元々白だったかどうかなんてわからないくらい茶色くなって、ドロドロとした中に、乾いてこびりついた泥の塊があちこちひっついている。
 ハニトラは、すっかり人間型の泥団子のようだった。
 ……中身が裸だなんて事まで忘れそうだ。

 そのあまりの酷い惨状に、海へ向かう。
 ドロドロとした足を引きずる。
 けれど海までたどり着く必要はなさそうだった。
 歩いている途中、遠く、サラサラとした水が流れる音がしたのだ。

「……川?」

「……みたいですわね」
 泥だらけになって遊んだせいか、むしろ機嫌が良さそうなマルと、泥だらけなのにそれほど気に留めてもいない様子のハニトラが顔を上げた。

 草を分け行って進んでいくと、海へ流れ込む川が、広く緩やかに流れていた。

「ここでいいか~」

 ユキナリが、泥のついた鞄や履けなくなり手に持っていた靴を投げだす。

 ハニトラが、つま先を水に入れ、冷たかったのか、
「ひゃあ」
 という声を上げた。

 ユキナリも足を突っ込んでみる。
「お、冷て」
 笑いながらそう言って、ハニトラにパシャパシャと水をかけてみる。

「ひゃあああ」
 ハニトラはまだ水の冷たさに慣れないのか、足踏みしながら、叫び声を上げた。

「ユキナリ~~~~」

 手を構えたハニトラが、そのまま水をかける体制になる。
 そしてそのまま、容赦なく、俺がかけた倍以上の水が、バシャバシャと俺を襲った。
「うっわ。ほんと、冷ってぇ」

 水をかけあい、ハニトラの方を見た時だった。

 うわ……。

 太ももの泥が落とされ、肌色が見えている。
 そうだ。こいつ……、裸だったんだ。

 唐突にそんな事を思い出す。

「あ、あああああああ、マ、マルは一人で大丈夫かな」

 若干挙動不審になりつつ、真横を向く。
 そこから散々周りを見渡した挙げ句、ちょうど、ハニトラの後ろ側で、マルが一人、水の中に入って行くのが見えた。

「あー……、俺、あっち手伝ってくるわ」
 汗をかきながら、そそくさとマルの方へ行く。

「ユキナリ~~~~~!?」

 ハニトラの声を背中で聞きつつ、マルのところで川の中に座った。
 座れるほど、浅く、広い川だった。

 言い訳に使っただけのつもりではあったけれど、水の中のマルは、すっかり川を泥の色に染めていた。
「大変そうだな」

「まあ、大変ですわね」
 モシャモシャとした毛先を見ながら、マルが水の中に座り込む。

 水は、暖かな陽光の中で、キラキラと輝く。



◇◇◇◇◇



不満そうな面もありつつ、3人仲良く出来そうな雰囲気ですね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...