5 / 110
5 諦めれば?
しおりを挟む
グラスの氷が、からんと音を立てて崩れる。
「アタシ、先生が優しいから、つい言っちゃったんだよね。『アタシが先生の事好きだったらどうする?』って。……『どうにもならない』って言われちゃった」
チュチュの目が潤んでいく。
「……すごい話してるね」
「エマとヴァルの話してたら、先生が、『僕は恋愛とは縁がないからね』って、言ったから。つい」
「……もうちょっと考えてから話した方がいいね」
「わかってる。そんなお説教が聞きたいんじゃない」
メンテが、近くに放り出してあったシエロクッションを手繰り寄せ、寄りかかる。
すっかり寛いでしまっている。
「……そりゃあ、ね。先生から見たら、チュチュは子供だよね」
「…………」
そんなのわかってる。
けど、自分でそれを肯定するわけにはいかなかった。
「もともと歳も離れてて。先生と生徒だし。師匠と弟子だし。対等に見てくれないのは当然じゃない?」
「…………」
チュチュは不貞腐れた顔をした。
「諦めれば?」
その、決定的な一言を聞いて、チュチュは涙目で顔を上げる。
「そんなこと、最初からわかってるし。そんな分かりきったことで、諦められない」
メンテは、すっかり足を投げ出して座っていた。
「チュチュは、そうだよね」
どこか、呆れたような、それでいて優しい顔。
「…………」
メンテが、アイスティーをぐびぐびと飲む。
「じゃあ、さ。最後までぶつかっちゃいなよ。どうせ結果が同じなら、当たって砕けたって同じことじゃない?」
「そんな無責任な慰め方ある~?」
不満そうに口を動かしたけれど、その言葉で、チュチュは少し、気が晴れていた。
諦めなければとウジウジするよりは、むしろその方がさっぱりしていていいかもしれない。
勘のいいシエロのことだ。
あそこまで言ってしまえば、少なからず気持ちは気付かれてしまっているだろう。
それなら、ここできっぱり諦める必要はないんじゃないかな。
好きだと言うだけで、迷惑ということもないだろう。
むしろ、シエロには聞いてほしい。
行き場を失い、いつか忘れ去られる運命の、この小さな恋心のことを。
「それとも」
ふと、思いついたようにメンテが言葉を紡いだ。
「もしかして、心に決めた人でもいるのかな」
「え……?あ???え????」
チュチュが、今初めてその可能性に気付いたように、目を白黒させた。
「そんな、こと」
「だって、あの人、公爵家の人間だろう?婚約者の一人や二人……」
そうなのだ。
貴族に婚約者がいるのは、珍しい話ではない。
必ず必要というわけでもないけれど。
位の高い貴族では、幼い頃から婚約者がいることも多い。
チュチュだって、侯爵家の娘として、そろそろそんな話が舞い込んできてもおかしくない年頃だった。
「まさかぁ」
言いながら、それを否定しきるのもおかしいことを、チュチュは知っている。
◇◇◇◇◇
本編ではあまり出してあげられなかったメンテですが、ちゃんと学園生活してますよ!!
「アタシ、先生が優しいから、つい言っちゃったんだよね。『アタシが先生の事好きだったらどうする?』って。……『どうにもならない』って言われちゃった」
チュチュの目が潤んでいく。
「……すごい話してるね」
「エマとヴァルの話してたら、先生が、『僕は恋愛とは縁がないからね』って、言ったから。つい」
「……もうちょっと考えてから話した方がいいね」
「わかってる。そんなお説教が聞きたいんじゃない」
メンテが、近くに放り出してあったシエロクッションを手繰り寄せ、寄りかかる。
すっかり寛いでしまっている。
「……そりゃあ、ね。先生から見たら、チュチュは子供だよね」
「…………」
そんなのわかってる。
けど、自分でそれを肯定するわけにはいかなかった。
「もともと歳も離れてて。先生と生徒だし。師匠と弟子だし。対等に見てくれないのは当然じゃない?」
「…………」
チュチュは不貞腐れた顔をした。
「諦めれば?」
その、決定的な一言を聞いて、チュチュは涙目で顔を上げる。
「そんなこと、最初からわかってるし。そんな分かりきったことで、諦められない」
メンテは、すっかり足を投げ出して座っていた。
「チュチュは、そうだよね」
どこか、呆れたような、それでいて優しい顔。
「…………」
メンテが、アイスティーをぐびぐびと飲む。
「じゃあ、さ。最後までぶつかっちゃいなよ。どうせ結果が同じなら、当たって砕けたって同じことじゃない?」
「そんな無責任な慰め方ある~?」
不満そうに口を動かしたけれど、その言葉で、チュチュは少し、気が晴れていた。
諦めなければとウジウジするよりは、むしろその方がさっぱりしていていいかもしれない。
勘のいいシエロのことだ。
あそこまで言ってしまえば、少なからず気持ちは気付かれてしまっているだろう。
それなら、ここできっぱり諦める必要はないんじゃないかな。
好きだと言うだけで、迷惑ということもないだろう。
むしろ、シエロには聞いてほしい。
行き場を失い、いつか忘れ去られる運命の、この小さな恋心のことを。
「それとも」
ふと、思いついたようにメンテが言葉を紡いだ。
「もしかして、心に決めた人でもいるのかな」
「え……?あ???え????」
チュチュが、今初めてその可能性に気付いたように、目を白黒させた。
「そんな、こと」
「だって、あの人、公爵家の人間だろう?婚約者の一人や二人……」
そうなのだ。
貴族に婚約者がいるのは、珍しい話ではない。
必ず必要というわけでもないけれど。
位の高い貴族では、幼い頃から婚約者がいることも多い。
チュチュだって、侯爵家の娘として、そろそろそんな話が舞い込んできてもおかしくない年頃だった。
「まさかぁ」
言いながら、それを否定しきるのもおかしいことを、チュチュは知っている。
◇◇◇◇◇
本編ではあまり出してあげられなかったメンテですが、ちゃんと学園生活してますよ!!
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!
ぽんちゃん
恋愛
――仕事で疲れて会えない。
十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。
記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。
そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる