抜剣少女は魔術教師に恋をする

大天使ミコエル

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「そう、なのかな?」
 まじまじと、メンテの顔を見る。
「……ぼくに聞かれたって」
 と、メンテは冷めた返事をした。

 好きな人?
 恋人?
 婚約者?

 そんなこと、聞いたところで教えてもらえるわけもない。
 けど、気になり出すと、気になって仕方なくなってしまった。

 それから数日後のことだ。

 食堂で朝食を食べていると、シエロが入ってきた。
「今日は、予定が入ってしまってね。授業はヴァルに頼んであるから。午後からは用事で出かけてくるよ」

 用事。
 仕事じゃなくて、用事?
 いったいどんな用事なんだろう。

「んー」
 と、ヴァルが素っ気ない返事をした。

 その日の授業前。
 チュチュが教室に入ると、授業準備をしているヴァルが、教壇に立っていた。
 今日は、魔術体系の授業らしい。
 黒板には、魔術体系の図が貼ってある。

 チュチュは自分の席に着くと、
「ヴァルヴァルヴァル」
 と話しかけた。

「どうした?」
 顔も上げずにそっけない返事。
「先生、ってさ。恋人とかいるのかな」
 そう聞くと、ヴァルがふいっと顔を上げた。
「シエロにか?」
「そう。婚約者とか」
「あー、婚約者……」

 その瞬間、背中に冷たいものが走る。

 今のヴァルの顔。
 何かを思いついたみたいな顔だった。

「俺からそういう話はできないな」
 結局そんな返事で、その話は終わってしまった。

 いる、のかな。

 授業の後、食堂へ下りると、たまたままだシエロがそこにいた。
「先生」
「やあ、チュチュ」
 長めの金髪が、揺らぐ。

「先生、おまんじゅうあるけど、おやつに持っていく?」
 ひょっこりとおまんじゅうを差し出す。
「ああ、いいの?ありがとう」
 いつもと同じ、綺麗な笑顔。

 アタシから聞くわけには、いかない。

 じゃあどうしよう、と思った時、本当に、つまらないことを思いついた。
 こっそりと馬車に乗って、付いて行ってしまえばいい。
 きっと、小さい方の馬車で出かけて行くから。

 エマとリナリと3人で食べる予定の小さなおまんじゅうを掴んで部屋へ戻ると、また部屋の外へ出た。

 そんなこと、できるわけない。

 けれど、その思考とは裏腹に、チュチュは早足で階段を下りる。

 バレたらきっと怒られる。

 怖い。

 けど。

 チュチュは、厩舎へ向かった。
 学園の馬が、2頭まだそこに居る。

 まだ、行ってない。

 いっそ、行ってしまっていれば諦めがつくのに。

 急いで荷物を包むための大きな布を馬車へ載せる。
 きっと、先生はちょっと雑なところがあるから、荷物用の布があっても気にせずそのままにするだろう。

「よっ」

 馬車に乗り込み、急いで布に包まる。外から見えないように、頭からすっぽりと。

 そのまま静かにしていると、すぐに誰かがやってきた気配がして、そのまま馬車は動き出した。



◇◇◇◇◇



この続編では、シエロくんの話が書ければいいなと思っております。
短い番外編程度のつもりだったけど、思ったよりも長くなりそうです。
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