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88 夜更かしは向いてない(4)
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「みんな、お節食べ……」
元旦ももう昼過ぎ。
亮太が自室に顔を出した時には、他の3人はそれぞれ床に寝ていた。
ケントと礼央は、さっそく新年からゲーム対決をして疲弊してしまったらしい。
床に二人して並んで伸びていた。
サクはサクで、漫画を握りながら、やはり床で伸びている。
死屍累々……?
流石に3人もの男どもに床で寝られると、足の踏み場もない。
「ひーるーめーしー」
言うと、サクだけは元気よく起きてくれる。流石、体力だけはあるのだろう。
ドン、ドン、と重箱を二つ、こたつに置く。
ケントと礼央の方は、まったく動く気配がなかった。
「え、この二人、ガチ寝?」
「みたいだな」
男二人、直立状態で寝てる姿は面白くもあるが、ただひたすら邪魔である。
「疲れたんだろうなぁ」
初詣から帰ってから、寝たには寝たが、この部屋である。
ゆっくり眠れたはずもなく、朝すぐさま起きたせいでまだ眠いのだろう。
亮太とサクがちょこちょこと昼食の用意を進める。
「まあ、先食べるか。食べれなかった奴、カップ麺な」
と、サクが重箱を二つとも開けた時だった。
その匂いに釣られたのか、その話が聞こえたのか。
ケントと礼央が同時に飛び上がった。
「うわっ」
亮太が驚き、腕で防御の体勢を取ったまま固まる。
こんな時は妙に気の合う二人だ。
気を取り直して、4人でお節を囲む。
「こっちはケントんちで、こっちは礼央んち。飲み物と餅はサクの家からな」
お節と飲み物は、それぞれの家からの差し入れだった。
両方お節ってどうなの?と思わなくもなかったが、開けてびっくり。
「あれ、これメニュー被らないようにしてくれてるのかな」
亮太が声を上げる。
実際に、栗きんとんやかまぼこなど、同じメニューのものも無いではなかったけれど、それ以外はほぼ違うメニューだ。
「そうなんじゃん?」
とケントは事もなげに言う。
「礼央の母ちゃんと、最近知り合いになったらしいし」
「へぇ……」
そういえば、礼央くんが一人でここに来た雨の日、母さんが何か連絡取ってくれてたっけ。まさか、あそこから……?
礼央の方をチラリと見たけれど、やはりそんな話を親から聞いているわけでもないようで、眉を寄せるだけで終わった。
端的に言うと、ご飯はどれも美味しかった。
夕方、3人は丁寧なお礼を言って、帰る事になった。
「じゃ、またな」
ケントが手を上げた。
亮太と、礼央の視線が合う。
れおくんは……、帰ってからどんな時間を過ごすんだろう。
一人きりなんだよな、きっと。
やっぱりこのまま、一人にして大丈夫なのか心配になる。
その手を、取ってしまおうかと思った瞬間、ケントが、
「まあ、俺は明日も来るけど」
と声を上げた。
「え、なんで」
礼央があからさまに不服そうな顔を向ける。
「俺、宿題終わってないし。見せてもらわないと」
「あ、じゃあ俺も」
と、サクが声を上げる。
「じゃあ、僕も」
と、礼央が、鼻を鳴らし、意気揚々と言う。
「お前ら勝手に……」
なんて言いながら、その礼央の明るい顔を見て、亮太は少なからずほっとする。
まあ、みんな手土産やら何やら持ってくるし、母さんは喜んでるからいいんだろうけど。
サクなんてこの間、電球取り換えて、母さん大喜びだったからなぁ……。
礼央のなんでもない顔を見る。
けどやっぱ、お参り、礼央の事をお願いしとけばよかったな。
少しだけそう思う。
そして、少しだけ寂しそうな笑顔で、亮太は手を振った。
◇◇◇◇◇
ただ、ご飯食べるだけの話でした。
元旦ももう昼過ぎ。
亮太が自室に顔を出した時には、他の3人はそれぞれ床に寝ていた。
ケントと礼央は、さっそく新年からゲーム対決をして疲弊してしまったらしい。
床に二人して並んで伸びていた。
サクはサクで、漫画を握りながら、やはり床で伸びている。
死屍累々……?
流石に3人もの男どもに床で寝られると、足の踏み場もない。
「ひーるーめーしー」
言うと、サクだけは元気よく起きてくれる。流石、体力だけはあるのだろう。
ドン、ドン、と重箱を二つ、こたつに置く。
ケントと礼央の方は、まったく動く気配がなかった。
「え、この二人、ガチ寝?」
「みたいだな」
男二人、直立状態で寝てる姿は面白くもあるが、ただひたすら邪魔である。
「疲れたんだろうなぁ」
初詣から帰ってから、寝たには寝たが、この部屋である。
ゆっくり眠れたはずもなく、朝すぐさま起きたせいでまだ眠いのだろう。
亮太とサクがちょこちょこと昼食の用意を進める。
「まあ、先食べるか。食べれなかった奴、カップ麺な」
と、サクが重箱を二つとも開けた時だった。
その匂いに釣られたのか、その話が聞こえたのか。
ケントと礼央が同時に飛び上がった。
「うわっ」
亮太が驚き、腕で防御の体勢を取ったまま固まる。
こんな時は妙に気の合う二人だ。
気を取り直して、4人でお節を囲む。
「こっちはケントんちで、こっちは礼央んち。飲み物と餅はサクの家からな」
お節と飲み物は、それぞれの家からの差し入れだった。
両方お節ってどうなの?と思わなくもなかったが、開けてびっくり。
「あれ、これメニュー被らないようにしてくれてるのかな」
亮太が声を上げる。
実際に、栗きんとんやかまぼこなど、同じメニューのものも無いではなかったけれど、それ以外はほぼ違うメニューだ。
「そうなんじゃん?」
とケントは事もなげに言う。
「礼央の母ちゃんと、最近知り合いになったらしいし」
「へぇ……」
そういえば、礼央くんが一人でここに来た雨の日、母さんが何か連絡取ってくれてたっけ。まさか、あそこから……?
礼央の方をチラリと見たけれど、やはりそんな話を親から聞いているわけでもないようで、眉を寄せるだけで終わった。
端的に言うと、ご飯はどれも美味しかった。
夕方、3人は丁寧なお礼を言って、帰る事になった。
「じゃ、またな」
ケントが手を上げた。
亮太と、礼央の視線が合う。
れおくんは……、帰ってからどんな時間を過ごすんだろう。
一人きりなんだよな、きっと。
やっぱりこのまま、一人にして大丈夫なのか心配になる。
その手を、取ってしまおうかと思った瞬間、ケントが、
「まあ、俺は明日も来るけど」
と声を上げた。
「え、なんで」
礼央があからさまに不服そうな顔を向ける。
「俺、宿題終わってないし。見せてもらわないと」
「あ、じゃあ俺も」
と、サクが声を上げる。
「じゃあ、僕も」
と、礼央が、鼻を鳴らし、意気揚々と言う。
「お前ら勝手に……」
なんて言いながら、その礼央の明るい顔を見て、亮太は少なからずほっとする。
まあ、みんな手土産やら何やら持ってくるし、母さんは喜んでるからいいんだろうけど。
サクなんてこの間、電球取り換えて、母さん大喜びだったからなぁ……。
礼央のなんでもない顔を見る。
けどやっぱ、お参り、礼央の事をお願いしとけばよかったな。
少しだけそう思う。
そして、少しだけ寂しそうな笑顔で、亮太は手を振った。
◇◇◇◇◇
ただ、ご飯食べるだけの話でした。
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