DEEP BLUE OCEAN

鼓太朗

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第二章 雨上がりの海

義之

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亮助&幸助兄弟が帰った次の日の夕方。
海人宛に義之からメールが届いた。
海人は耳が聞こえないので、名刺に電話番号は入れていなかった。
代わりに携帯とパソコンのアドレスは入れていた。
義之からのメールはパソコンからパソコンに送られた長いものだった。

title:昨日お世話になりました杉本です。

[本文]
先日はお世話になりました。
本当に楽しい海でした。
土曜日の天気が悪かったので、心配していたのですが、海人さんのガイドで息子たちも楽しめたと思います。
実はうちの長男の亮助は5月のゴールデンウィーク明けから学校に行っていません。
きっかけは小さなことでした。
友達から背が小さいことをバカにされて喧嘩になったんです。
亮助は幼少期からホルモンバランスの関係で、身体が弱く、小柄です。
中学3年生ともなると周囲の男子生徒の身体は大人並みに大きいです。
息子は軽く弾き飛ばされたそうです。
怪我はなかったものの、彼の中で心はかなり傷ついたようで、それから学校にいかなくなりました。
気分転換になればと思い、昨日は久しぶりに海に誘いました。
幸助は楽しみにしている感じでしたが、亮助は渋々と言った感じでした。

でも多少強引でもつれていってよかった。
今日は学校に行くと言い出したんです。
海人さんの話は息子たちにもしていました。
耳が聞こえないハンデを背負いながら、必死に働く海人さんのことは常々話をしていました。
昨日、息子たちは海人さんのガイドに感動していました。
これは海の世界に感動しただけではありません。
コンプレックスを感じさせない海人さんのガイドに感動したのです。
帰りの車で亮助は、その事をしきりに言っていました。
そんな大人な目線で物事を見ることができたんだと、私も我がこの事ながら感心しました。
大人の私も恥ずかしながら、海人さんには無意識に同情していたところがありました。
お父さんの代からお邪魔していましたが、海人さんの代になってどこか義理で行っていたところがあったのかもしれません。
息子たちとの会話でハッと気が付かされました。
親子で日々成長ですね。

次男の幸助はまだまだあどけないですが、これを期にダイビングに興味を持ち出したようで、「将来はダイビングのガイドになる」「海人さんの元で修行する」と言い出しました。
そのときはよろしくお願い致します(笑)

亮助も幸助も、これからどうなるか分かりませんが、気長にのんびりとした姿勢で見ていくつもりです。
今後も親子共々、よろしくお願い致します。
本当にありがとうございました。

杉本義之
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