GO TO THE FRONTIER

鼓太朗

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第八章 虫と獣の戦争

密林へのプロローグ

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「こうなった以上、全面戦争は免れないかと…」
ウェライにポックは奏上する。
虫たちの攻撃はもはや明白だった。
「自分は召喚獣です。主人は信頼のおける人物。助けを求めるのもひとつの方法かと考えます。ただ、主人はあの中(アルカマウラ)にいます。出てくることがなかなか困難なことは聞いていますが…」
ポックはレオンたちに助けを求めることがひとつの解決策だと説明した。
「うむ。人間に助けを求めるか…」
ウェライはやはり始め難色を示した。
「そのものは信頼に足るものなのか? 虫たちを駆逐できる力があるのか?」
ウェライにそう聞かれてポックは思案する。
「信頼はできると思います。そこは保証します。力があるのかとなるとそれは分かりませんとしか言い様がないですね…なんせ最近まで普通の田舎町の青年でしたから。ただあそこに行って相当な力を得たことは確かです。魔法の腕も格段に上がりました。武器の扱いもそれなりにできますし、彼には強力な仲間がいます」
ダンやアンナだけではなく最近仲良くなったと聞いているサラやマリア、ハイデンにはポックも一度会っている。
魔法の力に長けているサラやマリアに武術に明るいハイデンはかなり頼りになる新しい仲間だとポックは感じていた。
ただ、レオンたちをここにつれてくることが最大の難関だった。
彼らを自然な流れでここにつれてくるにはどうすればいいのか。
問題があるとすればそこだけだった。
「今夜、またコウモリのおじさんに乗せてもらってあそこに潜入して話をしてみます。一度お会いいただければ嬉しいのですが…」
ポックがそう言うと、ウェライも仕方がないと息を大きく吐くと、ここにつれてくるように言うと、そばに控えるダークパンサーというモンスターに耳打ちする。
これからのことを話し合う、とポックに言うので、ポックたちもその場から退散することにした。
「さぁ、コウモリのおじさんのところに行こう。何回乗っても慣れないけど、移動手段はあのおじさんしかいないから…」
少しだけげんなりしたようにマーフィーにそう呟くとマーフィーも仕方がないと頷いた。

*****

「というわけで大変なんだよー」
ポックも多少泣きが入る。
ポックと落ち合ういつもの庭園で話をしているレオンたちは今後について話し合っていた。
「そっかー。大変なんだねー。こっちもちょっと動きがあった。薬学の実習で外に出られそうなんだ。薬学の授業を取ってるアンナは良いんだけど、新たに仲間になったハイデンやサラやマリアも同行できないか今考えてるんだよね」
レオンも何とかならないかを考えてくれている。
ポックとしては何としても一人でも多い仲間を集めたい。
レオンも信頼できる仲間をできるだけ連れていきたいと考えていた。
レオンとアンナだけでは多少心もとない感は否めない。
ライモンダに相談するしかないか…。
レオンはそう思った。
ただ、うまくいく方法が思い付かない。
「俺とハイデンは体術の授業の実習って言う口実で薬学の授業の護衛って形でうまく入り込めないかな?」
ダンが腕組みをして唸る。
「後は攻撃魔法の実戦練習とか何とか言ってマリアとサラも入れないかな?」
アンナも頭を捻らせる。
「やっぱりライモンダ先生に相談だね。先生に相談しに行こう!」
レオンが立ち上がると、
「わざわざ探す必要はありませんよ」
突如音もなく現れたのはライモンダだ。
本当に神出鬼没。
「話は分かりました。特別に外出許可が出るように働きかけてみましょう」
ライモンダがあっさりとそう言ったのでレオンたちは拍子抜けしてしまった。 
もしかしてそうなるようにライモンダが画策をしたのだろうか?
詮索のしようもないがここはライモンダに任せることにしたレオンたち。
明日には外に出る許可がおりると告げるとライモンダは何事もなかったように消えてしまった。
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