GO TO THE FRONTIER

鼓太朗

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第八章 虫と獣の戦争

決死の脱出

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「ボーッとすんじゃないよ! 早くこっちに来なっ!」
背後の木の上部を見上げるポックたち。
そこにはパチンコを構えたクラベスがいた。
弾かれるようにマーフィーとウィンを誘って木の上に。
その間に2、3発パチンコから放たれる。
当たるとネバネバと糸を引く赤い果実は狙いたがわずヴェスパナイトの両目の視力を覆った。
かなり気持ち悪いのだろう。
精神的ダメージの方が大きいようでのたうち回るようにしてネバネバをとろうとする。
「いくよ!」
クラベスは鋭く小さくそう言うと、大きな木の葉を飛び移る。
ポックたちも慌ててあとを追った。
巨大な葉っぱの上は非常にバランスが悪い。
躓いたり葉っぱの上を転がったりしながら必死に駆ける。
ポックの凄まじい聴力は後ろから追いかけてくるヴェスパナイトの激しい羽音がどんどん近づいてくる。
「あいつらは臭いに敏感だからこのままでは嗅ぎ付けられて追い付かれる。こっちだよ!」
徐々に高度を下げながら糸のように流れる小川に向かっていく。
そして何の躊躇もなく小川に飛び込んだ。

!!

ポックは残念ながら水に濡れるのを好まない。
毛に感じる感覚が鈍るのだ。
ウィンはその点何の躊躇もなく川に飛び込んだ。
そしてすぐに川原に上がるとブルリと水を弾き飛ばした。
行くしかない!
同じく濡れることを嫌うマーフィーと目配せをすると、意を決して小川に飛び込む。
水がまとわり付くようで気持ちが悪い。
うえー…
赤い実をぶつけられたヴェスパナイトはこんな感じなのだろうか…と半ば同情のようなものを感じながら、背中までしっかりと水に浸かると、対岸に出た。
出るとすぐに身体を震わせる。
「早く! こっちに来な!」
クラベスが草むらに呼び込むのを泣き出したくなるのを抑えて駆け出す。
マーフィーもそれに続いた。
そして草むらに身を潜める。
少し遅れてやって来たヴェスパナイトは、そこで匂いが途切れてしまったのだろうか、しばらくキョロキョロと辺りを見回し、諦めたように飛び去った。
「た…助かった~…」
へなへなとその場にへたり込むポックたち。
危機を脱したポックたちだが、いよいよウィンの言うことが現実味を帯びてきた。
「デッドマンティスがいってたってウィンの証言、あながち嘘じゃなさそうだな」
ポックはまだバクバクと弾む心臓を抑えながら言うと、マーフィーもしきりに頷いた。
「だからいったじゃん!」
ウィンはまだプリプリ怒っている。
「ごめんごめん」
そう言いながらポックはクラベスに向き直る。
「あの…助けていただいてありがとうございます」
クラベスに詫びを入れると、クラベスはカラカラと笑う。
「なぁに、気にすることないさ。あんなこと、ここじゃ日常茶飯事だからね」
たしかに。
この前もハニーベアの子どもがヴぃスパ族のモンスターに攻撃されてあわやということがあった。
「これは何とかしないと。ウェライ大帝に相談だな」
ポックはそう呟くと、ウィンとマーフィーを連れて歩き始めた。

*****

「なんと…そんなことが…」
話を聞いたウェライはやれやれとため息をつく。
だから一人でちょろちょろ外に出るなといつもいってるだろう!
というお決まりのお説教のあと、一緒にいたクラベスに問いかける。
「どう思う?」
「今回ばかりはウィン王子の言うことは看過できない由々しき非常事態だと考えます。ヴィスパナイトが孵化したとなればこちらもそれなりの戦力で迎え撃つ必要が有るのではないかと」
クラベスも事態を重く受け止めているようだ。
「これは一刻も早く討伐部隊を編成すべきだな」
ウェライは重々しくうなずく。
「あの…」
ポックは控えめに進言する。
「どうかしたか?」
怪訝な顔をするウェライにポックは話始めた。
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