GO TO THE FRONTIER

鼓太朗

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第八章 虫と獣の戦争

草笛

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密林をしばらく進むレオンたち。
その先に立派な神殿跡が姿を表したのは、足元の悪さにそろそろうんざりし始めた頃だった。
「ここは古代カルバン人の遺跡。ここに獣の王、ウェライ大帝がいる。」
バランがそう言うと、さっと先頭にたって神殿の中に入っていった。
慌ててレオンたちも後を追う。

松明がドーム状の廊下をぼんやり照らす。
石の廊下に靴音が異様に響いた。
廊下の奥。
玉座にはがっしりとした銀色の毛をした巨大な犬が座っていた。
「あれがウェライ大帝…」
レオンは呟く。
ウェライはそこだけ太陽が差し込む玉座の間の中央から優雅に視線をこちらに向けた。
モスグリーンのような色の瞳をしている。
「久しぶりだな。ウェライ殿」
バランが声をかける。
「しばらく見ぬ間にまた筋肉をつけたな。バラン殿」
ウェライはお辞儀をするように頭を下げると、そのままレオンの方に顔を向ける。
「で、そこにいる彼らがポックが言う、我々獣属に手を貸してくれるという助っ人か?」
牙が日光に反射してキラッと光る。
笑っているように見えるウェライにレオンはおずおずと頭を下げる。
「君からはなぜか不思議な力を感じる。魔素の流れが独特なのか? それとも…」
ウェライは目を細めてレオンを見た。
なんだかそわそわする。
「そしてその後ろにいるのが精鋭たちか?」
ウェライは視線をダンたちに向ける。
「こいつらもなかなかの手練れだ。今回の事件を聞いて協力してくれる。力の種類はまちまちだが、各々がここ最近の生徒たちのなかではピカ1の生徒たちだよ」
バランはそう言ってダンたちを紹介する。
え?
そうなの?
という表情をする面々。
女性陣は魔法のスペシャリスト。
男性陣は戦闘のスペシャリスト。
こう見返すとレオンの周りはかなりの強者揃いだと気づく。
そしてあの学校の中でも指折りの優等生であることを熱く語るバランに、各々がもじもじした。
その説明を受けたウェライは、面白そうにレオンたちを見た。
「なかなか面白い生徒さんたちだな。活躍が楽しみだ。さぁ、話を戻すが…」
ウェライは外を見る。
「今、一触即発の状態が何年も続いている。しかし、この度あいつらは動きを見せるということが君の仲間が教えてくれた」
ウェライはそう言ってポックを見る。
ポックも強く頷いた。
「我々もただ指をくわえて待っているわけにもいかず、なにかことが起こる前にアクションをと考えていたのだ。そこに君たちが現れた。我々は無益な戦争などを望んではいない。ただ、向こうがその気ならば容赦はしない。我々の望むのは静かな生活。それだけだ」
そこでウェライは言葉を一度切り、レオンの後方に視線をやる。
「お前は外で遊んでていいんだぞ。ウィン」
一同が一斉に振り返る。
ビクッとした表情で後ろにいたのはウェライの息子、ウィン。
大人の話に首を突っ込むなという表情のウェライに少しムッとした表情をするウィン。
「でも、俺もみんなに協力したい。だって俺はウェライ大帝の息子だから!」
そう言って胸を張るウィンだが、脚は微かにプルプルと震えている。
勢いは立派だがどうもまだまだあどけなさがある。
レオンは膝をつくとウィンに視線を近づける。
「君はお父さんの役に立ちたいんだね」
そう言ってにっこりと笑うレオン。
ウィンはなんとも言えない表情をする。
「おいで」
レオンは手を伸ばすとウィンは一瞬迷ったような表情をしたが、一歩、また一歩とレオンに歩み寄った。
レオンはウィンを抱き上げるとみんなの輪に戻る。
ウェライはやれやれという表情を見せたが、それ以上何も言わなかった。
「では、これから敵の本拠地に乗り込む。作戦としては…」
そう言いかけたとき、外からフェーーーイという不思議な音が響いた。
「!?」
全員の視線が宙を舞う。
「これは…戦いの草笛。あいつらがやってくるぞ!敵襲!!!」
ウェライは低くよく通る声でそう叫んだ。
周囲の空気がぞわっと動くのを感じて、影が四方八方から飛び出し、外へと走り去った。
今まで全く気配を感じなかったが、はじめからそこにいたのだ。
走り去ったのは肉食獣モンスター、ブラックパンサー。
影は風のように走り去ると神殿の外へと出ていった。
「いくぞ!」
ウェライはヒラリと玉座から舞い降りた。
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