43 / 50
第九章 カルバン帝国(カルバ王子編①)
褐色の美女
しおりを挟む
サヤコフ小路の「月夜亭」。
小さな松明の灯るその建物はジャトゥーリ有数のスラムにおいて異様なほどひっそりと佇んでいる。
木造のシックな建物で、華美さは一切ないが、手入れが行き届き、艶出しのニスがいい感じに馴染んでいる扉が品の良さを醸し出している。
可愛らしい小さな花が咲いた鉢植えが並べられ、カーテンがかかっていてなかが見えない窓は一転の曇りもなく磨きあげられていた。
ここだけ時が止まっているように静かに止まっている。
建物はそれなりに大きいが街に溶け込むように建っていた。
レオンはその建物からわずかながら魔力を感じた。
ちょっと前までは何も感じなかったレオンだが、最近はこのように魔力の微弱な流れも感じ取れるほどに成長していた。
「何となく魔力を感じる。最近何となく魔力の流れのようなものを感じるんだよね。空気の流れのなかに漂ってるみたいな感じ。これもラプラドル島の恩恵なのかな?」
レオンは不思議な感覚の正体を知りたくてアンナやマリア、サラを見た。
「ふーん。レオンもついに魔力を感じるまでに成長したのね。初めて会ったときはその感覚、完全に眠っていたもんね」
アンナは感慨深そうに言う。
「確かにこの建物からは微かに魔力の流れのようなものを感じるわ。中に強力な魔法使いがいるのかしら?」
マリアは臭いを嗅ぐように目を閉じて魔力を嗅ぎとるように息を吸い込んだ。
「入ってみる?」
サラはレオンを見上げて言った。
「うん!いこう!」
レオンはしっかりとした銅の扉の取っ手に手をかけた。
シンプルだがしっかりした造りの扉には流れるような字体で「月夜亭」と書かれていた。
*****
重い扉を開くと中は小綺麗なフロントになっていた。
カウンターの奥に立っていたのは褐色の肌をした長身の女性だった。
流れるような黒髪。
少しつり目で濃いグリーンの切れ長な瞳。
細身の身体に不釣り合いなふくよかな胸。
ウエストはなにかで締め付けるのかと思うほど括れていて、手足はほっそりと長い。
年は恐らく30を越えているであろうが、肌はみずみずしくハリがあり、若々しく健康的な美女がそこには立っていた。
入ってきたレオンたちを見ると、この宿の女主人であるらしい女性は、冷たいほどの美貌を少し崩して笑顔を見せレオンたちに語りかけた。
「いらっしゃいませ。ようこそ月夜亭へ」
女性としては低く落ち着いた雰囲気でそう言うと、レオンたちを近くへ招いた。
「こんにちは。はじめまして。旅の者なのですが、ジャトゥーリに着いたらここに来るよう言われました」
レオンは恐る恐るそう言うと、カウンターに近づき、カウンターの女性に通行手形を見せる。
それを見た女性は、一瞬少しだけ驚いたような表情を見せたが、それもすぐに引っ込めてレオンたちを見た。
「レオンと言います。ある人に言われてこの宿を探していました。…あなたは…」
レオンは何と言って良いか分からずとりあえず自己紹介をする。
「!!…あなたが」
女主人はハッとしたようにレオンを見る。
「私はこの宿を経営しています、クルエラと言います」
ニコッと笑うと釣り気味の目が優しい印象になる。
さっきまでのギラギラした冷たさのある美人という印象から、ふんわりとした暖かな印象に変わった。
この人がクルエラさん。
なぜかレオンを始めメンバー全員がこの人に昔あったことのあるようなどこか懐かしい感覚に陥った。
始めて会うはずなのに何で…?
そう思いながらレオンはクルエラを見た。
しかし、次の女主人の一言は誰も想像していなかった。
「私、ライモンダの娘です」
涼しい顔をしてそう言ったクルエラ。
「「「???!!!」」」
一瞬なんのことかわからない絶句の後、
「「「えーーーーー!!!???」」」
宿からたぶん向こう三軒までに聞こえる声で絶叫し、あんぐりと口を開ける一同であった。
小さな松明の灯るその建物はジャトゥーリ有数のスラムにおいて異様なほどひっそりと佇んでいる。
木造のシックな建物で、華美さは一切ないが、手入れが行き届き、艶出しのニスがいい感じに馴染んでいる扉が品の良さを醸し出している。
可愛らしい小さな花が咲いた鉢植えが並べられ、カーテンがかかっていてなかが見えない窓は一転の曇りもなく磨きあげられていた。
ここだけ時が止まっているように静かに止まっている。
建物はそれなりに大きいが街に溶け込むように建っていた。
レオンはその建物からわずかながら魔力を感じた。
ちょっと前までは何も感じなかったレオンだが、最近はこのように魔力の微弱な流れも感じ取れるほどに成長していた。
「何となく魔力を感じる。最近何となく魔力の流れのようなものを感じるんだよね。空気の流れのなかに漂ってるみたいな感じ。これもラプラドル島の恩恵なのかな?」
レオンは不思議な感覚の正体を知りたくてアンナやマリア、サラを見た。
「ふーん。レオンもついに魔力を感じるまでに成長したのね。初めて会ったときはその感覚、完全に眠っていたもんね」
アンナは感慨深そうに言う。
「確かにこの建物からは微かに魔力の流れのようなものを感じるわ。中に強力な魔法使いがいるのかしら?」
マリアは臭いを嗅ぐように目を閉じて魔力を嗅ぎとるように息を吸い込んだ。
「入ってみる?」
サラはレオンを見上げて言った。
「うん!いこう!」
レオンはしっかりとした銅の扉の取っ手に手をかけた。
シンプルだがしっかりした造りの扉には流れるような字体で「月夜亭」と書かれていた。
*****
重い扉を開くと中は小綺麗なフロントになっていた。
カウンターの奥に立っていたのは褐色の肌をした長身の女性だった。
流れるような黒髪。
少しつり目で濃いグリーンの切れ長な瞳。
細身の身体に不釣り合いなふくよかな胸。
ウエストはなにかで締め付けるのかと思うほど括れていて、手足はほっそりと長い。
年は恐らく30を越えているであろうが、肌はみずみずしくハリがあり、若々しく健康的な美女がそこには立っていた。
入ってきたレオンたちを見ると、この宿の女主人であるらしい女性は、冷たいほどの美貌を少し崩して笑顔を見せレオンたちに語りかけた。
「いらっしゃいませ。ようこそ月夜亭へ」
女性としては低く落ち着いた雰囲気でそう言うと、レオンたちを近くへ招いた。
「こんにちは。はじめまして。旅の者なのですが、ジャトゥーリに着いたらここに来るよう言われました」
レオンは恐る恐るそう言うと、カウンターに近づき、カウンターの女性に通行手形を見せる。
それを見た女性は、一瞬少しだけ驚いたような表情を見せたが、それもすぐに引っ込めてレオンたちを見た。
「レオンと言います。ある人に言われてこの宿を探していました。…あなたは…」
レオンは何と言って良いか分からずとりあえず自己紹介をする。
「!!…あなたが」
女主人はハッとしたようにレオンを見る。
「私はこの宿を経営しています、クルエラと言います」
ニコッと笑うと釣り気味の目が優しい印象になる。
さっきまでのギラギラした冷たさのある美人という印象から、ふんわりとした暖かな印象に変わった。
この人がクルエラさん。
なぜかレオンを始めメンバー全員がこの人に昔あったことのあるようなどこか懐かしい感覚に陥った。
始めて会うはずなのに何で…?
そう思いながらレオンはクルエラを見た。
しかし、次の女主人の一言は誰も想像していなかった。
「私、ライモンダの娘です」
涼しい顔をしてそう言ったクルエラ。
「「「???!!!」」」
一瞬なんのことかわからない絶句の後、
「「「えーーーーー!!!???」」」
宿からたぶん向こう三軒までに聞こえる声で絶叫し、あんぐりと口を開ける一同であった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる