Go to the Frontier(new)

鼓太朗

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第二章 アラベスク王国

試練の洞窟 第二層 前編

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第二層。
苔むした石の壁が細い廊下を作っている。
先ほどとは違って天井も低く薄暗い。
オーソドックスな「ダンジョン」と言えるような、そんなフロアが第二層だった。
松明が点る廊下を進むといくつかの脇道があった。
行き止まりが見えるところもあれば、曲がりくねっていてどちらが正しい道なのか分かりにくいところもある。
埃っぽい道を進むと、ポックが何かに気付いたのか、耳をピクッと動かした。
それを見たダンが短く警告する。
「おい!早速お出ましだ!」
ダンの視線の先に現れたのは巨大なハリネズミのモンスター・バクスターと、大量の砂を吐く大型のトカゲ・サンドドラゴンだ。
どちらもこちらを察知して臨戦態勢に入っている。
「アンナさん、下がってて!」
どちらも魔法が効きにくいのでレオンはアンナは後方に下がらせる。
狭い空間なのでブーメランはあまり有効ではない。
レオンは双剣を抜いた。
バクスターが踊るように身体をねじると、遠心力で無数の針を飛ばしてきた。
「うわっと!」
レオンは思わず目を背け、距離をとる。
一本一本のパワーは大したことないが、当たればそれなりに痛いし、何よりもレオンたちを怯ませるのには効果的だったようだ。
その隙にサンドドラゴンが「ゴヘッ」と変な音を立てて砂煙を吐き出した。
まずい!
視界を奪われたレオンにバクスターが身体を丸めて体当たりをしてきた。
チクチクしていたいし、小柄なレオンは勢いで吹っ飛ばされた。
石の壁にしこたま背中を打ち付ける。
「こんのやろー!!」
ダンがバックルでメリメリと針をへし折りながら正拳突きを放つと、ゴムまりのようにバウンドしたバクスターはそのまま動かなくなった。
その間に、クルトがサンドドラゴンに拘束の呪文をかける。
呪文が効きにくいのでほんの一瞬しか効果がなかったが、その隙にレオンがふわりと飛び上がり、ズバッ、ズバッとサンドドラゴンを2ヶ所切り裂いた。
「キエーーー!」
と、何ともいえない気味の悪い声を発するサンドドラゴンにダンがジャンプ一発、空中回し蹴りを浴びせると、サンドドラゴンの首はグキッと嫌な音を立ててあらぬ方向に曲がった。
ズシン!と砂ぼこりを上げて倒れるサンドドラゴン。
勝負アリだ!

「ふー。ビックリしたー!」
レオンはまだ心臓がドキドキしていた。
「ホントに。こんなのが続いたら神経がもたない…」
クルトもうんざりした様子で周りを見る。
「ただ、もう始まっちまったもんは仕方がない。先を進むぞ!」
ダンは自分に言い聞かせるようにそう言うと、再び歩き始めた。

その後はある程度吹っ切れたレオンは、ダンと協力して襲い来るモンスターを手早く倒した。
どれもたいした相手ではなかったが、このエリアはモンスターが多い。
基本的に出てくるのは自然系統と言われる獣型のモンスターばかり。
知能は低めで狂暴というセオリー通りのモンスターが続々と現れる。
迷いながらなので遭遇する確率も高く、狭いのでブーメランが使いづらい。
「モンスターの音が多すぎてどこから来るかわからないよー…」
とポックも頭を抱えた。
みな次第に疲弊してきた。

ヘンリー王子たちの露払い状態だったので、サッと通り抜けた第一層と違い、迷い迷い進む第二層。
長い時間歩き回った気がするが、本日何度目になるかわからない分かれ道についた。
右はなんだか暗い。
左は曲がり角の向こうが明るい。
あっちには何かあるのだろうか?
「行ってみる?」
アンナがそう言って左側に歩き始めた。
「ちょっと!大丈夫か?!」
クルトがそう言って止めようとしたが、アンナはさっさと歩いていってしまったので他のメンバーも仕方なくあとを追う。

角を曲がると木の扉が現れた。
扉は少し開いていて、光は中から漏れていた。
扉の先には小部屋があるようだ。
「入ってみるか?」
クルトが周囲の同意を確認する。
一同頷くと、クルトは扉を開いて中に入った。
恐る恐る中に入る。
突然モンスターが襲ってくるのではないかとドキドキしたが、どうやらそんなことはないらしい。
「曲がり角の段階で魔力の流れを感じたの。たぶん結界のようなものが張ってあるみたいね。この結界のおかげでモンスターたちは入れないみたいね」
アンナがそう言うと、辺りを辺りを物色し始めた。
レオンも辺りを調べ始めた。
小部屋の中はテーブルと椅子、小ぶりな本棚とチェストが一つずつ。
テーブルには小さなランプが明かりを灯っている。
ほんの少し前、何ならレオンたちと入れ替りくらいの間まで人がここにいたみたいだ。
ではこの部屋には誰が?
そしてこの中にいた人は今どこに?
レオンは嫌な予感がした。
モンスターの相手をしていたので忘れかけていたが、レオンたちはフロローに命を狙われているのだ。
モンスターより恐ろしいのは人間なり。

そんなレオンの心配をよそに、ダンはチェストを物色している。
二段目の引き出しから金貨の入った小さな袋を見つけた。
ダンがこっそりと腰の小袋にこの袋を入れたのをレオンは横目で見た。

クルトとアンナは本棚を調べている。
レオンも本棚に近寄り、一冊本を抜き出して何の気なしに開いてみた。
「???」
どういうことだ?
まさかの何も書いていない。
多少がっかりしてペラペラとページをめくった次の瞬間。

シュパッッ!!

突然黄色い火花が散ったような気がした。
レオンは驚きいて本を放り出しそうになったが更なる驚きにあいた口がふさがらなくなった。
先ほどまで白紙だったページに文字が浮かび上がったのだ。
カチャカチャと音を立ててパズルのように文字か浮かんで本に刻まれていく。
「あ…あぁ…」
訳のわからない声を出してしまうレオンを尻目に、書き込まれた本は、はじめからそのように書いてあったかのように静かになった。
「何だ何だ?」
クルトが覗き込む。
「突然、文字が…」
レオンは震える声でそれだけ言う。
「あぁ…これは魔法の書だな」
クルトは事も無げに言う。
「魔法の書?」
レオンは初めて見る魔法の書に首をかしげる。
「この本には魔法がかけられてるんだ。読むべき人が読むように。でもなんて書いてあるか分からないし、そもそもなんでレオンに反応したんだろう?」
クルトは不思議そうにレオンの顔と魔法の書をまじまじと見比べる。
「本が読む人を選ぶってことですか?」
いつの間にか側にいたダンが尋ねる。
「そう。魔法の書には本の妖精が取りついていて、その妖精が読むべき人を選ぶんだ。
ただ、その基準は明確にあって、他人がとやかくできるもんではないはずなんだ」
クルトもお手上げなのか、興味を無くしたのか、魔法の書から視線をはずすと、別の本を見始めた。
レオンは魔法の書を見てみる。
文字はなんと書いてあるのかわからない。
どうやら見たこともない古代文字のようだ。
あとで明るい場所でゆっくり読もうとこっそり拝借するべく麻の袋に放り込んだ。

その時、背後から声がした。
「勝手に他人の部屋に入るとは感心しないな?」
全員が弾かれたように振り替えるとそこには青い鎧を身につけた大柄な男が立っていた。
確か王座の間にいたクリスの従者、水の戦士、カムイだ。
「まっ、俺の部屋でもないがな…」
天井に頭がつきそうな大柄な男はそれだけ言うと、おもむろに腰に下げた大刀に手を掛けた。
「お前たちはこの洞窟のどこかで死んでもらうはずだった」
鞘から抜かれた大剣。
一振でレオンなら完全に胴体が泣き別れになるだろう。
扉を塞ぐように立っているので、逃げ場がない。
これはかなりピンチだ。
焦るレオンとは裏腹に強者の余裕なのだろうか、悠然とカムイは続ける。
「この後、名誉の死としてお前たちは悲劇の英雄となるだろう。試練の洞窟に挑んで無惨に散っていった英雄とな。当初の計画とは少し違うが、むしろ好都合。お前たちにはここで死んでもらおうか!」
そう言うと、カムイは不気味に青白く光る水の大剣をレオンたちに向けた。
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