Go to the Frontier(new)

鼓太朗

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第三章 ラプラドル島 前編

分け石

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長い廊下の先には豪華な装飾が施された大きな両開きの扉があった。
取っ手には鳥の頭をしたライオン、グリフィンの像。
レオンが触れようとすると、突然取っ手が目を覚まし、動き出した。
「おいおい!汚い手で俺に触れんじゃねー!」
しかもしゃべった!
レオンが唖然としていると、グリフィンの取っ手が話はじめた。
「おめえたちも新入生か? 今日はやたらと新入生が多いな。まぁいい。中に入んな。中では失礼の無いようにな!」
なぜかベラベラ勝手に喋るだけ喋って中に入れてくれた。

新入生?
どういうことだろう?
よく分からないままにレオンは先頭に立って部屋の中に入った。

中には見慣れた大きな背中があった。
「ダン!!!」
飛びつくように走り出した。
「レオン!!!アンナ!!!」
ダンもレオンやアンナに気付き相好を崩す。
「いったい何がなんだか?」
ダンはそう言って頭をかいた。

確かに。
気がついたらここにいたのだ。
ここはどこなのか?
なぜつれてこられたのか?
今の自分達のおかれている状況は?
全く分からない。

辺りを見回すと、レオンたち以外に数人の男女がいる。
レオン、ダン、アンナ、サラを入れて全部で9人。
歳はみんな10代か20代だろう。
みな同じように突然連れられてきたのだろうか。
一様に不安そうな顔をしている。

そこに突然砂を巻いたように渦が起こり、中から先ほどの女性が現れた。

プラチナブロンドの髪をひとつにキュッときつく結い、モスグリーンのローブを着た大柄な女性は、レオンたちを見ると口許を少しだけ上げて笑った。

女性は優雅に地面までまっすぐに延びたローブを翻すと一段高いステージからみなを見下ろした。
「みなさん、ラプラドル島へようこそ。ここはカルバン帝国の北の沖に浮かぶ小さな島。カルバン帝国軍養成施設として設立されました。ここでしっかり学んで立派な軍人になりなさい。申し遅れましたが私はライモンダ。この施設の指導教官です。わからないことはなんでもお聞きなさい」
ライモンダはそう言ってやはり口の端しだけ少し上げて優雅に笑う。
レオンたちは困惑の色を隠せずにいた。
突然つれてこられた先は軍の養成所?
しかもカルバン帝国…。
「ということは俺たちはカルバンの軍隊に入るためにここにつれてこられたと言うことですか?」
そばにいた肌の浅黒い青年(マヌーフ族のようだ)は早速ライモンダに質問した。
「そう。あなたたちはここで有能な軍人になるための訓練を受けていただきます」
ライモンダは質問した青年をまっすぐに見てそう言った。
「と言うことは俺たちはカルバン帝国に使われるためにここにつれてこられたのだと…?」
青年は次第に語気を荒げていく。
しかしそんな青年に対してライモンダは表情を一切変えなかった。
「たとしたらどうしますか?」
やや挑発的なモノの言い方をした。
「ふざけるな!」
案の定、青年はいきり立ってライモンダに食って掛かるように近付いた。
だがこの時、レオンは何となく嫌な予感がした。

行ってはいけない!

そんな気がしたのだ。
「やめろ!」
「ホヤン!」
同じく不穏な空気を察したらしいダンと、そばにいた長身の女性が制止しようとしたがその一瞬先にライモンダさ手をかざすと手のひらから紫色の火球が飛んできた。
ドカーン!
と凄まじい音を立てて火球はホヤンと呼ばれた青年に着弾した。
「うわぁぁぁぁぁーーーー!!!」
ホヤンはとたんに火だるまになり、床に倒れる。
そして次の瞬間、さらさらと砂のように消えてしまった。
一同、唖然とする。
「変な気は起こさないことね! 彼の魂は永遠に闇のなかをさ迷うことでしょう」
ライモンダは顔色一つ変えずにそう言った。
部屋全体に恐怖と緊張が駆け巡る。
サラは先ほどから目に見えて震えている。
かわいそうに。
目の前で起こっていることはレオンですら受け入れがたい理不尽な状況だ。
ただ、ここは下手にあがいたり反抗したりはしない方が得策なようだ。

レオンはサラの手をそっと握ってやる。
サラははっとしたようだが、そのあとはガチガチに入った肩の力を抜くようにフーッと長く息を吐いた。

こんなに小さいのに彼女なりに今のこの状況を必死に受け入れようとしている。
度胸の座った子だとレオンは密かに舌を巻いた。

「さてと…」
ライモンダはひとつ息を吐くと、手に何やら石のようなものを出して皆に見えるように掲げた。
「これは特殊な魔法をかけた緑光石です。あなたたちは今から能力に合わせて組分けをしていきます。ここは真ん中の塔。あなたたちが生活をする場所です。そして東西に二つの建物があります。西が魔術の塔アルカマウラ、東が武術の塔スルガトラス。あなたたちは今からどちらがふさわしいかこの石で占います」
そう言うと一番近くにいたダンを手招きした。
ダンは一瞬戸惑ったようなそぶりを見せたが、意を決して前に出た。
「よろしい」
ライモンダはまた口だけの笑みを見せると、ダンの手に分け石を握らせる。
次の瞬間、分け石は真っ赤な光を放った。
それこそ部屋中が真っ赤に見えるほどの激しい光にレオンは少し目を細める。
「スルガトラス!」
ライモンダは澄んだ良く通る低い声でそう言った。
ダンは…。
あまりの光景に固まっている。
「もう下がってもいいですよ」
唖然とするダンにライモンダはそう言うと、ダンから分け石を受け取った。
我に返ったダンはスッと列に戻る。
次はアンナ。
今度は眩く緑色に光った。
「アルカマウラ!」
ライモンダは魔術師の塔を宣告する。
アンナも部屋全体が光が充満するほどの強い光が放たれた。

その後、次々に塔が振り分けられていった。
光の強さには個人差があった。
ダンやアンナのように強い光を放つものはいない。
サラのとなりにいるマヌーフ族の青年が前に出た。
分け石を握る。
「???」
なにも起こらない。
魔力が切れたのか?
レオンがそう思うと、ライモンダは、
「クヌート」
と呟いた。
ここで新しい単語が飛び出した。
レオンはカルバンの言葉はわからないが、アラベスクの言葉で「クノーター」は「奴隷」という意味だ。
アラベスクはもともとカルバンから脱出した移民が建国した国なので、言葉は似ている。

どちらにも掛からない者は奴隷にされてしまうのか?
そう不安に思っていると、どこからともなく現れた兵隊に両脇を抱えらるようにして部屋から連れ出された。
「メルヴィン!」
大柄な女性がそう言い、メルヴィンと呼ばれた青年は悲しそうな目をして部屋から出ていった。

入れないこともあるのか?

ここで新たな恐怖を感じた。
「あなたは動かないで!」
ライモンダに言われてもやはり彼女の視線は閉ざされた扉からはずせずにいた。

次はサラだ。
「さぁ、こちらへ。お嬢さん」
ライモンダがさらに手招きする。
こんなか弱い女の子が…。
レオンは心配でサラの方を見た。
視線の先のアンナも同じように不安な目をしている。
サラは恐る恐るという目で一歩前に出た。
ライモンダは他の人にしたのと同じように無表情で分け石を渡す。
サラが石を握ったか握らないか分からない間に部屋全体が緑色に輝いた。
他の誰よりも眩く。
ライモンダが分け石を離しても視界が緑色なほどのまばゆい光にレオンは口をポカンと開けたまま固まってしまった。
「アルカマウラ!」
それでもライモンダは冷静にそう言った。
サラは放心状態なのか、少しの間その場を動けずにいたが、ライモンダに優しく肩を叩かれると、はっと我に返り、やがて静かに列に戻った。

表情は…。

驚いてはいるようだが落ち着いている。
何となく安心したレオンだった。

さて、いよいよレオンの番がやって来た。
自分が武術のたしなみなどないことは分かっている。
魔相があるとベスから言われてはいるが、実際レオンは魔法が使えるわけではない。
分け石が光らなかったら…。
いや、むしろその可能性の方が高いんじゃないか…。
いいや、悩んでも仕方がない!
不安な気持ちを隠しきれないまま、一歩前に出た。
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