Go to the Frontier(new)

鼓太朗

文字の大きさ
47 / 57
第三章 ラプラドル島 前編

ラプラドル島見学ツアー③

しおりを挟む
「アルカマウラに行く前に」
そう言ってポポルはスルガトラスの1階に皆を案内した。
「ここは武器庫。世界中から取り寄せたありとあらゆる武器が保管されています。」
そう言って大きく重そうな鉄の扉をポポルは身体全体を使って押し開けた。

中は本当に様々な武器が整然と並んでいる。
どうやって持てばいいのか分からないような巨大な大刀や金槌から手のひらに収まりそうな小さな双剣、大小様々な弓矢にオーソドックスな剣もある。
一口に「剣」といっても形態や大きさは様々。
アラベスクやカルバンとはまた違った異国の武器らしきものもたくさんあった。
ビックリするくらい細身の「かたな」と呼ばれる武器。
少し反っていて切れるのは外側だけ。
一般的な「剣」とは明らかに違う。
青白い光を放つ刀は芸術品のようだ。

様々な武器のなかには魔法の効果のあるものもあるらしい。
水の双剣は刃が鮮やかなブルーをしていたし、オレンジ色の淡い光を放つ火の槍は触るとほんのり温かかった。

「週に一度の安息日にはこれらの武器の整備もします」
そういえばハイデンもそんなことを言っていたっけ。
レオンはそう思いながら武器庫を回る。
ハンマー、槍、弓矢など、剣以外にも様々な武器が並んでいるのを口をポカーンと開けて見て回る姿はなんとも間抜けで滑稽だが、それほどのバリエーションだった。
普段たいして武器に興味を持たないレオンもこのときばかりはくぎ付けになった。

「次はアルカマウラですー。」
そう言って武器庫を出たポポルは
農園のある2階を通り過ぎてもうひとつの塔の前まで来た。

スルガトラスは濃い赤茶色のレンガだったが、こちらは真っ黒なレンガ造り。
先の尖った帽子のような塔だった。
2階から中に入る。

2階はスルガトラスと同じように広い土の床の運動場のような部屋だった。
真ん中ではライモンダ先生が20人程の生徒に授業をしている。
「ライモンダ先生は魔法のスペシャリストですが、徳に攻撃魔法がご専門です。見てください。すごいですよ」
ポポルがそう言うのと運動場に巨大な氷の柱がとんでもない音をたてて反り立ったのはほぼ同時だった。
「おー!!」
一同、思わず感嘆の声をあげる。
自分もいずれはあんな魔法が使えるようになるのだろうか。
レオンは思わずうっとりと輝く氷の柱を見つめた。
次の瞬間、その氷の柱は粉々に砕け散った。
そして空間を青く染めながらキラキラと輝き渦巻き始めたのだ。
「あれはスノーフレイク。強烈な冷気が空間にまで作用する魔法です。綺麗ですが、あの中心は体を切り裂く程の超低温地帯です。近づかないようにね」
ポポルは事も無げに言う。
まぁさすがにあそこには近づけはしなさそうだが、あんなに綺麗なのに何とも猟奇的な魔法だ。
ライモンダはというと…。
「笑ってるね…」
最も猟奇的なのはライモンダ先生かもしれない。

「さぁ、上の階に行きましょう」
ポポルは笑顔でライモンダ先生に挨拶をすると階段を上って上のフロアに。
レオンたちも軽く会釈をしてポポルの後に続いた。

3階、4階もスルガトラスのように教室が二つずつ。
ただここはスルガトラスとは違って、特殊な教室のようだ。
「3階は調理室と、工芸用の工房です。」
これらは兵隊の食料と食器を作る部隊のために開設されている授業だとポポルは説明をする。
なるほど。
兵隊と一口にいってもいろんな仕事があるんだなぁとレオンは感心した。
中では少人数だか何人かの生徒たちが料理をしている。
何かをいぶしているような匂いがする。
「あれは干し肉の薫製を作っていますね。長持ちして味も悪くない。長旅にはもってこいです」
ポポルはペロリと舌なめずりをする。
確かに長距離の移動に食物は欠かせない。
薫製は実に理にかなった食材と言える。
「やはり腹が減っては戦はできませんから♪」
そう言ったポポルはお腹が減ったのか、少し名残惜しそうにその場を離れた。
反対側の工芸室ではこれまた少数だが轆轤 ろくろを回しながら何かを作っている。
「固くて丈夫な食器を作っています。あの焼き物は本当に固くて、落としても割れませんし、何ならハンマーで叩いてもちょっと欠ける程度です。それでいて紙のように軽い。構造は言えませんが、カルバンの誇る伝統芸能のひとつです」
「どうだ!」とばかりになぜか自慢げなポポラが可愛らしくて思わずレオンは笑ってしまう。

「4階は音楽室と美術室。5階は魔法原理等の座学で魔法を学ぶための教室です」
ポポルはそろそろ飽きてきた皆の心を読んでか足早に階段を上がっていく。
4階の音楽室には様々な楽器が所狭しと並んでいる。
「戦いの合図を知らせるラッパはあれ。一応きちんとした指導を受けないと鳴らすのは難しいです」
ポポルが指差す金色に輝くラッパ。
「戦いのラッパ」と呼ばれる特別なラッパが教室の前方に鎮座している。
日が高くなって窓の外から差し込む光が指紋ひとつないピカピカの楽器に降り注ぐ。
キャンバスが並んだ美術室や5階の教室を覗いて、レオンたちは6階に到達した。

6階はなんだか不思議な空間だった。
なんだか薬品のような匂いが充満する部屋。
「ここは薬学の座学で使用する実験室です。あそこにいるのがオセロ先生。薬学のスペシャリストです」
そういったポポルの先を見たが誰もいない…ように見えた。
そこに、山積みされた本の隙間から仔猫ほどの小さな人間がこちらを見ていた。
「リリパットのオセロ先生。弓矢の腕もピカ一」
ポポルに言われてようやく気づいた。
オセロ先生はにっこり笑うとお辞儀をしたのでレオンたちも返礼する。
「薬のことなら何でも聞けば良いですよ」
ポポルはやはり楽しそうに言った。
レオンは薬学の教室を見回した。
教室の真ん中には巨大な壺がクツクツと音をたてて煮たっている。
不思議な匂いはここから来ているようだ。
「これはね。ブカンという柑橘系の実とカルバンユリの花びら、ルコルの実で新しい睡眠薬を作っているのさ。ルコルの実だけの睡眠薬よりももっと強烈でありながら、身体への害が少ない。普通のルコルの絞り汁だけじゃぁ頭がくらくらするからねぇ」
オセロ先生は身体は小さいし分厚いターバンを巻いているのでよくわからないが声や口ぶりから年配の女性のようだ。
尖った鼻とギョロッとした大きな目。
背中からは蜻蛉かげろうのような透明な羽がはえている。
小さな身体で器用に鍋のなかを木の杓子でかき混ぜながらそう言った。
レオンもここに来た時にルコルの絞り汁で眠らされた。
起きたときの頭痛は記憶に新しい。
こういう研究もするのか。
レオンのような被害者がこれからも出るのかと思うと少し気持ちが曇った。

薬学の部屋を出てさらに階段を登るレオンたち。
7階は何体もの魔物の頭の剥製はくせいが壁からニュッと出た気味の悪い部屋だった。
ポポルも先程までの元気がなく、尻尾を丸くお尻の下に引っ込めている。
緊張とも不安ともつかない表情で教室の中に進んだ。
「ここは魔物学の教室です」
薄暗い部屋には遮光カーテンがかけられ、完全に閉めれば真っ暗になりそうだ。
壁から飛び出すモンスターの頭も、前に行くほど巨大になっていく。
1つ目の巨人、サイクロプスの頭部。
固そうな鱗でおおわれたドラゴンの頭部。
巨大な鷲の頭があるがこれはグリフィンだろうか。
角の生えた人間(特大サイズ)のシャレコウベ。
クリスタルの骨格標本。
この部屋で何を勉強するのだろう?
レオンは魔物学をとっていたがここに来るのはちょっと気が引けた。
とらなきゃよかったかな?
レオンは心の中で呟いた。
「今は課外授業中みたいですね。さぁさぁ次に行きましょう!」
ポポルはさっさとここを出たいのだろう。
足早に部屋を出た。

8階は屋根裏のような部屋だった。
アラベラのレオンの部屋も屋根裏だったが、ここはレオンの部屋の拡大バージョン、といったところだろうか。
ただ、レオンの部屋と明らかに違うもの。
天井が星空になっている。
すべての窓には遮光カーテンがかけられ、真っ暗なのはこの星空を観察するためなのだろうか。
「ここは占星術の部屋。どんなに明るくても、雨が降っていても、この部屋の真上に見える星がこうして見えるように魔法がかかっています」
ポポルが説明してくれる。
ということはこれが今現在この上に広がる星空と言うことか。
レオンたちは美しい星空にうっとりと見入った。
「昔から人間は星の動きで吉凶を占ってきました。しかし雨が降るとそれが叶いません。そこでこのような魔法の部屋を作り、兵の動きにアドバイスを送るわけです。これもとても重要な役割です」
占いで兵の生き死にを占うのか?
何とも不思議な感覚だが、目の前の星空にうっとりとしたレオンはそのまま部屋を出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...