【選択小説】枯男は生還したい。〜旧校舎の神隠し〜

ルナ

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2day 5月2日 日曜日

間抜け

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「ヤバいヤバいヤバいどうしよう…」

 すっかり忘れていた。一週間ほど前だろうか。姉の誕生日があった。松谷家では家族の誕生日は必ず全員で祝わなければいけない、という絶対的な戒め(もはや呪い)がある。
 そして姉の誕生日当日、俺は突如入った飼い猫探しの依頼で、その日を丸一日潰してしまったのだ。なので俺は「今度のゴールデンウィークのどこか一日、姉と遊び倒す日を設ける」という契約を交わしてしまった。その事をすっかり忘れていた。

「しかし旧校舎が…でも約束は約束だし…ぐぬぬ…」

 ゴールデンウィークは今日を含めずあと残り三日間。姉に丸一日献上した場合、旧校舎の謎を二日間の内に解かなければならない。
 できるか?あとたった二日で。

「無理だろ~…」

 自室のベッドにダイブしながら間抜けが間抜けな声をあげる。

コンコン

 部屋の扉をノックする音がした。扉を開けて部屋に入って来たのは姉だ。

「やっほ、誠司」
「んー…どうした姉貴」

 さっきまで約束をすっかり忘れていた気まずさもあり、俺は姉と顔を合わせる事無く返事をした。枕に顔を埋めながら言ったため、かなり曇った声になってしまった。
 ベッドがギジリと音をたて、俺の太もも辺りのマットレスが凹んだ。姉がソコに座ったという事は、視界を閉ざしたままでも分かった。

「ゴールデンウィークの約束だけどさ…」

 ほい来た。この話題。
 姉に限って激怒する事は無いだろう。が、無茶苦茶な要求をするのは目に見えている。さすがに今回の捜査は後回しに…

「あれ、無かった事にして良いよ」
「…は?」

 突然な姉の提案。無かった事にして良いという事は、誕生日の日の埋め合わせをしなくても良いという事になる。

「誠司、今凄い楽しそうだもん。凄く良い顔してる。探偵ごっこ始めてから、久しぶりのやりがいのある依頼なんでしょ?ゴールデンウィーク中には解決したいって前言ってたし」
「…」

 確かに、それらしい事をポロッと言った気はする。当初の予定通りゴールデンウィークの五日間、全て捜査につぎ込めるのなら願ったり叶ったりだ。

「私の事はいいから、精一杯探偵ごっこ楽しんでおいで。それじゃ、おやすみ~…」
「…うん、おやすみ」

 それだけ言って、姉は自分の部屋に戻って行った。
 姉の許しは貰った。これで残りの三日間、全て使える。使えるのだが…。

「…ハァ…ったく、柄にもなく悲しげな顔しやがって」

 俺はポケットからスマホを取り出し、ある所に電話をかけた。この時間ならまだ残っているはずだ。

「…あ、もしもし。はい…松谷誠司です。はい、月神先生に代わって貰えますか?」

 俺が問い合せたのは月神高校の職員室。待つこと数分、遠くでガサガサと音が聞こえて来るだけのスピーカーに、ようやく人の声が入った。

「もしもし、どうしたんだ松谷誠司くん」
「月神先生…大変迷惑な事を承知で…お願いします」
「ん?」

 俺は一息ついて、声を張って言った。

「協力してください。俺はあと二日で旧校舎の謎を全て解きたいんです」
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