【選択小説】枯男は生還したい。〜旧校舎の神隠し〜

ルナ

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2day 5月2日 日曜日

【CASE3】②

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「いいえ、待ちきれません。今から会いましょう」
「なっ、いや、ちょっと待」

ブツンッ

 どこか慌てる月神を無視して、俺は間髪入れずに通話を切った。
 受話器越しに聞こえた騒音。そして月神が通話中に息切れしていたようにも聞こえた。何か胸騒ぎがする。書類仕事やパソコンであんな大きな音がする訳が無い。俺は家を飛び出し、月神高校へ急いで向かった。





☆●◇■△▼*▽▲□◆○★





「ここ…だろうな」

 着いて早々に目を疑った。そして確信した。月神はここにいると。
 月神高校二代目校舎。あるはずの無い旧校舎が目の前に建っていた。校舎に足を踏み入れた途端、今まで聞こえなかったはずの物音がどこかの教室から聞こえて来た。
 とても激しい物音だ。
 机や椅子が強く打ち付けられる音。
 窓ガラスが割れる音。
 古びた木の板がへし折れる音。
 尋常ではない音の数々に愕然としながらも、音の発生源である部屋を探す。音がかなり反響していてどこの教室なのか分かりにくい。

(通話中に聞こえた騒音はこれか…)

 ここが二代目校舎という事は恐らくヤツがいる。そして今まさに月神と対峙しているのだろう。急がないと月神が危ないかもしれない。

「ツクヨミに…殺される…!」





☆●◇■△▼*▽▲□◆○★





「ハァ…ハァ…」
「…」

 まずいな。非常にまずい。
 私の目の前に立ち塞がるは数ミリ程の大きさしかない欠片。こんな小さいはずなのに、末恐ろしいヤツだ。宙に浮くソレは現役の頃と変わらぬ程のオーラを身にまとっているように見える。
 それに対して私は酷く負傷してしまった。ヤツの攻撃によって身体中を打撲。かすり傷や切り傷もだいぶ増えた。特に酷いのは横腹の負傷だ。割れた窓ガラスで深めに切られてしまった。内蔵まで達する傷では無いものの、一番出血が酷い。
 私の勝利条件は、ヤツのための特注品である清めの札を貼り付ける事。それだけの事が未だにできずにいる。もしくはヤツの欠片を再起不能になるほど粉々にできれば良いのだが、近づく事が叶わぬため不可能だろう。

「…ー……ー」
「ふんっ…声すら出せないのか…哀れだな」

 あそこまで欠片が小さくなっていては会話もできないようだ。まだ形を成していた頃が懐かしい。今となってはもうハッキリとヤツの原型を思い出せない。
 ヤツの近くにある勉強机がカタカタと動き出し、宙に浮いた。次の攻撃で終わらせるつもりのようだ。

「ハァ…ハァ…すまない。私はここまでのようだ…。誠司くん…姉さー」

パリンッ

「先生!」
「っ!?…誠司くん!」

 廊下側の窓ガラスが勢いよく割られ、松谷誠司が教室に乗り込んで来た。その両手には、別の教室から持って来たであろう勉強机が握られていた。

「ぅ…あああああああああああああああ!!」

 ヤツは机の下敷きになり、粉々に砕け散った。これでもうヤツは再起不能だろう。さっきまで宙に浮いていた勉強机が落下したのがその証拠だ。

「先生…無事…ですか…?」
「あぁ…何とか」

 深夜の学校。
 暗い教室。
 息の上がった男子生徒と男性教員。
 傍から見たら変態チックな状況だろうが、私は今の状況をとても誇らしく感じていた。一人では進めなかった、その先に行けたのだから。
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