ダンボールの中身は捨て幼女でした

ルナ

文字の大きさ
31 / 47
日常の波乱

変化点

しおりを挟む
「社長、この間のプロジェクトのサプリが完成しました」
「おお、ようやくか」

 あれからあっという間に数年という月日が流れた。
 健康と言うよりは主に身体能力の向上を目的として作ったサプリメント。筋肉の元となる大量のタンパク質、亜鉛や、様々なビタミンを一気に取れる優れものだ。少し趣旨を変えての売り出し商品。

「ただ一つ問題なのは…」
「分かっている。治験…だろ?」
「はい…」

 治験の募集。これがなかなかに集まらない。もちろん協力者に金は出している。それでも未知の薬まがいな物を見に宿したいと声を上がる者は出なかった。動物で実験する手もあるが、可能ならば人間でテストがしたい。

「やはり社員の数名を…」
「いや、待て…」
「社長?」

 人は隠し事、嘘を見抜かれないようにすると、口を隠したくなるという心理が働く。今の俺がまさにソレだった。
 思いついてしまった。悪魔的閃き。
 いるじゃないか私には。ちょうどいい無料タダで使える実験体が。若くて、発展途上。薬の効果を見るのに打って付けなのが二つも。

 俺はさっそく自宅へ戻り、実験体の二人にサプリメントを服用させた。その後はいつも通りの生活を送らせた。俺はいつしか観察のためだけに家に帰るようになった。

「初日…何も無し」

 成果を

「二日目…特に何も無しか」

 早く

「七日目…変化無し」

 功績を

「十六日目…」

 未来を…

「二十九日目…」
「いい加減にしてよっ!!」

 観察の二十九日目。声を荒げたのは実験体では無く唯だった。

「…どうした」
「どうした!?こっちの台詞よ!家にいる時間が増えたと思ったら毎日毎日娘たちをジロジロ見て…見てるだけ!遠くから見てるだけ!」
「それが仕事だ」
「せっかく家にいるんだから少しは父親らしい事したらどうなの!?娘たちと遊ぶどころか、会話すらしないじゃないアナタ…。私…もう、何のためにアナタと…」

「それが仕事だ」

 この時の酷く歪んだ唯の顔。何故かずっと脳裏にこべり付いている。
 血眼で娘を追い続ける俺。今思えばどちらも異常だったのかもしれない。その日、洗面所の鏡を見て驚愕した。目に物凄いクマができていた。顔もどこかやつれていて、最初はこれが自分だと気づかなかったほど。
 そして薬の投与から一ヶ月。この日も特に何も無く、成果が無いようならもうこの観察は終わりにしよう。そう思っていた。
 その矢先、事件は起きた。

 三十日目

「ママ~!」
「ハイハイ、どうしたの?」
「パパまだお仕事ー?」
「…えぇ、そうね。ずっとお仕事…」
「つまんなーい」
「…そうね。ママも」
「ママ…?」

 唯は泣いていた。本人はそれに気づいていたのかは不明。実験体が流れ出すそれに触れる。

「ママもつまらない…もう」



「いっその事…この命を」



 これは俺が聞いた事ないほど大きな悲鳴を唯があげる数秒前の出来事だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...