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日常の波乱
変化点
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「社長、この間のプロジェクトのサプリが完成しました」
「おお、ようやくか」
あれからあっという間に数年という月日が流れた。
健康と言うよりは主に身体能力の向上を目的として作ったサプリメント。筋肉の元となる大量のタンパク質、亜鉛や、様々なビタミンを一気に取れる優れものだ。少し趣旨を変えての売り出し商品。
「ただ一つ問題なのは…」
「分かっている。治験…だろ?」
「はい…」
治験の募集。これがなかなかに集まらない。もちろん協力者に金は出している。それでも未知の薬まがいな物を見に宿したいと声を上がる者は出なかった。動物で実験する手もあるが、可能ならば人間でテストがしたい。
「やはり社員の数名を…」
「いや、待て…」
「社長?」
人は隠し事、嘘を見抜かれないようにすると、口を隠したくなるという心理が働く。今の俺がまさにソレだった。
思いついてしまった。悪魔的閃き。
いるじゃないか私には。ちょうどいい無料で使える実験体が。若くて、発展途上。薬の効果を見るのに打って付けなのが二つも。
俺はさっそく自宅へ戻り、実験体の二人にサプリメントを服用させた。その後はいつも通りの生活を送らせた。俺はいつしか観察のためだけに家に帰るようになった。
「初日…何も無し」
成果を
「二日目…特に何も無しか」
早く
「七日目…変化無し」
功績を
「十六日目…」
未来を…
「二十九日目…」
「いい加減にしてよっ!!」
観察の二十九日目。声を荒げたのは実験体では無く唯だった。
「…どうした」
「どうした!?こっちの台詞よ!家にいる時間が増えたと思ったら毎日毎日娘たちをジロジロ見て…見てるだけ!遠くから見てるだけ!」
「それが仕事だ」
「せっかく家にいるんだから少しは父親らしい事したらどうなの!?娘たちと遊ぶどころか、会話すらしないじゃないアナタ…。私…もう、何のためにアナタと…」
「それが仕事だ」
この時の酷く歪んだ唯の顔。何故かずっと脳裏にこべり付いている。
血眼で娘を追い続ける俺。今思えばどちらも異常だったのかもしれない。その日、洗面所の鏡を見て驚愕した。目に物凄いクマができていた。顔もどこかやつれていて、最初はこれが自分だと気づかなかったほど。
そして薬の投与から一ヶ月。この日も特に何も無く、成果が無いようならもうこの観察は終わりにしよう。そう思っていた。
その矢先、事件は起きた。
三十日目
「ママ~!」
「ハイハイ、どうしたの?」
「パパまだお仕事ー?」
「…えぇ、そうね。ずっとお仕事…」
「つまんなーい」
「…そうね。ママも」
「ママ…?」
唯は泣いていた。本人はそれに気づいていたのかは不明。実験体が流れ出すそれに触れる。
「ママもつまらない…もう」
「いっその事…この命を」
これは俺が聞いた事ないほど大きな悲鳴を唯があげる数秒前の出来事だ。
「おお、ようやくか」
あれからあっという間に数年という月日が流れた。
健康と言うよりは主に身体能力の向上を目的として作ったサプリメント。筋肉の元となる大量のタンパク質、亜鉛や、様々なビタミンを一気に取れる優れものだ。少し趣旨を変えての売り出し商品。
「ただ一つ問題なのは…」
「分かっている。治験…だろ?」
「はい…」
治験の募集。これがなかなかに集まらない。もちろん協力者に金は出している。それでも未知の薬まがいな物を見に宿したいと声を上がる者は出なかった。動物で実験する手もあるが、可能ならば人間でテストがしたい。
「やはり社員の数名を…」
「いや、待て…」
「社長?」
人は隠し事、嘘を見抜かれないようにすると、口を隠したくなるという心理が働く。今の俺がまさにソレだった。
思いついてしまった。悪魔的閃き。
いるじゃないか私には。ちょうどいい無料で使える実験体が。若くて、発展途上。薬の効果を見るのに打って付けなのが二つも。
俺はさっそく自宅へ戻り、実験体の二人にサプリメントを服用させた。その後はいつも通りの生活を送らせた。俺はいつしか観察のためだけに家に帰るようになった。
「初日…何も無し」
成果を
「二日目…特に何も無しか」
早く
「七日目…変化無し」
功績を
「十六日目…」
未来を…
「二十九日目…」
「いい加減にしてよっ!!」
観察の二十九日目。声を荒げたのは実験体では無く唯だった。
「…どうした」
「どうした!?こっちの台詞よ!家にいる時間が増えたと思ったら毎日毎日娘たちをジロジロ見て…見てるだけ!遠くから見てるだけ!」
「それが仕事だ」
「せっかく家にいるんだから少しは父親らしい事したらどうなの!?娘たちと遊ぶどころか、会話すらしないじゃないアナタ…。私…もう、何のためにアナタと…」
「それが仕事だ」
この時の酷く歪んだ唯の顔。何故かずっと脳裏にこべり付いている。
血眼で娘を追い続ける俺。今思えばどちらも異常だったのかもしれない。その日、洗面所の鏡を見て驚愕した。目に物凄いクマができていた。顔もどこかやつれていて、最初はこれが自分だと気づかなかったほど。
そして薬の投与から一ヶ月。この日も特に何も無く、成果が無いようならもうこの観察は終わりにしよう。そう思っていた。
その矢先、事件は起きた。
三十日目
「ママ~!」
「ハイハイ、どうしたの?」
「パパまだお仕事ー?」
「…えぇ、そうね。ずっとお仕事…」
「つまんなーい」
「…そうね。ママも」
「ママ…?」
唯は泣いていた。本人はそれに気づいていたのかは不明。実験体が流れ出すそれに触れる。
「ママもつまらない…もう」
「いっその事…この命を」
これは俺が聞いた事ないほど大きな悲鳴を唯があげる数秒前の出来事だ。
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