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身代わり
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「全然効果がないぞ!」
「仕方ない、最終手段だ!」
魔物達の大きな声が全体に響き渡るほど聞こえた。
何も聞かされていない俺は何をするのかと身体を痺れさせながら待ってみた。
あんなに念入りに作戦会議をしていたのに、やっぱり現実はそう上手くいかない。
俺からしたら上手くいかない方が喜ばしい事だ。
そのままこの戦いがいい方向に終わればいいな。
それにしてもこのローブ、どうやったら脱げるんだ?
フードも取れないから、顔を出す事すら出来ない。
砂埃で前が見えづらいが、しばらくすると痺れが引いてきた。
手を開いたり握ったりして身体がだんだん動くようになった。
幸い視界が見えづらいから、俺が移動しても分からない。
なるべく視界に映らないように慎重に一歩一歩進む。
それにしても変だな、さっきは騎士と魔物の怒鳴り声が響いていた。
きっと声で今いる場所を知らせているのだろう。
しかし、今は誰の声も聞こえない…まさか皆死んだんじゃないよな?
それは喜ばしい事なのに、なんだろう…心がざわざわする。
不穏な感じがするが、今は逃げ出す事に集中しよう。
歩いていると、なにか冷たいものが頬に触れた。
それを確認する前に、砂埃が一気に晴れて視界がクリアになった。
俺は動きを止めて、周りを見渡した。
そこにいたのは、魔物ではなく俺と同じ人間だった。
俺に向けられる無数の刃に、一気に血の気が引いた。
俺を囲んでいるのは騎士達で、魔物は何処にもいなかった。
倒されたのか?地面に倒れている魔物達を見てみる。
俺を連れてきた豚の頭の巨人がいないし、他にもいない魔物がいるような気がした。
そうか、最終手段と俺の重大な役割…俺を最初から身代わりにするつもりだったのか。
なんで使い物にならない俺を連れてきたのか、よく分かった。
「お前を見捨てて逃げたが、言いたい事はあるか?哀れな魔物」
「…仲間じゃない、最初から…俺は人間なんだから」
「戯言を口にする魔物だな」
俺の目の前にいる騎士団長は俺を見て、豪快に笑っていた。
でも、何だか違和感があるなと騎士団長を見つめた。
なんだろう、さっきと似ているのは格好だけで、他が違和感だらけだった。
騎士団長は仮面を外して、その素顔を見せた。
骸骨が見せた絵のその姿そっくりそのままの騎士団長の顔だった。
当たり前なのに、さっきの人はこの人ではないような気がする。
不思議な疑問が残ったまま、騎士達に押さえつけられた。
「城の地下牢に閉じ込めておけ、ゆっくり洗いざらい魔物の拠点を吐いてもらう」
「はい、団長!」
騎士は元気な声を出して、俺を縄でぐるぐる巻きにして引きずられた。
俺を最初から見捨てるために、洞窟の場所を分からないように気絶させたんだ。
俺が拷問されても、洞窟の事を話さないように…
どうであれ結果的にこれで魔物達から離れる事が出来たが、嬉しがる事が出来ない。
魔物だと思われて、殺されるかもしれない危険が発生した。
人間ってどう証明するんだ?人間に化けてると言われたら見た目ではどうする事も出来ない。
魔力がないアピールも、魔術を使ってないと言われればどうする事も出来ない。
これこそ悪魔の証明だな、俺には人間だと説明出来るものが何もない。
せめて、騎士の一人でもちゃんとした話が出来る人が居ればいいんだけど。
俺を睨みつけて、逃がさないように剣を向けている騎士達を見て無理そうだと落胆した。
何処に行っても、俺の居場所はない…ただ元の世界に帰りたかっただけなのに。
「お手柄ですね団長!さっきの戦いは惚れ惚れするほど美しかったです」
「……、当然だ!だが油断するな、魔物の根を絶やさなければ意味がない…私がいればそれも容易いがな!」
何やら、騎士達で盛り上がっているみたいだ。
豪快に笑う騎士団長を周りの騎士が褒めていた。
戦っている時はずっと無言だったのに、凄い変わりようだな。
ただ、自慢は全く出来ない事を覚えておいた方がいい。
なんせ俺は、重要な情報もないし戦力にもならないし、そもそも魔物ですらないから研究の役にも立たない。
それをさっきから必死に言っているが、いないもののように無視され続けている。
俺は馬車の荷物と一緒に収納箱に放り込まれた。
俺が入った事により、小さな収納箱が揺れて積まれていた荷物が落ちてきた。
ただでさえ狭いのに、さらに狭くなった気がする。
人が入るようには作られていないから、馬車が動く度に荷物にぶつかり痛みに耐えながら目的地に近付いていく。
「仕方ない、最終手段だ!」
魔物達の大きな声が全体に響き渡るほど聞こえた。
何も聞かされていない俺は何をするのかと身体を痺れさせながら待ってみた。
あんなに念入りに作戦会議をしていたのに、やっぱり現実はそう上手くいかない。
俺からしたら上手くいかない方が喜ばしい事だ。
そのままこの戦いがいい方向に終わればいいな。
それにしてもこのローブ、どうやったら脱げるんだ?
フードも取れないから、顔を出す事すら出来ない。
砂埃で前が見えづらいが、しばらくすると痺れが引いてきた。
手を開いたり握ったりして身体がだんだん動くようになった。
幸い視界が見えづらいから、俺が移動しても分からない。
なるべく視界に映らないように慎重に一歩一歩進む。
それにしても変だな、さっきは騎士と魔物の怒鳴り声が響いていた。
きっと声で今いる場所を知らせているのだろう。
しかし、今は誰の声も聞こえない…まさか皆死んだんじゃないよな?
それは喜ばしい事なのに、なんだろう…心がざわざわする。
不穏な感じがするが、今は逃げ出す事に集中しよう。
歩いていると、なにか冷たいものが頬に触れた。
それを確認する前に、砂埃が一気に晴れて視界がクリアになった。
俺は動きを止めて、周りを見渡した。
そこにいたのは、魔物ではなく俺と同じ人間だった。
俺に向けられる無数の刃に、一気に血の気が引いた。
俺を囲んでいるのは騎士達で、魔物は何処にもいなかった。
倒されたのか?地面に倒れている魔物達を見てみる。
俺を連れてきた豚の頭の巨人がいないし、他にもいない魔物がいるような気がした。
そうか、最終手段と俺の重大な役割…俺を最初から身代わりにするつもりだったのか。
なんで使い物にならない俺を連れてきたのか、よく分かった。
「お前を見捨てて逃げたが、言いたい事はあるか?哀れな魔物」
「…仲間じゃない、最初から…俺は人間なんだから」
「戯言を口にする魔物だな」
俺の目の前にいる騎士団長は俺を見て、豪快に笑っていた。
でも、何だか違和感があるなと騎士団長を見つめた。
なんだろう、さっきと似ているのは格好だけで、他が違和感だらけだった。
騎士団長は仮面を外して、その素顔を見せた。
骸骨が見せた絵のその姿そっくりそのままの騎士団長の顔だった。
当たり前なのに、さっきの人はこの人ではないような気がする。
不思議な疑問が残ったまま、騎士達に押さえつけられた。
「城の地下牢に閉じ込めておけ、ゆっくり洗いざらい魔物の拠点を吐いてもらう」
「はい、団長!」
騎士は元気な声を出して、俺を縄でぐるぐる巻きにして引きずられた。
俺を最初から見捨てるために、洞窟の場所を分からないように気絶させたんだ。
俺が拷問されても、洞窟の事を話さないように…
どうであれ結果的にこれで魔物達から離れる事が出来たが、嬉しがる事が出来ない。
魔物だと思われて、殺されるかもしれない危険が発生した。
人間ってどう証明するんだ?人間に化けてると言われたら見た目ではどうする事も出来ない。
魔力がないアピールも、魔術を使ってないと言われればどうする事も出来ない。
これこそ悪魔の証明だな、俺には人間だと説明出来るものが何もない。
せめて、騎士の一人でもちゃんとした話が出来る人が居ればいいんだけど。
俺を睨みつけて、逃がさないように剣を向けている騎士達を見て無理そうだと落胆した。
何処に行っても、俺の居場所はない…ただ元の世界に帰りたかっただけなのに。
「お手柄ですね団長!さっきの戦いは惚れ惚れするほど美しかったです」
「……、当然だ!だが油断するな、魔物の根を絶やさなければ意味がない…私がいればそれも容易いがな!」
何やら、騎士達で盛り上がっているみたいだ。
豪快に笑う騎士団長を周りの騎士が褒めていた。
戦っている時はずっと無言だったのに、凄い変わりようだな。
ただ、自慢は全く出来ない事を覚えておいた方がいい。
なんせ俺は、重要な情報もないし戦力にもならないし、そもそも魔物ですらないから研究の役にも立たない。
それをさっきから必死に言っているが、いないもののように無視され続けている。
俺は馬車の荷物と一緒に収納箱に放り込まれた。
俺が入った事により、小さな収納箱が揺れて積まれていた荷物が落ちてきた。
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