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1章 家族
side アルバート・アダマンタイト①
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私はアルバート・アダマンタイト。辺境伯であり、この国、ジュエル王国の宰相もしている。
我がアダマンタイト領は隣国のドラゴニア帝国と魔物の森に面しており、厳しい環境にある。だが、我が領の騎士達は宮廷騎士団よりもはるかに強いと言えよう。それゆえアダマンタイトなのだ。
幼少期から父からの厳しい指導に耐え、アダマンタイトに相応しい実力へと成長した頃には、私の銀髪に青い瞳と無表情で敵を倒すことから【氷鬼】と言われ、周りから浮いていた。
そんな私に幼なじみの2人だけは、いつも変わらず接してくれた。1人は現王様である、エイド・クラウン。金髪碧眼のイケメンで見た目は王様に相応しいのだが、中身は腹黒。地位のこともあるだろうが、ほとんどの令嬢はその見た目に騙され想いを寄せていた。当時、王子の遊び相手に私が選ばれた。何故私が、と疑問だったがエイド自身が「面白そうだったから」と選んだらしい。いい迷惑だ。
そしてもう1人はシャーロット・ガーネット。白金の髪にガーネットのような赤い瞳、とても美しい女性であり、私の最愛の妻だった。ガーネット辺境伯家の令嬢で、アダマンタイト領とは隣に位置していたため、訓練の合間によく遊んでいた。
まあ、私もエイドもシャーロットに惚れていたため奪い合いになったが、シャーロットと私が両想いだったためエイドが身を引いてくれた。…その前に色々と仕掛けてくれたのだが。
私とシャーロットは16歳の時に結婚し、その2年後の18歳の時にシノンが生まれ、それからすぐにシャーロットは亡くなってしまった。私がどうしても外せない仕事に行っている間に。私はそれからとてつもなく後悔し、シャーロットの忘れ形見であるシノンを守るため、自分自身を磨き、領地の騎士達を磨き、宰相になり国を磨き、万が一があっても私がいなくても良くなるように努力してきた。宰相になってからは【氷の宰相】とも呼ばれるようになった。
シノンとは年に1,2回程しか顔を合わせなかった。私はシノンに対して負い目があったのだと思う。妻を看取れず、亡くしてしまった。シノンにとってのたった1人の母をだ。まだ赤ん坊だったシノンは覚えているわけもないが、私がその時傍にいなかったことは誰かしらから伝わるだろう。その時、シノンも私を【氷鬼】として、【氷の宰相】として、私から距離を置くかもしれない。だが、そんな不安をさらに仕事に打ち込むことで忘れようとしていた。
だからいけなかったのだ。傍にいないのだからシノンの様子に気付ける訳もなく、王都で宰相の仕事をしていた時、シノンが高熱により倒れたという知らせが届いた。その瞬間、仕事をほっぽり出して私は飛び出した。王都から領地まで馬車で3日程かかるが身体強化を使い、3時間ほどでたどり着いた。それでもまだ遅いと思った程だ。
シノンの部屋へ飛び込むと、傍に医師とシノンの専属侍女のマリアが控えており、ベッドにシノンが横たわっているのが見えた。私はつかつかとシノンに近寄り顔色を伺う。娘は白い肌をピンクに染め、眉間にシワを寄せ、息苦しそうだった。傍に控えていたマリアから症状や現在の状態、峠は越えたことを伝えられ少し安堵の息を漏らす。だが、マリアから厳しい目で睨めつけられた。
「…アルバート様。私達を拾ってくださったことに感謝していますが、その優しさを少しでもシノン様に向けてあげてくださいませ。峠は越えましたが、もしかしたらシノン様は親からの愛を知らぬままに亡くなっていたかもしれません。」
私はその言葉にハッとさせられた。今までシノンのためにと仕事に打ち込んでいたことが、逆にシノンを不幸にしていたのだと。私はそれからシノンが目が覚めるまで傍を離れまいと心に決めた。
我がアダマンタイト領は隣国のドラゴニア帝国と魔物の森に面しており、厳しい環境にある。だが、我が領の騎士達は宮廷騎士団よりもはるかに強いと言えよう。それゆえアダマンタイトなのだ。
幼少期から父からの厳しい指導に耐え、アダマンタイトに相応しい実力へと成長した頃には、私の銀髪に青い瞳と無表情で敵を倒すことから【氷鬼】と言われ、周りから浮いていた。
そんな私に幼なじみの2人だけは、いつも変わらず接してくれた。1人は現王様である、エイド・クラウン。金髪碧眼のイケメンで見た目は王様に相応しいのだが、中身は腹黒。地位のこともあるだろうが、ほとんどの令嬢はその見た目に騙され想いを寄せていた。当時、王子の遊び相手に私が選ばれた。何故私が、と疑問だったがエイド自身が「面白そうだったから」と選んだらしい。いい迷惑だ。
そしてもう1人はシャーロット・ガーネット。白金の髪にガーネットのような赤い瞳、とても美しい女性であり、私の最愛の妻だった。ガーネット辺境伯家の令嬢で、アダマンタイト領とは隣に位置していたため、訓練の合間によく遊んでいた。
まあ、私もエイドもシャーロットに惚れていたため奪い合いになったが、シャーロットと私が両想いだったためエイドが身を引いてくれた。…その前に色々と仕掛けてくれたのだが。
私とシャーロットは16歳の時に結婚し、その2年後の18歳の時にシノンが生まれ、それからすぐにシャーロットは亡くなってしまった。私がどうしても外せない仕事に行っている間に。私はそれからとてつもなく後悔し、シャーロットの忘れ形見であるシノンを守るため、自分自身を磨き、領地の騎士達を磨き、宰相になり国を磨き、万が一があっても私がいなくても良くなるように努力してきた。宰相になってからは【氷の宰相】とも呼ばれるようになった。
シノンとは年に1,2回程しか顔を合わせなかった。私はシノンに対して負い目があったのだと思う。妻を看取れず、亡くしてしまった。シノンにとってのたった1人の母をだ。まだ赤ん坊だったシノンは覚えているわけもないが、私がその時傍にいなかったことは誰かしらから伝わるだろう。その時、シノンも私を【氷鬼】として、【氷の宰相】として、私から距離を置くかもしれない。だが、そんな不安をさらに仕事に打ち込むことで忘れようとしていた。
だからいけなかったのだ。傍にいないのだからシノンの様子に気付ける訳もなく、王都で宰相の仕事をしていた時、シノンが高熱により倒れたという知らせが届いた。その瞬間、仕事をほっぽり出して私は飛び出した。王都から領地まで馬車で3日程かかるが身体強化を使い、3時間ほどでたどり着いた。それでもまだ遅いと思った程だ。
シノンの部屋へ飛び込むと、傍に医師とシノンの専属侍女のマリアが控えており、ベッドにシノンが横たわっているのが見えた。私はつかつかとシノンに近寄り顔色を伺う。娘は白い肌をピンクに染め、眉間にシワを寄せ、息苦しそうだった。傍に控えていたマリアから症状や現在の状態、峠は越えたことを伝えられ少し安堵の息を漏らす。だが、マリアから厳しい目で睨めつけられた。
「…アルバート様。私達を拾ってくださったことに感謝していますが、その優しさを少しでもシノン様に向けてあげてくださいませ。峠は越えましたが、もしかしたらシノン様は親からの愛を知らぬままに亡くなっていたかもしれません。」
私はその言葉にハッとさせられた。今までシノンのためにと仕事に打ち込んでいたことが、逆にシノンを不幸にしていたのだと。私はそれからシノンが目が覚めるまで傍を離れまいと心に決めた。
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