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笑顔が怖いです
しおりを挟む「ノア先生、質問があるのですが…」
「何かな?」
「隣国との状況って今どうなっているんですか?」
そう聞いた瞬間、ノア先生の目が氷のように冷たく鋭くなったような気がした。身震いをし、思わず距離をとる。とは言っても、椅子に座っているため、座る位置を少し遠ざけることしかできずあまり意味をなしていない。
だがノア先生はすぐに、先程の氷のような視線を全く感じさせないお手本のような微笑みを向けてくるが、少し目が笑っていない気がするのは気のせいだろうか。しかも足を組み、膝に頬杖をついているためさらに怖い。
「…なんでアリーチェはそんなことに興味を持ったのかな?今、魔法の話をしていたはずだよね?」
そう言われれば確かに今その質問をするのはおかしいことに気付く。私の中では女神や聖女から乙女ゲームを連想したため、隣国との状況が気になったのだが普通の女の子ならそんなこと気にしないはずだ。
そこまで思い至り、表情には出さないように努めつつ、内心軽いパニック状態になりながらも必死に言い訳を考える。
「えっと…その、留学を」
「留学?まさかアリーチェが留学したいわけじゃないよね?」
すごく食い気味に言われてしまった。しかも先程よりも口は笑みを象っているのに目は全く笑っていないため、私の恐怖心をさらに煽る。隣国との状況を聞く為の嘘とはいえ、もしここで「私がしたいんです」とでも言おうもんなら何をされるか分からない。
「い、いいえ!!まさかそんな!!私なわけないじゃないですか、アハハハ…」
「そうだよねー、アリーチェはいい子だから隣国との状況を聞き出す為の嘘でもそんなこと言わないもんねー?」
バレてた。普通にバレてた。冷や汗が止まらない。また何か別の言い訳を考えなければと内心大パニックだ。表情に出ているかもしれないがそれを気にする余裕もなかった。
「まあ、アリーチェが隣国との状況を知りたい理由を言いたくないならいいよ。秘密にされると無理矢理にでも聞き出したくなるタイプなんだけど、我慢してあげる。」
今聞いてはいけないことを聞いてしまった気がするのだが、気にしたら負けだ。うん、気にしたら最期だ。最後ではなく最期だ、ある意味。こことても重要。
流れ的にお礼を言った方がいいかと思い、顔を引き攣らせながらもなるべく笑顔を心がける。
「あ、ありがとうございます…?」
「うん、どういたしまして。ただし…」
するとノア先生は頬杖を止め、その手を机に置く。そして人差し指で机をトン、トン、トン…と一定のリズムを刻み始めた。
「アリーチェがそれを何故僕に聞こうと思ったのか、教えてもらえるかな?これはお願いじゃないからね。」
そう、有無を言わさぬ笑顔で言い切った。
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