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詐欺です
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冷や汗が止まらない。
ノア先生の細長くて白い綺麗な指が机を叩き、一定のリズムを刻んでいるかと先程までは思っていたのだが、段々と速くなっている気がする。
彼の黒い笑顔を見るに、返答を間違えてもアウト。嘘をついてもアウト。つまり、本当のことを正直に話し、それが彼の望む返答でなければ何をされるか分からない。そう本能的に理解させられた。私は正直にありのままを話してそれが彼の望む返答であることに賭けることにした。
「…まだそのような授業をしてもらえる年齢だとは思ってませんし、ノア先生のような、成人されて家庭教師という素晴らしい仕事をできる程の大人の方でしたら隣国との関係には目を向けていると思ったので。」
早口だし目を逸らしながらだが、しっかりと言い切った。頑張った私。そう自分で自分を褒めていると、彼の刻んでいた音がピタリと止まった。
おそるおそる視線をノア先生の方へ向けると氷のような視線が私を射抜いた。思わず「ひっ」と息をのむ。彼の背後から黒いオーラが漂う幻覚が見える。慌ててまた目を逸らす。
「…アリーチェ。私は何歳に見える?」
「え、っと…その…22か23歳くらいに見えました。」
そう私が躊躇いつつ言った途端に視線はさらに冷たく、オーラはさらにどす黒くなった。彼の顔を見れてないのに分かる、怖い。
「ふーん…つまりアリーチェには僕がアレックスと同じくらいに見えると?」
「え、いや、父様は29歳ですので」
かなり違います、と紡ごうとしたが、ノア先生から手が伸びてきて私の顎を掴み、クイッと顔を上げさせられた。するといつの間にかノア先生の顔が15cm程の距離にあった。反射的に後ろへ下がろうとしたら顎を掴む力が強くなり、さらに視線を合わせるように顔を上へ上げさせられた。
「よく、見て?」
彼の肌はとても白く、陶磁器のよう。蜂蜜色の髪が風を受けて少しそよぎ、太陽の光に照らされてキラキラと星のように輝いている。そしてその髪と同じ色の長いまつ毛が、サファイアのような深い青色の切れ長の瞳を縁どっている。鼻は高くスッと通っており、その下にある唇は、厚さは薄く色は薄いピンク色をしており艶が出ている。そして今まで気づかなかったが、モノクルの奥にある目のそばに泣きぼくろを見つけた。色気倍増。見つけなければよかった。心臓がうるさい。
よく見たが、色気溢れる知的イケメンという私の中の評価は変わらない。心臓に悪いだけだ。
「見えます!!そんなに近くなくても見えますから…!!」
「んー?でもちゃんと見えてないから僕とアレックスが同じくらいの年だと勘違いするんだよね?」
「違うんですか…?」
「全っ然違う。僕はまだ15歳だし、一応学生なんだけど?」
「あぅうえ?!」
憮然として答えた彼の言葉に、思わず変な言葉が出てしまった。この国での成人は18歳、つまりまだ未成年ということだ。これだけの色気と大人びている容姿で15歳は詐欺だ。
私が口をぱくぱくさせていると、彼が軽く吹き出した。顎から手を離し、体も少し離れた。
「ククク…アハハ!!なんて顔をしてるの、まるで餌を求めて口を動かす小魚のようだよ?」
それが言い得て妙で、自覚のあった私は反論することが出来なかった。
ノア先生の細長くて白い綺麗な指が机を叩き、一定のリズムを刻んでいるかと先程までは思っていたのだが、段々と速くなっている気がする。
彼の黒い笑顔を見るに、返答を間違えてもアウト。嘘をついてもアウト。つまり、本当のことを正直に話し、それが彼の望む返答でなければ何をされるか分からない。そう本能的に理解させられた。私は正直にありのままを話してそれが彼の望む返答であることに賭けることにした。
「…まだそのような授業をしてもらえる年齢だとは思ってませんし、ノア先生のような、成人されて家庭教師という素晴らしい仕事をできる程の大人の方でしたら隣国との関係には目を向けていると思ったので。」
早口だし目を逸らしながらだが、しっかりと言い切った。頑張った私。そう自分で自分を褒めていると、彼の刻んでいた音がピタリと止まった。
おそるおそる視線をノア先生の方へ向けると氷のような視線が私を射抜いた。思わず「ひっ」と息をのむ。彼の背後から黒いオーラが漂う幻覚が見える。慌ててまた目を逸らす。
「…アリーチェ。私は何歳に見える?」
「え、っと…その…22か23歳くらいに見えました。」
そう私が躊躇いつつ言った途端に視線はさらに冷たく、オーラはさらにどす黒くなった。彼の顔を見れてないのに分かる、怖い。
「ふーん…つまりアリーチェには僕がアレックスと同じくらいに見えると?」
「え、いや、父様は29歳ですので」
かなり違います、と紡ごうとしたが、ノア先生から手が伸びてきて私の顎を掴み、クイッと顔を上げさせられた。するといつの間にかノア先生の顔が15cm程の距離にあった。反射的に後ろへ下がろうとしたら顎を掴む力が強くなり、さらに視線を合わせるように顔を上へ上げさせられた。
「よく、見て?」
彼の肌はとても白く、陶磁器のよう。蜂蜜色の髪が風を受けて少しそよぎ、太陽の光に照らされてキラキラと星のように輝いている。そしてその髪と同じ色の長いまつ毛が、サファイアのような深い青色の切れ長の瞳を縁どっている。鼻は高くスッと通っており、その下にある唇は、厚さは薄く色は薄いピンク色をしており艶が出ている。そして今まで気づかなかったが、モノクルの奥にある目のそばに泣きぼくろを見つけた。色気倍増。見つけなければよかった。心臓がうるさい。
よく見たが、色気溢れる知的イケメンという私の中の評価は変わらない。心臓に悪いだけだ。
「見えます!!そんなに近くなくても見えますから…!!」
「んー?でもちゃんと見えてないから僕とアレックスが同じくらいの年だと勘違いするんだよね?」
「違うんですか…?」
「全っ然違う。僕はまだ15歳だし、一応学生なんだけど?」
「あぅうえ?!」
憮然として答えた彼の言葉に、思わず変な言葉が出てしまった。この国での成人は18歳、つまりまだ未成年ということだ。これだけの色気と大人びている容姿で15歳は詐欺だ。
私が口をぱくぱくさせていると、彼が軽く吹き出した。顎から手を離し、体も少し離れた。
「ククク…アハハ!!なんて顔をしてるの、まるで餌を求めて口を動かす小魚のようだよ?」
それが言い得て妙で、自覚のあった私は反論することが出来なかった。
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