乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい

ゆの

文字の大きさ
11 / 24

この世界の国

しおりを挟む
数分経ってもまだクスクスと笑っているノア先生へジト目を向けると、ようやく彼は「ごめんごめん」と声に出して笑うのを止めた。まあ声に出さずともニヤニヤしているので少し釈然としないが気にしたら負けだ。そう思い、咳払いをして気を取り直す。

「…それで、見た目詐欺なのは十分に分かりましたが、学生ってどういうことですか?」
「どういうことって言われてもね…そのままの意味だけど?学生だよ?僕。」
「学生なら家庭教師をやっている暇もないと思うのですが…たしかノア先生の授業は週4日も入ってます。しかも3,4時間。」
「僕、全部の授業を免除されてるんだよね、簡単すぎて受ける必要がなくて。それに卒論も終わってるから、ほぼ名前だけって感じかな。あとは定期的にある学年試験と大会に出るのと、最終学年になった時に卒業試験を受けるだけ。」
「…じゃあ何で学園に行こうと思ったんですか?」
「まあ、学園の卒業生なら就職の幅が広がるっていうのもあるけど、同い年のレベルを知ることと学園にしかない貴重な書物を読むことが本来の目的かな。」
「…それでどうでしたか?実際に通ってみて。」
「まあ概ね予想通り?僕とそこそこいい勝負をするのが2,3人いるけど負けたことはないね。筆記試験でも大会でも。あーでも書物に関しては結構いい感じかも。禁書も隅から隅まで読み尽くしたし、素晴らしい本がいっぱいあったよ。」
「なるほど…では尚更、そんなに優秀なノア先生なら隣国との状況くらい知ってますよね?学生だとしても。」

私の言葉に目を少し瞬かせた後、フッと笑った。その意味ありげな微笑みに臆しそうになるが、ここで退く訳にはいかない。

「…どうしてそんなに聞きたがるのかやっぱり気になるけど、まあいいよ。教えてあげる。」

彼の話はこうだった。


この世界は今大きく4つの国に分かれている。
私たちの住む《ブランシェット王国》。
その南に位置しておりブランシェット王国と同等の国土を持つ《スタインフェルド王国》。
東に位置し、ブランシェット王国の2倍程の国土を持つ《デルヴィーニュ帝国》。
ブランシェット王国、スタインフェルド王国、デルヴィーニュ帝国の三国と面しており、世界地図の中央に位置し、ブランシェット王国の4分の1程の国土を持つ《ルイス聖国》。
デルヴィーニュ帝国とブランシェット王国の間とデルヴィーニュ帝国とスタインフェルド王国の間には魔物の森フォレット・フォレストがあり、ルイス聖国が魔物の森に北と南で挟まれている形になる。そして国の外側はすべて魔物の森である。

そして今現在の各国の関係であるが、デルヴィーニュ帝国が非常に好戦的であるため、それに対抗する為にブランシェット王国とスタインフェルド王国は友好関係を築いている。
ルイス聖国は元は魔物の森だった。その昔にある女神によって浄化されて出来た国である。そのため、女神や聖女をとても崇めている国で、唯一全ての国と面しているが完全中立を貫いている。


最後にノア先生は、近年この状況から変化はなく、これからもそうだと考えられている。という風に締めくくっていたのだが、私は知っている。乙女ゲームの通りなら事態は動くことになるのだ。

聖女という名のヒロインによって。

------------------
5/23 20時頃に最後の方、ちょっとだけ変更しました。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。

iBuKi
恋愛
サフィリーン・ル・オルペウスである私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた既定路線。 クロード・レイ・インフェリア、大国インフェリア皇国の第一皇子といずれ婚約が結ばれること。 皇妃で将来の皇后でなんて、めっちゃくちゃ荷が重い。 こういう幼い頃に結ばれた物語にありがちなトラブル……ありそう。 私のこと気に入らないとか……ありそう? ところが、完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど―― 絆されていたのに。 ミイラ取りはミイラなの? 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。 ――魅了魔法ですか…。 国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね? いろいろ探ってましたけど、どうなったのでしょう。 ――考えることに、何だか疲れちゃったサフィリーン。 第一皇子とその方が相思相愛なら、魅了でも何でもいいんじゃないんですか? サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。 ✂---------------------------- 不定期更新です。 他サイトさまでも投稿しています。 10/09 あらすじを書き直し、付け足し?しました。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

処理中です...