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【第26話:タイマーン当日】

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ツバルとの対決当日。一日の授業が終わった後、俺は会場へと向かった。

 対決の会場にできる場所は何ヶ所かあり、対決を受ける側が自由に選べることになっている。

 講義棟の地下演舞場や、だだっ広い草原、森の中などなど。
 色んな場所があるので、自分の得意な戦い方を活かせる場所を選ぶのが通例なのだが……
 どの魔法も弱っちい俺にとっては、正直言ってどこでも同じなので、目についた会場を適当に選んだ。

 それが校舎裏に広がるだだっ広い草原だ。
 だけど会場に着いて後悔した。

「うわ、なにこれ」

 既に多くの観客が集まっていたのだ。
 この草原会場は見通しがいいし、広くゆったり見れるし、どうやら一番観客が集まりやすい会場なのだそうだ。

 こんな多くの人に、俺の無様な格好を晒さないといけないのか……

 やらかしちまったな俺。

 俺ごときの一対一魔法対決タイマーンに、こんな大勢の観客が集まるとは予想外だった。

 どうやらタイマーンが行われるのは久しぶりらしく、俺が知らない間に学院内で話題になっていたようだ。
 しかもツバルは領主様の息子。対する相手は平民。
 大貴族対平民というわかりやすい構図も、皆の興味を掻き立てたみたいだ。

 つまり、この対決はそれなりに注目を浴びているということだ。

 ……どうしよう。緊張してきたぞ。

 会場の中心部には既にツバルが来てて、不機嫌そうな顔で待っている。俺は慌てて駆け寄った。

「フウマ、よく逃げずに来たな。褒めてやるよ」

 うわ、いかにも悪役っぽいセリフ。
 でも俺の方が弱いのは間違いないからなぁ。
 そう言いたくなるのもわかる。

 なんて考えていたら、背後からマリンの声が聞こえた。

「フー君頑張って! 応援してるわ」
「うん、ありがとう」

 わざわざ応援に駆けつけてくれたんだ。嬉しい。
 と思っていたら、今度は違う声が耳に届いた。

「あたしだって応援してるんだからな」
「お、おう。わかってるさ、ありがとう」

 ララティも応援に来てくれたのか。

 だけど女子二人に応援されて……ツバルに怖い目で睨まれた。
 こうやってツバルの嫉妬を買うのが、なんだかもうお決まりのようになっててごめんなさいとしか言えない。

「くそぅっ、ムカつくヤツめ!」
「まあまあツバル様には俺たちが付いていますから」
「そうですよ。我々が目一杯応援します。フウマなんて軽く倒しちゃいましょう」

 腰巾着の二人、ブゴリとノビーがそう言ったにも関わらず、ツバル「ケッ、男だけかよ」と吐き捨てて、二人には目もくれない。

 この二人、俺をバカにするからムカつくヤツらなんだけど、それでもかわいそうだ。もっと仲間を大事にした方がいいぞツバル。

「対戦相手は二人とも揃ってるようですね。ではそろそろ始めましょうか」

 どこから現れたのか。さっきまでいなかった、痩せた中年男性が突然姿を見せた。ブラック先生だ。

「あれっ? 立ち会い人はギュアンテ先生なのでは?」
「ああ。彼女は急な用事が入って、代わりにワタクシが立ち会い人はを務めることになりました」
「そう……なんですね」

 この人陰気だし、なんか掴みどころがないし、苦手なんだよなぁ。
 でもギュアンテ先生が忙しいなら仕方ないか。

 そして救護班として、フラワ先生も来てくれた。いつも白衣を着ている小柄で巨乳の、色っぽい先生だ。
 そしてそんな見た目からは信じられないくらい、治癒魔法のレベルが高い。
 死んでさえなければ、どんな大怪我でも大体はあっという間に治してしまうらしい。(真偽のほどは不明。)

 見た目も可愛いし、この先生に介抱してほしいがために、わざと怪我をする生徒までいるとのことである。

「それではこれより、ツバル・クバル君とフウマ君のタイマーンを始める。ルールは簡単。片方が『参った』と言うか、気絶したら負け。両者、準備はいいか?」

 向かい合った俺とツバルの間に立って、ブラック先生は俺たちの目を交互に見た。

「はい、大丈夫です」
「僕もオーケーだよ。さあフウマ。キミはいったい、何分立っていられるかな?」

 俺とツバルは30メートルほど距離を空けて、向かい合って立った。そして開始の合図を待つ。

 こういうチャラチャラした男に実力で劣るのは悔しいけど、それが現実だから仕方ない。
 だけどマリンやララティも応援に来てくれてる。
 最近は俺も少しは魔法が上達してる気がするし、あまりに情けない姿を晒すのだけは避けたい。

「よし始めっ」

 ブラック先生の開始の合図が聞こえた。
 まずは先手必勝だ。ツバルよりも先に、攻撃魔法を仕掛けよう。

 俺の魔法でも機先を制したら、少しくらいはダメージを与えることができる。同じ負けるにしても、最低でも10分間くらいはもたせたい。
 1分で終わっちゃう、なんて情けないことだけは避けたいんだよなぁ。

 しかし──結果、この勝負はたった1分で終わってしまったのである。
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