3 / 56
【3:見てました?】
しおりを挟む
巫女《みこ》さんは急におしとやかな態度になって、清楚な声で「見てました?」と聞いてきた。
はい、バッチリ見てました。あなたのドスの効いたセリフと荒々しい態度。
ひと目で理想的な女の子だと思ったのと大違いの、あなたの本性をしっかり見せてもらいました。
「いいえ、見てません」
心にもないことを言ってみたけど、あまりにもわざとらしかった。
巫女さんは鬼の形相になって「み、た、よ、ね~?」と低い声で訊いてきた。
「は、はい。見ました」
あちゃ、正直に言っちゃったよ。
なんでこんなに可愛い顔をしてるのに、こんなに攻撃的なんだよ?
「あの……それより、アイツをなんとかしなきゃ」
巫女さんからの攻撃をそらす意図もあるけど、貧乏神に住みつかれるのは嫌だから、陰気臭い男を指さした。
巫女さんは貧乏神を見て、それから俺を振り向いてひと言。
「無理」
あんたも、神様とおんなじかよーっ!
だったらその攻撃的な言動はなんだよ?
見かけだおしか?
偉そうに出てきてすぐにやられる、ザコキャラの典型かよ?
「あんまり強そうなヤツじゃないし、なんとかできるだろ?」
「そんな簡単に言わないで。こいつはこっちから仕掛けなければ何もしないけど、攻撃なんかしたら、取り憑かれるんよ。そしたら死ぬまで不運に見舞われる」
ええ~っ? そんなに怖いヤツなの?
じゃあ、余計になんとかしてもらわないと。
「じゃ、地鎮祭も無事に終わったし、お父様もそろそろ帰るみたいだから、失礼いたしますわね」
巫女は神主さんをチラ見すると、右手をシュタっと上げて、立ち去ろうとした。神主は巫女の父親らしい。
「無事になんか、終わってねぇ~! どうすんだよ、これ?」
俺が貧乏神を指差すと、巫女は唇をすぼめて
「何も見えませ~ん」って、すっとぼけやがった。
くそっ、このアマ! じゃなくて、この巫女《みこ》!
俺が陰キャのぼっちだと思って、舐めやがって。
あ、怒りで頭に血が昇ったら、急に顔が熱くなって、頭がぐらぐらしてきた。さっき飲んだ日本酒のせいだなこれは。
マズい。マジでぐるぐるして、わけわからん。気分も悪くて吐きそうだ。
足がふらついて、まっすぐ歩けない。
「どこ行くの、あんた。そっちに近づいちゃダメだって!」
うるせえ。何もできない巫女のくせに、偉そうに言うな。なーにが、近づいちゃダメだよ。
ふと前を見ると、陰気な貧乏神が三角座りのまま顔を上げて、俺を睨んでた。
「なあお前。俺の家に居座るな。出てけよ」
貧乏神は俺をギロっと睨んでる。
「あんたダメだって! ホントに取り憑かれるってば!」
巫女が後ろから俺の腕を引っ張る。
「おい離せ。離せよ!」
腕を振りほどこうと、俺は力を入れた。
目の前では貧乏神がゆらりと立ち上がって、俺に近づいてきた。
やばっ! 怒らせちまったかも?
逃げなきゃ。
「おい、離せ!」
「やだ、離さない。離せばあんたは貧乏神に殴りかかるんでしょ? そしたらあんたは取り憑かれてしまうから、絶対に離さない!」
「違うって!」
腕を離してくれないと逃げられない。
俺は腕を振りほどこうと、さらに力を入れて引っ張るけど、巫女は案外力が強くて外れない。
おいおい、どんどん貧乏神が近づいてくるよ。マジに超ヤバみ。
離したら取り憑かれる、じゃなくて……
「離してくれないと取り憑かれるんだよ~!」
「へっ?」
巫女は急に腕を離しやがった。
全力で引っ張ってた俺の腕は、勢いで貧乏神の方に拳が飛んで行く。
ありゃ、当たっちゃうよ。
──と思ったら、ぶぉん、みたいな音がして、急に貧乏神が消えた。
よかった。貧乏神は逃げて行ったみたいだ。取り憑かれずに済んだみたいだな。
巫女は呆然と立ち尽くしてた。
◆◇◆
翌日の月曜日は、我が阿部高校の一学期の始業式だった。
新たな一年が始まる。クラス分けの掲示を見て、俺は三年A組の教室に向かった。
誰と同じクラスか? なんて、ロクに見てない。どうせ俺には仲の良い友達なんていないんだから、誰と同じであってもたいして変わりはない。
だけど可愛い女子が多いといいな。まあ可愛い女子は大好きだ。
と言っても、一年間ほとんど話すこともなく過ごすんだけども。見るだけでも、可愛い子の方がいいよな。
教室に入り、自分の席を探して座る。今日は一学期の初日だから、出席番号順に机に名前が貼ってある所に座る。
近いうちに席替えがあるから、とりあえずの暫定席だ。
真ん中の列の真ん中辺り。教室のど真ん中。最悪だ。
俺みたいなぼっちは、最後列窓際が、一番誰とも関わらなくて最高の席なのに。
とりあえず席に座り、机に突っ伏して寝る。始業式が始まるまで、大人しくしとこう。
三年生にもなれば、新しいクラスでもお互いに顔見知りが多いから、俺みたいに友達がいないヤツに話しかけてくる者もいない。
「おっはよー、天心。またおんなじクラスでスね」
頭の上から、舌ったらずな女の声が聞こえた。顔を上げて見ると、やっぱり日和《ひより》だ。
はい、バッチリ見てました。あなたのドスの効いたセリフと荒々しい態度。
ひと目で理想的な女の子だと思ったのと大違いの、あなたの本性をしっかり見せてもらいました。
「いいえ、見てません」
心にもないことを言ってみたけど、あまりにもわざとらしかった。
巫女さんは鬼の形相になって「み、た、よ、ね~?」と低い声で訊いてきた。
「は、はい。見ました」
あちゃ、正直に言っちゃったよ。
なんでこんなに可愛い顔をしてるのに、こんなに攻撃的なんだよ?
「あの……それより、アイツをなんとかしなきゃ」
巫女さんからの攻撃をそらす意図もあるけど、貧乏神に住みつかれるのは嫌だから、陰気臭い男を指さした。
巫女さんは貧乏神を見て、それから俺を振り向いてひと言。
「無理」
あんたも、神様とおんなじかよーっ!
だったらその攻撃的な言動はなんだよ?
見かけだおしか?
偉そうに出てきてすぐにやられる、ザコキャラの典型かよ?
「あんまり強そうなヤツじゃないし、なんとかできるだろ?」
「そんな簡単に言わないで。こいつはこっちから仕掛けなければ何もしないけど、攻撃なんかしたら、取り憑かれるんよ。そしたら死ぬまで不運に見舞われる」
ええ~っ? そんなに怖いヤツなの?
じゃあ、余計になんとかしてもらわないと。
「じゃ、地鎮祭も無事に終わったし、お父様もそろそろ帰るみたいだから、失礼いたしますわね」
巫女は神主さんをチラ見すると、右手をシュタっと上げて、立ち去ろうとした。神主は巫女の父親らしい。
「無事になんか、終わってねぇ~! どうすんだよ、これ?」
俺が貧乏神を指差すと、巫女は唇をすぼめて
「何も見えませ~ん」って、すっとぼけやがった。
くそっ、このアマ! じゃなくて、この巫女《みこ》!
俺が陰キャのぼっちだと思って、舐めやがって。
あ、怒りで頭に血が昇ったら、急に顔が熱くなって、頭がぐらぐらしてきた。さっき飲んだ日本酒のせいだなこれは。
マズい。マジでぐるぐるして、わけわからん。気分も悪くて吐きそうだ。
足がふらついて、まっすぐ歩けない。
「どこ行くの、あんた。そっちに近づいちゃダメだって!」
うるせえ。何もできない巫女のくせに、偉そうに言うな。なーにが、近づいちゃダメだよ。
ふと前を見ると、陰気な貧乏神が三角座りのまま顔を上げて、俺を睨んでた。
「なあお前。俺の家に居座るな。出てけよ」
貧乏神は俺をギロっと睨んでる。
「あんたダメだって! ホントに取り憑かれるってば!」
巫女が後ろから俺の腕を引っ張る。
「おい離せ。離せよ!」
腕を振りほどこうと、俺は力を入れた。
目の前では貧乏神がゆらりと立ち上がって、俺に近づいてきた。
やばっ! 怒らせちまったかも?
逃げなきゃ。
「おい、離せ!」
「やだ、離さない。離せばあんたは貧乏神に殴りかかるんでしょ? そしたらあんたは取り憑かれてしまうから、絶対に離さない!」
「違うって!」
腕を離してくれないと逃げられない。
俺は腕を振りほどこうと、さらに力を入れて引っ張るけど、巫女は案外力が強くて外れない。
おいおい、どんどん貧乏神が近づいてくるよ。マジに超ヤバみ。
離したら取り憑かれる、じゃなくて……
「離してくれないと取り憑かれるんだよ~!」
「へっ?」
巫女は急に腕を離しやがった。
全力で引っ張ってた俺の腕は、勢いで貧乏神の方に拳が飛んで行く。
ありゃ、当たっちゃうよ。
──と思ったら、ぶぉん、みたいな音がして、急に貧乏神が消えた。
よかった。貧乏神は逃げて行ったみたいだ。取り憑かれずに済んだみたいだな。
巫女は呆然と立ち尽くしてた。
◆◇◆
翌日の月曜日は、我が阿部高校の一学期の始業式だった。
新たな一年が始まる。クラス分けの掲示を見て、俺は三年A組の教室に向かった。
誰と同じクラスか? なんて、ロクに見てない。どうせ俺には仲の良い友達なんていないんだから、誰と同じであってもたいして変わりはない。
だけど可愛い女子が多いといいな。まあ可愛い女子は大好きだ。
と言っても、一年間ほとんど話すこともなく過ごすんだけども。見るだけでも、可愛い子の方がいいよな。
教室に入り、自分の席を探して座る。今日は一学期の初日だから、出席番号順に机に名前が貼ってある所に座る。
近いうちに席替えがあるから、とりあえずの暫定席だ。
真ん中の列の真ん中辺り。教室のど真ん中。最悪だ。
俺みたいなぼっちは、最後列窓際が、一番誰とも関わらなくて最高の席なのに。
とりあえず席に座り、机に突っ伏して寝る。始業式が始まるまで、大人しくしとこう。
三年生にもなれば、新しいクラスでもお互いに顔見知りが多いから、俺みたいに友達がいないヤツに話しかけてくる者もいない。
「おっはよー、天心。またおんなじクラスでスね」
頭の上から、舌ったらずな女の声が聞こえた。顔を上げて見ると、やっぱり日和《ひより》だ。
0
あなたにおすすめの小説
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる