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【4:月影 日和】
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ぼっちだと言ったけど、唯一の例外で俺に話しかけてくるヤツがいる。幼なじみで家が隣の月影日和だ。 子供の頃から俺が住んでた家の隣に日和の家がある。つまり現在我が家が仮住まいしているアパートの隣が日和ん家。
一年前に我が家は父が買った古家に引っ越してしまったけど、家の建て替えのために仮住まいで、また昔の我が家で日和の隣に住むことになろうとは。よっぽど日和とは縁があるのかもしれない。
「またお前とおんなじクラスかよ。話しかけてくるな」
「あっ、ごめんなさァい」
別に日和は悪いヤツじゃないし、嫌いというわけでもない。いや、こんな俺にもきさくに話しかけてくれる、むしろいいヤツだ。だけど日和と仲良さげにしてると、俺を恨む男子がいるんだ。
日和はくりっとした目をしててかなり可愛いし、ちょっと抜けたところがあって、そこがまた天使みたいに可愛いと男子生徒に超人気がある。
たまたま隣の家だからってことだけで、俺みたいな陰キャが天使様と仲良くするなんて許せん。
そういう陰口を散々叩かれてきた。
時には面と向かって言うヤツすらいた。
まあ勉強できない、スポーツできない、まともに他人と話せない、三拍子揃った俺だからな。
美味くない、安くない、早くないって牛丼屋があったら嫌われるのと同じか。
──って、誰が牛丼屋だよっ!
いや、誰もそんなことは言ってない。俺が自虐してるだけだ。
心の中ならこんなにスラスラと台詞が出てくるんだけどなぁ。他人に話すとなると、めんど臭いし、なんか上手く話せない。
それでまた、他人からどう思われてるのかとか気にするのが面倒くさい。だからできるだけ他人と関わらないようにしてる。
まあこんな俺にわざわざ話しかけてくるのも日和以外いないから、周りと俺の利害が一致してるとも言えるな。
予鈴が鳴って、そろそろ始業式会場の体育館に行かなきゃなと、机から顔を上げると、たまたま横を通り過ぎようとする女子と目が合った。
艶々ロングの黒髪がとても綺麗で、目鼻立ちが整った、清楚で大人っぽい超絶美少女だ。
うおっ、こんな美人がウチの学校にいたんだ。同じクラスでラッキー。
そう思って美しい顔を眺めていたら、美少女は目を丸くして「柴崎……くん?」と呟いた。
誰だ? 今までこんな美人と同じクラスになったことはないぞ?
──と、よく見たら、昨日の巫女だった。
彼女、同級生だったんだ。
「お前は昨日の、超攻撃的ザコキャラの……ウグッ」
巫女はいきなり俺の口を手のひらで押さえて、耳元に顔を近づけてドスの効いた小声で囁いた。
「私は世間では、清楚でおしとやかな女で通ってるの。昨日見たことをバラしたら、あんたをぶっ殺す」
巫女はすぐに俺から離れて、「偶然ね。おはよう」と爽やかな笑顔を浮かべた。
怖ぇ~
背筋がぶるっと震える。
巫女はそのままスタスタと歩いて、教室を出て行った。
あ、俺も始業式に行かなきゃ。
慌てて教室を出て廊下を小走りしてると、すっと日和が近づいてきて、横から小声で話しかけてきた。
「天心君、さっきの誰?」
「ああ、巫女さんのことか?」
「ミコちゃんって言うのですね」
「いや、ミコちゃんじゃなくて、巫女さん。昨日地鎮祭で会ったんだ」
「じチンさい? 何それ? エッチなことですか?」
おいおい、甘ったるい口調で『チン』にアクセントを置くな。
「違うよ。家を建てる前にやる、神様の儀式だ」
日和の顔をチラ見すると、あたふたと顔を真っ赤にしてる。勘違いし過ぎだろ。相変わらず面白いやつだな。あはは。
「ふーん。じゃあいいデス」
「だから俺に話しかけてくるなって」
「はぁい」
日和はペロっと舌を出して、すっと俺から離れていった。
始業式が終わって、全員教室に戻ってきた。担任の小町清香先生が挨拶する。
「皆さん。高校生活最後の大事な一年、よろしくね」
小町先生は20代後半の、色っぽいというか妖艶な雰囲気の美女で、男子生徒に異様な人気を誇る、国語教師だ。
と言ってもあまりに大人っぽくて、誰も気軽には話しかけられない。グラビアアイドルを遠巻きに眺めてるっていう感じの人気だ。
俺は……美人は好きだけど、小町先生はやっぱり大人っぽ過ぎて苦手だな。
「じゃあ簡単でいいから、全員自己紹介してくださるかしら?」
小町先生の指示で、出席番号の順に自己紹介が始まった。
各自が自己紹介する間も、教室内はざわざわしてる。自己紹介してる生徒のことについて近くのヤツと話してる者、関係ない雑談をしてる者など様々。
まあ、あんまり一生懸命に聞かれるよりも、気軽に自己紹介できるので、その方がありがたし。
自分の順が来るまで寝とこう。そう思って、ざわざわした音をBGMに、机に突っ伏した。
「神凪《かんなぎ》さくらと申します」
急に教室内が静まり返った。
ん? と思って顔を上げたら、例の巫女さんだ。
「実家は神凪神社で、休みの日は巫女などもやっております」
あいつ、神凪っていうのか。
みんなの前で話す姿は、確かに清楚で知的な雰囲気だ。あんな攻撃的な言動をするやつだなんて、到底思えない。
すごい猫かぶりだな。
神凪が着席すると、また教室内がざわざわとしだした。
「あれが神凪さくらだよ。めっちゃかわゆいなー」
「俺、二年で同じクラスだったけど、緊張しちゃって一年間ほとんど喋れなかったよ」
なんだ? そんなに有名なヤツなのか?
しかも本性をうまく隠してるみたいだ。スゲーな。
みんなに本性をばらしてやろうか。
神凪を眺めてると、ふと彼女が振り返って目が合った。にっこり笑うが目は笑ってない。
うわ、おっかねぇ。
すみません。ばらしませんから。
俺は心の中で謝って、ぺこりと頭を下げた。
一年前に我が家は父が買った古家に引っ越してしまったけど、家の建て替えのために仮住まいで、また昔の我が家で日和の隣に住むことになろうとは。よっぽど日和とは縁があるのかもしれない。
「またお前とおんなじクラスかよ。話しかけてくるな」
「あっ、ごめんなさァい」
別に日和は悪いヤツじゃないし、嫌いというわけでもない。いや、こんな俺にもきさくに話しかけてくれる、むしろいいヤツだ。だけど日和と仲良さげにしてると、俺を恨む男子がいるんだ。
日和はくりっとした目をしててかなり可愛いし、ちょっと抜けたところがあって、そこがまた天使みたいに可愛いと男子生徒に超人気がある。
たまたま隣の家だからってことだけで、俺みたいな陰キャが天使様と仲良くするなんて許せん。
そういう陰口を散々叩かれてきた。
時には面と向かって言うヤツすらいた。
まあ勉強できない、スポーツできない、まともに他人と話せない、三拍子揃った俺だからな。
美味くない、安くない、早くないって牛丼屋があったら嫌われるのと同じか。
──って、誰が牛丼屋だよっ!
いや、誰もそんなことは言ってない。俺が自虐してるだけだ。
心の中ならこんなにスラスラと台詞が出てくるんだけどなぁ。他人に話すとなると、めんど臭いし、なんか上手く話せない。
それでまた、他人からどう思われてるのかとか気にするのが面倒くさい。だからできるだけ他人と関わらないようにしてる。
まあこんな俺にわざわざ話しかけてくるのも日和以外いないから、周りと俺の利害が一致してるとも言えるな。
予鈴が鳴って、そろそろ始業式会場の体育館に行かなきゃなと、机から顔を上げると、たまたま横を通り過ぎようとする女子と目が合った。
艶々ロングの黒髪がとても綺麗で、目鼻立ちが整った、清楚で大人っぽい超絶美少女だ。
うおっ、こんな美人がウチの学校にいたんだ。同じクラスでラッキー。
そう思って美しい顔を眺めていたら、美少女は目を丸くして「柴崎……くん?」と呟いた。
誰だ? 今までこんな美人と同じクラスになったことはないぞ?
──と、よく見たら、昨日の巫女だった。
彼女、同級生だったんだ。
「お前は昨日の、超攻撃的ザコキャラの……ウグッ」
巫女はいきなり俺の口を手のひらで押さえて、耳元に顔を近づけてドスの効いた小声で囁いた。
「私は世間では、清楚でおしとやかな女で通ってるの。昨日見たことをバラしたら、あんたをぶっ殺す」
巫女はすぐに俺から離れて、「偶然ね。おはよう」と爽やかな笑顔を浮かべた。
怖ぇ~
背筋がぶるっと震える。
巫女はそのままスタスタと歩いて、教室を出て行った。
あ、俺も始業式に行かなきゃ。
慌てて教室を出て廊下を小走りしてると、すっと日和が近づいてきて、横から小声で話しかけてきた。
「天心君、さっきの誰?」
「ああ、巫女さんのことか?」
「ミコちゃんって言うのですね」
「いや、ミコちゃんじゃなくて、巫女さん。昨日地鎮祭で会ったんだ」
「じチンさい? 何それ? エッチなことですか?」
おいおい、甘ったるい口調で『チン』にアクセントを置くな。
「違うよ。家を建てる前にやる、神様の儀式だ」
日和の顔をチラ見すると、あたふたと顔を真っ赤にしてる。勘違いし過ぎだろ。相変わらず面白いやつだな。あはは。
「ふーん。じゃあいいデス」
「だから俺に話しかけてくるなって」
「はぁい」
日和はペロっと舌を出して、すっと俺から離れていった。
始業式が終わって、全員教室に戻ってきた。担任の小町清香先生が挨拶する。
「皆さん。高校生活最後の大事な一年、よろしくね」
小町先生は20代後半の、色っぽいというか妖艶な雰囲気の美女で、男子生徒に異様な人気を誇る、国語教師だ。
と言ってもあまりに大人っぽくて、誰も気軽には話しかけられない。グラビアアイドルを遠巻きに眺めてるっていう感じの人気だ。
俺は……美人は好きだけど、小町先生はやっぱり大人っぽ過ぎて苦手だな。
「じゃあ簡単でいいから、全員自己紹介してくださるかしら?」
小町先生の指示で、出席番号の順に自己紹介が始まった。
各自が自己紹介する間も、教室内はざわざわしてる。自己紹介してる生徒のことについて近くのヤツと話してる者、関係ない雑談をしてる者など様々。
まあ、あんまり一生懸命に聞かれるよりも、気軽に自己紹介できるので、その方がありがたし。
自分の順が来るまで寝とこう。そう思って、ざわざわした音をBGMに、机に突っ伏した。
「神凪《かんなぎ》さくらと申します」
急に教室内が静まり返った。
ん? と思って顔を上げたら、例の巫女さんだ。
「実家は神凪神社で、休みの日は巫女などもやっております」
あいつ、神凪っていうのか。
みんなの前で話す姿は、確かに清楚で知的な雰囲気だ。あんな攻撃的な言動をするやつだなんて、到底思えない。
すごい猫かぶりだな。
神凪が着席すると、また教室内がざわざわとしだした。
「あれが神凪さくらだよ。めっちゃかわゆいなー」
「俺、二年で同じクラスだったけど、緊張しちゃって一年間ほとんど喋れなかったよ」
なんだ? そんなに有名なヤツなのか?
しかも本性をうまく隠してるみたいだ。スゲーな。
みんなに本性をばらしてやろうか。
神凪を眺めてると、ふと彼女が振り返って目が合った。にっこり笑うが目は笑ってない。
うわ、おっかねぇ。
すみません。ばらしませんから。
俺は心の中で謝って、ぺこりと頭を下げた。
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