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【6:神凪さくらは待ち構える】
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◆◇◆
翌朝登校すると、校門の横に神凪《かんなぎ》が立ってた。革製の学生鞄を両手で前に持ってる。
こいつは平成を飛び越えて、昭和の女子学生かよ?
高校生で、昔ながらの学生鞄持ってるヤツは今どきいねぇよな。映画でしか見たことない。まあ清楚さは演出バッチリだけど。
いかにも誰かと待ち合わせをしてるってふうだけど、彼氏か?
「柴崎君、おはようございます!」
神凪をチラ見して横を戻り過ぎようとしたら、いきなり笑いかけられた。
「えっ? ああ、おはよ」
そっか。優等生を演じてるんだから、顔見知りが通りがかったらきちんと挨拶するんだな。
関わり合いにならないうちに、早く行ってしまおう。
そう思って少し早足にしたら、神凪がついてきて、横に並んで歩きだした。
「はっ? 誰かを待ってたんじゃねぇの?」
「はい。柴崎君をお待ちしておりました。一緒に教室まで参りましょう」
神凪のにこりと爽やか笑顔。
なんだこいつ? なんで俺を待つんだ?
待てよ。もしかして……
俺が神凪の本性を暴露しないか、付きっきりで監視するつもりか?
「ねぇ、柴崎君」
並んで歩きながら、神凪は声をひそめた。
「な……なんだよ?」
「高柳君の肩に乗ってた邪神《じゃしん》は見た?」
「じゃしん? 何それ?」
「あれは見えてないのね」
「いや、見えてないってか、『じゃしん』て言葉がわからん」
神凪は歩きながら俺の顔をじっと見つめる。
「柴崎君、あなた……」
「な、なんだよ?」
「バカ?」
おーい、おいおい。美しいお顔で何をおっしゃるのかと思ったら。
そりゃ俺は成績最低ラインだけど、いくらなんでもその言い方は酷かないかい?
「もう、お前とは話さない」
俺は歩くスピードを速めた。
神凪もスピードを上げて、また横並びで歩く。
「あ、怒った? ごめん、バカなんて言い方悪かった」
なんだ。案外素直じゃないか。
「柴崎君って、アホ?」
「なんだそりゃっ!?」
「いや、関西人はバカって言われると怒るけど、アホって言われると親しみを感じるって言うから」
「どこから俺が関西人だって情報を仕入れたんだよ? 俺は関西人なんかじゃない」
「ごめん。私の思い込み」
何をどうしたら、俺が関西人だって思い込みが生まれるんだ? そんな話題、ひと言も出てないよな。
「そんなことより、高柳君に憑いてる邪神は見えたの? あ、邪神というのは、災いをもたらす神のこと」
そういう意味か。あれも神様の一種なのか?
「ああ、見えてるよ」
「柴崎君って……いったい何者なの?」
神凪は興味深げな顔見せるけど、俺は何者でもない。あえて言うなら、バカ者だ。
そうそう、バカ者──って、誰がバカ者だよっ!
いや、誰もそんなことは言ってない。俺がまた自虐してるだけだ。
「柴崎君。黙り込むってことは、何か大きな秘密があるのね?」
「えっ?」
俺は心の中で『一人ノリ突っ込み』をしてただけなのに、神凪はすっげー誤解をしてないか?
「なにもねぇよ。とにかく俺に関わるな」
美女が関わると、また俺が男子連中に恨まれるんだって!
そうこうしてるうちに教室に着いた。クラスメイトがいる教室内では、こんな話はできない。
俺たちは黙って教室に入っていって、それぞれの席に座った。
◆◇◆
私、神凪さくらは神社の家に生まれて、今まで様々な神や霊を見てきた。
子供の頃は誰にでも見えるもんだと思ってたけど、実は神主である父にもそれらは見えてないって気づくのに、そう時間はかからなかった。
生まれてこのかた、私と同じように神や霊が見える人を見たことがなかった。
だけどたまたま同じクラスになった、柴崎天心という男の子には、どうやらそれらが見えるようだ。
しかもさっき教室に入る寸前に、彼は『とにかく俺に関わるな』と言った。
彼の身辺で、いったい何が起きてるの?
自分に関わると、大きな災いに巻き込まれるぞと、私に警告をしてるように思う。
もしかしたら彼は、大きな霊力を持つ存在なのかもしれない。彼から目を離してはいけない。
私は巫女。神の使い。だからこの街に、もしも災いが降りかかるなら、それを防がなきゃいけない。
でも私には、災いに打ち勝つ霊力なんてない。柴崎君は地鎮祭の時に、一瞬で貧乏神を消し去った。彼はきっと、恐るべき霊力の持ち主だ。
私は巫女として、彼が霊力を最大限に発揮できるよう、手助けをする使命があるのかもしれない。
◇◆◇
「さあ、席替えの抽選をしますよー」
俺は、担任の小町先生がみんなにくじを引くように促すのを、祈る思いで眺めた。
できれば最後列の窓際を引きますように。
それと高柳、日和、神凪の近くにはなりませんように。
俺はそう祈ったけど今イチ不安だ。
だいたいからして、俺は運が悪い。
こういう風に何か願かけをすると、だいたい最悪の結果になる。
やっぱ最悪だ。
左に日和、右に神凪、前に高柳。
まあ最後列にはなったけど、俺がかけた願いがほぼ無視されてる。
「この世に神はいないのか?」
俺が思わず呟くと、左側の日和が「天心君って、面白いことを言いますねェ」とケラケラ笑う。
えっ? 今の台詞に笑うポイントがあったか? 長年の付き合いだけど、日和の笑いのツボが全然わからん。
ふと右を見ると、神凪が俺をじぃーっと眺めてた。
「なに?」
「いえ、別に」
神凪は慌てて顔をそむける。
そこまで監視しなくてよくない?
神凪とこんな近距離にいて、コイツの本性をバラすなんてことはできないんだから。
神凪ってもしかして、極度の心配性か?
翌朝登校すると、校門の横に神凪《かんなぎ》が立ってた。革製の学生鞄を両手で前に持ってる。
こいつは平成を飛び越えて、昭和の女子学生かよ?
高校生で、昔ながらの学生鞄持ってるヤツは今どきいねぇよな。映画でしか見たことない。まあ清楚さは演出バッチリだけど。
いかにも誰かと待ち合わせをしてるってふうだけど、彼氏か?
「柴崎君、おはようございます!」
神凪をチラ見して横を戻り過ぎようとしたら、いきなり笑いかけられた。
「えっ? ああ、おはよ」
そっか。優等生を演じてるんだから、顔見知りが通りがかったらきちんと挨拶するんだな。
関わり合いにならないうちに、早く行ってしまおう。
そう思って少し早足にしたら、神凪がついてきて、横に並んで歩きだした。
「はっ? 誰かを待ってたんじゃねぇの?」
「はい。柴崎君をお待ちしておりました。一緒に教室まで参りましょう」
神凪のにこりと爽やか笑顔。
なんだこいつ? なんで俺を待つんだ?
待てよ。もしかして……
俺が神凪の本性を暴露しないか、付きっきりで監視するつもりか?
「ねぇ、柴崎君」
並んで歩きながら、神凪は声をひそめた。
「な……なんだよ?」
「高柳君の肩に乗ってた邪神《じゃしん》は見た?」
「じゃしん? 何それ?」
「あれは見えてないのね」
「いや、見えてないってか、『じゃしん』て言葉がわからん」
神凪は歩きながら俺の顔をじっと見つめる。
「柴崎君、あなた……」
「な、なんだよ?」
「バカ?」
おーい、おいおい。美しいお顔で何をおっしゃるのかと思ったら。
そりゃ俺は成績最低ラインだけど、いくらなんでもその言い方は酷かないかい?
「もう、お前とは話さない」
俺は歩くスピードを速めた。
神凪もスピードを上げて、また横並びで歩く。
「あ、怒った? ごめん、バカなんて言い方悪かった」
なんだ。案外素直じゃないか。
「柴崎君って、アホ?」
「なんだそりゃっ!?」
「いや、関西人はバカって言われると怒るけど、アホって言われると親しみを感じるって言うから」
「どこから俺が関西人だって情報を仕入れたんだよ? 俺は関西人なんかじゃない」
「ごめん。私の思い込み」
何をどうしたら、俺が関西人だって思い込みが生まれるんだ? そんな話題、ひと言も出てないよな。
「そんなことより、高柳君に憑いてる邪神は見えたの? あ、邪神というのは、災いをもたらす神のこと」
そういう意味か。あれも神様の一種なのか?
「ああ、見えてるよ」
「柴崎君って……いったい何者なの?」
神凪は興味深げな顔見せるけど、俺は何者でもない。あえて言うなら、バカ者だ。
そうそう、バカ者──って、誰がバカ者だよっ!
いや、誰もそんなことは言ってない。俺がまた自虐してるだけだ。
「柴崎君。黙り込むってことは、何か大きな秘密があるのね?」
「えっ?」
俺は心の中で『一人ノリ突っ込み』をしてただけなのに、神凪はすっげー誤解をしてないか?
「なにもねぇよ。とにかく俺に関わるな」
美女が関わると、また俺が男子連中に恨まれるんだって!
そうこうしてるうちに教室に着いた。クラスメイトがいる教室内では、こんな話はできない。
俺たちは黙って教室に入っていって、それぞれの席に座った。
◆◇◆
私、神凪さくらは神社の家に生まれて、今まで様々な神や霊を見てきた。
子供の頃は誰にでも見えるもんだと思ってたけど、実は神主である父にもそれらは見えてないって気づくのに、そう時間はかからなかった。
生まれてこのかた、私と同じように神や霊が見える人を見たことがなかった。
だけどたまたま同じクラスになった、柴崎天心という男の子には、どうやらそれらが見えるようだ。
しかもさっき教室に入る寸前に、彼は『とにかく俺に関わるな』と言った。
彼の身辺で、いったい何が起きてるの?
自分に関わると、大きな災いに巻き込まれるぞと、私に警告をしてるように思う。
もしかしたら彼は、大きな霊力を持つ存在なのかもしれない。彼から目を離してはいけない。
私は巫女。神の使い。だからこの街に、もしも災いが降りかかるなら、それを防がなきゃいけない。
でも私には、災いに打ち勝つ霊力なんてない。柴崎君は地鎮祭の時に、一瞬で貧乏神を消し去った。彼はきっと、恐るべき霊力の持ち主だ。
私は巫女として、彼が霊力を最大限に発揮できるよう、手助けをする使命があるのかもしれない。
◇◆◇
「さあ、席替えの抽選をしますよー」
俺は、担任の小町先生がみんなにくじを引くように促すのを、祈る思いで眺めた。
できれば最後列の窓際を引きますように。
それと高柳、日和、神凪の近くにはなりませんように。
俺はそう祈ったけど今イチ不安だ。
だいたいからして、俺は運が悪い。
こういう風に何か願かけをすると、だいたい最悪の結果になる。
やっぱ最悪だ。
左に日和、右に神凪、前に高柳。
まあ最後列にはなったけど、俺がかけた願いがほぼ無視されてる。
「この世に神はいないのか?」
俺が思わず呟くと、左側の日和が「天心君って、面白いことを言いますねェ」とケラケラ笑う。
えっ? 今の台詞に笑うポイントがあったか? 長年の付き合いだけど、日和の笑いのツボが全然わからん。
ふと右を見ると、神凪が俺をじぃーっと眺めてた。
「なに?」
「いえ、別に」
神凪は慌てて顔をそむける。
そこまで監視しなくてよくない?
神凪とこんな近距離にいて、コイツの本性をバラすなんてことはできないんだから。
神凪ってもしかして、極度の心配性か?
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