同級生で美少女の巫女さんが、陰キャの俺に興味を持って追いかけてくるのは何故なのか?

波瀾 紡

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【7:さくらちゃんって彼氏いんの?】

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 席替えが終わって、前の席の高柳が時々振り返って、右を見て左を見る。俺の隣に座る日和ひより神凪かんなぎを順番に見比べて、にひひと笑ってまた前の教壇に向いた。

 高柳はその間、俺とは視線を合わせないようにしてやがる。

 美女の近くで、コイツ嬉しそうだな。でも相変わらず肩の上に、邪神とやらが乗っかってるのが気になる。

 邪神は周りに迷惑をかけたりしないんだろうか?



 休み時間になった途端、高柳は立ち上がって振り向いて、神凪に話しかけた。

「さくらちゃんって彼氏いんの?」

 ほぼ初対面の相手にいきなり聞けるなんて、こいつすげーな。

 無遠慮な質問に神凪は怒るかと思ったら、笑顔で静かに「いいえ」と答えた。あくまで清楚でいくつもりなんだな。

「そうなの? ラッキー!」

 高柳はガッツポーズしてるけど、お前にはワンチャンもないだろ。
 でも神凪はこれだけの美人なのに、彼氏がいないなんて意外だ。やっぱあの裏表の激しい性格が原因か?

「じゃあさくらちゃんは、どんな男性が好きなの?」
「強い人」

 思わず神凪の顔を見た。そこまで即答するか?

 神凪は相変わらず笑みをたたえてる。即答するってことは、それだけ好みがはっきりしってるってことか。

 『強い人』ねぇ。運動まるでダメな俺には縁のない話だな。もし縁があっても、こんな攻撃的な女はいらんけど。


「そうなの? じゃあ俺なんか良くない? 最近ボクシングを習い始めたんだ」

 高柳がボクシング!?

 こいつ調子乗りだから、ぜったいに気軽にパンチ出してくるぞ。やべー。できるだけこいつには、近づかないようにしよう。

 ──って、前後の席じゃ、どうしたらいいんだよ? 最悪だ。

「そうなのですね。凄いですね」

 神凪の言葉に、高柳は「えへへ」と気持ち悪い照れ顔を見せてる。

「じゃあ日和ちゃんは彼氏いる?」

 高柳は今度は日和に向けて訊いた。こいつ、神凪とは違った意味で超攻撃的だ。

「いえ、いませェん」
「よっしゃ!」

 高柳、ガッツポーズ再び。

「じゃあ好きな男性のタイプは?」

 日和とは長い付き合いだけど、そういえばそんなことは聞いたことはなかった。

「優しい人ですぅ」

 日和はそう言って、俺をチラ見する。

 俺はいつも日和を冷たくあしらってる。俺に対する批判かな? たまには少し、優しくしないといけないかな。

「俺、こう見えて、めっちゃ優しいんだよぉ」

 嘘つけ。高柳の自己アピが痛すぎる。

 高柳の肩の上の邪神がにやっと笑った。
 気持ち悪りぃ。

 神凪の顔を見たら、俺に向いてこくっと頷いてる。この邪神のことを、何か知ってるのか?

「さくらちゃーん。柴崎の顔なんて見たら、目が腐っちゃうよ~」

 高柳が横目で俺を見て、神凪ににへら笑いする。こいつは頭が腐ってるな。

「ちょっとトイレ」

 神凪が急に立ち上がる。

 痛てっ!
 立ち上がりざまに、俺の脛を蹴りやがった。
 顔を見たら、神凪はあごで表に出ろって仕草をしてる。

「あ、俺もトイレ」

 慌てて廊下に出た。
 前を歩く神凪はトイレの前を通り過ぎて、廊下の角を曲がって階段の踊り場にいた。

 俺が踊り場に着くと、神凪が待ってた。

「痛てぇよ」
「軽く蹴っただけじゃない」
「あれが軽くか? 骨が折れるかと思った」
「大げさだし」

 まあ確かに大げさに言ったのではあるが。

「で、何の用だよ?」
「見たでしょ、高柳君の肩の邪神」
「ああ」
「昨日より大きくなってた」

 そう言われれば、ひと回り大きくなってたような。

「高柳君の悪い心からエネルギーを吸ってると思うの」
「そうなのか?」
「たぶん」
「それなら、高柳なんて前から悪い心だらけだし、もっと大きくなってるさ。象くらい」
「そっか……」

 神凪はあごに手を当てて「うーん」と唸った。

「少し大きくなってるのは違う原因か、それとも……」
「ま、どっちにしても俺には関係ないから。じゃっ!」

 右手をシュタッと上げて立ち去ろうとしたら、その手首をがっちり掴《つか》まれた。

「待って。関係なくないでしょ。クラスに邪神がいるなんて良くない」
「良くなくても、俺には関係ないし」
「はぁ? 何言ってんの、あんた」

 神凪は眉間に皺を寄せて、威嚇するような声を出した。

「あれ? 天心てんしん君、何してるのですかぁ?」

 手首を掴まれたまま声の方を振り向くと、日和が立ってた。

「どうした?」
「なかなか帰ってこないから、様子を見に来ましたぁ。お手てつないで、何してるのかなぁ?」
「あ、いや、これは……」
「あら、ごめんなさい」

 神凪はパッと手を離して、日和に笑いかける。

「月影日和さん。柴崎君の彼女さん……かしら?」
「はぁっ? 陰キャの俺に彼女なんているわけない」
「そうかしら? 別に、そうは思わないけど」

『そうは思わない』って、どういう意味だ?

 神凪が清楚に、にこりと笑った。
 神凪の清楚な笑顔に、思わずドキっとする。本性がこれなら、いい女なのになぁ。

「あ、いや……こ、こいつは幼なじみなんだ」
「あら、そう」
「腐れ縁ってやつだ」
「腐れ縁って言葉、なんだか悲しいですゥ」

 あ、しまった。日和にたまには優しくしようと、さっき思ったばっかなのに。俺ってダメなやつだな。

「あ、ごめん。フツーに幼なじみだ」
「はい。それでいいですぅ」

 それでいいんだ? たいして優しい言葉じゃないけど大丈夫か?

「あらあら、微笑ましいこと」

 神凪は笑ってるけど、目が笑ってなくて俺を睨んでる。怖ぇ~
 何が不満なんだ? 神凪の本性をバラすようなことは言ってないよな?

「じゃあ柴崎君。また放課後に打ち合わせの続きをいたしましょう」

 神凪は笑顔のまま立ち去った。

「何を打ち合わせしてたのですかぁ?」
「いや、あの、地鎮祭の反省会をね」
「また、じチンさいですかぁ」

 だから、甘ったるい声で『チン』にアクセントを置くなって!

 でも今回は優しく、この指摘は心の中にとどめておいた。
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