同級生で美少女の巫女さんが、陰キャの俺に興味を持って追いかけてくるのは何故なのか?

波瀾 紡

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【14:きゅんとした】

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 天心君の体から出た光が、一瞬で大邪神を消し去った。
 こんな強い霊力は、今まで見たことがない。凄い。

 格式高い神社の高名な神主さんに会った時ですら、天心くんの何十分の一しか霊力を感じなかった。

 この霊力の強さと、何度も私を助けてくれた優しさ。

 ──思わずきゅん♡とした。


 大邪神の霊気が完全に消滅すると、急に身体が軽くなった。慌てて天心君に駆け寄る。

「天心君! 大丈夫?」
「目が痛くて、開けない」
「洗面所に行こう」

 天心君の手を引いて、洗面所に入る。
 洗面台まで誘導してあげると、天心君は水を出して顔を洗う。

 あ、そういえばここ──

 前にここで天心君に抱きついて、かっこいいとか変なことを言っちゃった。

 思い出したら顔が熱くなる。


「まだちょっと目が痛いけど、なんとか大丈夫そうだ」

 天心君が洗面台からびしょ濡れのままの顔を上げた。

 あっ、そうだ。

「これ」
「あ、ありがと」

 天心君は、私が渡したハンカチで顔を拭いてる。

「そういえば大邪神は?」
「大丈夫よ。消滅した」
「えっ? 神凪、お前やっぱスゲーな!」
「天心君のおかげよ、ありがとう」
「何が?」

 ん? 天心君はきょとん顔。

 ごまかしてるとかじゃなくて、ホントに自分の力に気づいてないみたい。

 天心君って、ホント何者?

「なんか顔に付いてるか? 投げつけられた土が、まだ付いてる?」
「え? いえ、大丈夫」

 思わず天心君に見とれてた。
 変に思われたかな?

「ところで天心君、なんでここに?」
「あ、いや。たまたま店の前を通りがかったら、神凪の悲鳴が聞こえたから」

 たまたま通りがかった? そんな偶然ないでしょ!

 天心君に疑いの眼差しをじっと向けてたら、照れるようにして白状した。

「なんか叶姉妹の誘いが不自然だったんで、気になって……」
「ゲーセンからずっと尾けてたの?」
「えっと……まぁな」
「ふーん」

 私のこと、心配してくれたのかな?
 またまた、きゅん♡とした。

「あ、あの……ストーカーみたいなことして悪かった。しかも神凪が襲われてたのを助けることもできないし。──ってか、お前強すぎだし、あっという間に大邪神を倒したし、心配することもなかったな」
「えっ? まあ私にかかれば、大邪神といえども、あんなもんよ。おほほほー」

 いや、天心君が来てくれなかったら、私は大変な目に合ってた。でも天心君は、ホントに自分の力に気づいてないんだ。なんでだろ?

「ところで、ストーカー行為のお詫びは、どうしてもらおうかな?」
「えっ? 一応神凪を心配しての行動なんだし、許してくれないのか?」

 天心君、あたふたして可愛い。
 そろそろ意地悪はやめてあげようか?

「じゃあまた私が危険な目に合いそうな時には、今日みたいに助けに来てくれること。それを約束してくれたら許す」
「まあいいけど……お前強いんだから、必要なくね?」
「世の中何が起こるかわからないから、お願いしとく」
「そうか。わかったよ。俺なんか、何の役にも立たないけど、それでも良ければ」

 天心君ありがとう。これからもよろしくお願いします。

 私は心の中で、彼にペコリと頭を下げた。

 でも天心君の霊力が超強力で、そのおかげで助けてもらったことは、もうしばらく内緒にしとこう。

 その方が面白そうだもん。


◆◇◆

 翌朝登校して、俺がいつものように机に突っ伏してたら、神凪の声が聞こえた。

「おはよう。昨日はありがとう」

 顔を上げると、神凪が椅子に座ろうとしていて目が合う。笑顔だ。

 ん? なんか神凪の雰囲気がいつもと違う。
 いつものような作った笑顔じゃなくて、割と自然な笑顔。

 いいことでもあったのか?

「あ、おはよ」

 俺が挨拶を返すと、神凪はにこっと笑って席に座った。やっぱり何かいいことがあったんだな。

「天心君、おはよ~」

 神凪の方を向いてた俺の後ろから、日和の声がする。

「ああ」
「え~? 私には、おはようって言ってくれないんですかぁ?」

 教室を見回すと、日和の声に気づいた何人かの男子が、こちらを見てる。ヤバい。

「ああ、おはよ。あんまり教室内で親しげにするな」

 小声で言うと、日和は「はぁい」と不満げな顔で席に着いた。


 ホント日和のヤツ。何度言ってもすぐに忘れるんだから。忘れんぼさんかよ。

 人気女子と親しげにすることで、男子から嫉妬の目を向けられる俺の身にもなってくれ。それだけじゃなくて、日和が変なやつだと周りに思われるのも嫌なんだよ。


 ふと見ると、神凪が叶姉妹を捕まえて文句を言ってる。のえるとさあらは平身低頭で謝ってる。

「ごめんね神凪。なぜかわからないけど、あの人に頼まれると断われなくなっちゃうんだ」
「断われなくなっちゃうんだ」

 あいつらきっと大邪神の霊力のせいで、操られてたんだろうな。

 神凪もそう思ったみたいで、「これからもよろしくね」と言って、二人を許した様子だ。


 まあ、あんな遊び人の男に近づくからいけないんだよ。『君子きみこ危うきに近寄らず』って言うじゃないか。

 ん? そういえば君子きみこって誰なんだ? 知らない人だけど、まあいいか。世の中は知らないことだらけだし。


 やっぱり俺みたいな、遊ばないにんの男が一番だな。うんうん。

 ──いや、俺は『遊びたくても遊べないにん』か。とほほ。




 昼休みになった。

 母さんが今朝から二日間旅行に行くとかで、今日は弁当がない。学食で食えとお金をもらってるし、行くとするか。

「あれ? 天心君お弁当は?」

 俺が立ち上がると、日和ひよりが遠慮がちに小声で訊いてきた。

「今日明日は学食だ」

 短く答えて、急いで教室を出る。早く行かなきゃ、すぐに席がいっぱいになるからなぁ。




 あちゃ、やっぱり。

 学食に着いて見回すと、ぼっち向けの大テーブルは既に満席。四人がけテーブルには所々空きがあるけど、グループで来てるヤツとの同席なんて嫌だ。

 どこかにぼっちが寄り集まってる席はないか?

 会話が無さそうな四人がけテーブルを探したけど、すぐには見当たらない。


「あれ? 柴崎君。一人?」

 すぐ横の四人がけテーブルに、同じクラスで見たことがある顔が三つ。クラスの中でも目立たない、地味男子三人組だ。

「あ、うん」
「じゃあ、ここに座りなよ」

 三人組の一人、でぶっちょの高木が空席を指してくれた。

「ああ、ありがとう」

 比較的早く買えるパンと自販機のコーヒーを買って、彼らのテーブルに戻った。

 改めて見回すと、でぶっちょの高木以外に、眼鏡で小柄な仲本と、ひょろっと背の高い筏田《いかた》の三人だ。

 三人とも地味で、オタクで、女の子にまったく縁のないタイプ。ここに俺が混じってても、何の違和感もないな。あはは。

「ちょうど良かった。柴崎君と話をしたかったんだ」

 突然高木がそう言った。コイツらとは何の接点もないのに、いったい何の話だ?
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