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【19:新築現場にヤツがいた】
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◆◇◆
翌日、約束どおり一時に建築現場に行くと、神凪はもう既に来てた。
私服は清楚な白いワンピース……とか勝手に想像してたけど、全然違う。
「あ……」
神凪の姿を見て、息を飲んだ。それ以上の言葉が出ない。
真っ赤なミニスカートから伸びた、細くて綺麗な太もも。英字のロゴが入った、体にフィットしたチビT。思ったよりも胸がある。そしていつもはストレートの黒髪は、ポニーテールにしてる。
女の子っぽくて、めちゃくちゃ可愛い。
思わず足から見てしまって、胸を見て、それから目が合ったから顔がボッと熱くなった。
「どう、この服? 買ったばっかりのを着てきた」
「あ、まあそこそこだな。馬子にも衣装ってやつか? てっきり巫女さんのカッコで来ると思った」
あまりにドキドキして、思ってもいない憎まれ口をつい口走った。
「はぁっ。せっかく頑張って、可愛いのを着てきたのに」
神凪は呆れたのか落ち込んだのか、大きなため息をついた。悪いことをしたかなぁ。
でも俺には、女子に向かって『可愛いね』なんて言う勇気はない。
「早く貧乏神がいないか、調べようぜ」
俺が話をそらしたら、神凪は、仕方ないなぁって顔をした。
「そうね」
建築現場は、基礎のコンクリートができあがってる。その上に細い鉄製の柱が何本も立ってて、二階の部分と屋根の形までできてる。
一階部分には何枚か壁のパネルが付いてて、建物の奥は死角で見えない。
「入ってみようか」
神凪はそう言って敷地に足を踏み入れ、コンクリートの基礎を跨《また》ぎながら、ずんずん奥に進んで行く。
「おい、大丈夫? もし貧乏神がいたらどうすんだ?」
邪神に襲われたりって経験してるのに、怖くないのか? なかなかの無鉄砲だ。
そう言えば地鎮祭の時には、神様をつかんだり投げたり、なかなかの傍若無人っぷりを見せてたな。
「ちょ、待てよ」
神凪が俺の声に応えずに進むもんだから、心配になって俺も中に入った。
地鎮祭の時に貧乏神がうずくまってたのは、敷地の左奥の隅。ちょうど壁のパネルで見通しが悪くて見えない。
前の方で神凪が、壁パネルの向こう側に回り込んだ。
「ああ~っ!」
姿が見えない神凪の声が響いた。
まずい!
やっぱり貧乏神がいるのか?
焦って早足で声の方に近づいて、壁パネルの向こう側を覗き込む。
そこには立ち尽くす神凪と、その目の前にいたのは──
なんと、地鎮祭の時に降臨して来てたロリ神様だ。
白っぽい和装のちびっこい幼い感じの女の子。地鎮祭で見たままの格好で立って、神凪と俺の姿を見て目を丸くしてる。
ロリ神様の横には、同じく白い和装のヒゲを生やした男がいる。見た目は40歳くらいか。ロリ神様のお父さんって感じ?
いや、鼻の下に左右に跳ね上がった髭と、あごに細長い髭。今どきこんな髭を生やしたヤツはいないし、お父さんって感じじゃないな。
「あんた、なんでまたここにいるの?」
神凪がロリ神様を睨みつけて、ドスの効いた声を出すと、ロリ神様はあたふたしながら答えた。
「いや、この前貧乏神を置いたまま天に帰っちゃったから、ちゃんとあいつを追い出すために戻って来たのじゃ」
そうなのか?
頼りない神様だと思ったけど、案外責任感があるな。
「ふーん。ホントにアンタにできるの?」
神凪は腰に両手を当てて、偉そうに神様を見下してる。あんまり胸を張らないでくれ。ついつい目が行ってしまう。
「おーい、神凪。神様にそんなこと言っていいのか?」
神凪の横まで行って声をかけると、彼女は俺の顔を見た。
「いや、この神様。今まで私が見た神様の中で、一番頼りないし」
「そうなの?」
「そう。しかも、圧倒的に!」
「お前さん、仮にも神に向かって失礼極まりないヤツじゃのう!」
ロリ神様は眉を釣り上げて、「がるるるる」と唸り声を出して怒ってる。
神凪も恐ろしく鋭い目つきでロリ神様を睨んでる。
「待てよ、神凪。巫女さんのくせに、神様をそんな扱いしていいのか?」
神凪は俺の方に向いて、信じられない言葉を吐いた。
「天心君。こいつ、きっと神様じゃないよ」
「なんだって? じゃあ何者?」
「失礼なこと言うな! ワシは神じゃ!」
「こんなにヘタレな神様がいてたまるか。このヘタレ!」
久しぶりに攻撃的で口の悪い神凪を見た。綺麗な顔なのに、眉間にしわを寄せて、嫌味な顔でロリ神様(?)を睨んでる。
「ちょっと待ちなさい、お嬢さん。あなたは神の姿が見えて、しかも話までできるようだが、何者なのか?」
ロリ神様の横に立つ男が、横から口を挟んだ。
「私は神凪神社の巫女《みこ》よ」
「ほぉ、巫女さんか。でも巫女だからといって、誰もが私たちの姿を見れるというわけではない。ましてや話までできるなんて、よっぽど強い霊力の持ち主であるな」
この髭のオッサン、なんだか偉そうだな。
そうだよ。神凪は大邪神ですら倒すほどの霊力を持ってる、凄い巫女さんなんだぞ。
「あなたはこの神を語る、不届きなロリっ子の親玉?」
「親玉? まあそうと言えばそうだな。私はこの子の教育係だ」
「教育係?」
このオッサンは気品がある話し方だし、悪いヤツには見えない。教育係とか言ってるけど誰なんだ?
「そう。この子は神としてはまだ経験不足で、見習い神だ。まだたった100歳の小童《こわっぱ》なのだ」
100歳!? このロリが!?
そして見習い神?
驚きの連続パンチだ。このロリっ子は、一応は神様ってことか。神様って100歳でもまだまだ子供で見習いなのか?
「まだ一人前の神ではないのだから、本来は神事《しんじ》に呼ばれて降臨する立場ではない。だが現在天の国では色々事情があって、手が回らなくてこやつにここの地鎮祭に行かせたのだ」
「じゃあ、このロリっ子は、本物の神様ってこと?」
「まあそうじゃな。見習いではあるが。こやつの名は、豊姫美《とよきみ》という。そして私は荒菅神《あらすがのかみ》と申す」
「荒菅神《あらすがのかみ》様と言えば、この地域の荒神《こうじん》神社の主神様?」
「まあそうじゃな」
神凪は突然両手で頬を押さえて「ぎゃああああああ」という奇声を発した。
「神様、神様、神様。大変失礼をば、してしまいました。申し訳ございません!」
神凪は慌てて、男の神様に何度も頭を下げてる。
「こら、巫女。謝るなら、ワシにじゃろ?」
ロリ神様は胸の前で腕を組んで、偉そうな態度で見下すように言うけど、ちびっ子なんで全然威厳がないな。神凪も、ふふんって感じで鼻で笑ってる。
「いや、アンタには謝らない。所詮見習いでしょ? 一人前になったら、その時は敬《うやま》ってあげるわ」
うわ、神凪のヤツ、ロリ神様に喧嘩腰だ、よっぽど嫌いなのか、イライラしてるな。
「な~に~?」
顔を真っ赤にして怒ったロリ神様が、神凪につかみかかろうとする。やっべっ! 止めなきゃ。
翌日、約束どおり一時に建築現場に行くと、神凪はもう既に来てた。
私服は清楚な白いワンピース……とか勝手に想像してたけど、全然違う。
「あ……」
神凪の姿を見て、息を飲んだ。それ以上の言葉が出ない。
真っ赤なミニスカートから伸びた、細くて綺麗な太もも。英字のロゴが入った、体にフィットしたチビT。思ったよりも胸がある。そしていつもはストレートの黒髪は、ポニーテールにしてる。
女の子っぽくて、めちゃくちゃ可愛い。
思わず足から見てしまって、胸を見て、それから目が合ったから顔がボッと熱くなった。
「どう、この服? 買ったばっかりのを着てきた」
「あ、まあそこそこだな。馬子にも衣装ってやつか? てっきり巫女さんのカッコで来ると思った」
あまりにドキドキして、思ってもいない憎まれ口をつい口走った。
「はぁっ。せっかく頑張って、可愛いのを着てきたのに」
神凪は呆れたのか落ち込んだのか、大きなため息をついた。悪いことをしたかなぁ。
でも俺には、女子に向かって『可愛いね』なんて言う勇気はない。
「早く貧乏神がいないか、調べようぜ」
俺が話をそらしたら、神凪は、仕方ないなぁって顔をした。
「そうね」
建築現場は、基礎のコンクリートができあがってる。その上に細い鉄製の柱が何本も立ってて、二階の部分と屋根の形までできてる。
一階部分には何枚か壁のパネルが付いてて、建物の奥は死角で見えない。
「入ってみようか」
神凪はそう言って敷地に足を踏み入れ、コンクリートの基礎を跨《また》ぎながら、ずんずん奥に進んで行く。
「おい、大丈夫? もし貧乏神がいたらどうすんだ?」
邪神に襲われたりって経験してるのに、怖くないのか? なかなかの無鉄砲だ。
そう言えば地鎮祭の時には、神様をつかんだり投げたり、なかなかの傍若無人っぷりを見せてたな。
「ちょ、待てよ」
神凪が俺の声に応えずに進むもんだから、心配になって俺も中に入った。
地鎮祭の時に貧乏神がうずくまってたのは、敷地の左奥の隅。ちょうど壁のパネルで見通しが悪くて見えない。
前の方で神凪が、壁パネルの向こう側に回り込んだ。
「ああ~っ!」
姿が見えない神凪の声が響いた。
まずい!
やっぱり貧乏神がいるのか?
焦って早足で声の方に近づいて、壁パネルの向こう側を覗き込む。
そこには立ち尽くす神凪と、その目の前にいたのは──
なんと、地鎮祭の時に降臨して来てたロリ神様だ。
白っぽい和装のちびっこい幼い感じの女の子。地鎮祭で見たままの格好で立って、神凪と俺の姿を見て目を丸くしてる。
ロリ神様の横には、同じく白い和装のヒゲを生やした男がいる。見た目は40歳くらいか。ロリ神様のお父さんって感じ?
いや、鼻の下に左右に跳ね上がった髭と、あごに細長い髭。今どきこんな髭を生やしたヤツはいないし、お父さんって感じじゃないな。
「あんた、なんでまたここにいるの?」
神凪がロリ神様を睨みつけて、ドスの効いた声を出すと、ロリ神様はあたふたしながら答えた。
「いや、この前貧乏神を置いたまま天に帰っちゃったから、ちゃんとあいつを追い出すために戻って来たのじゃ」
そうなのか?
頼りない神様だと思ったけど、案外責任感があるな。
「ふーん。ホントにアンタにできるの?」
神凪は腰に両手を当てて、偉そうに神様を見下してる。あんまり胸を張らないでくれ。ついつい目が行ってしまう。
「おーい、神凪。神様にそんなこと言っていいのか?」
神凪の横まで行って声をかけると、彼女は俺の顔を見た。
「いや、この神様。今まで私が見た神様の中で、一番頼りないし」
「そうなの?」
「そう。しかも、圧倒的に!」
「お前さん、仮にも神に向かって失礼極まりないヤツじゃのう!」
ロリ神様は眉を釣り上げて、「がるるるる」と唸り声を出して怒ってる。
神凪も恐ろしく鋭い目つきでロリ神様を睨んでる。
「待てよ、神凪。巫女さんのくせに、神様をそんな扱いしていいのか?」
神凪は俺の方に向いて、信じられない言葉を吐いた。
「天心君。こいつ、きっと神様じゃないよ」
「なんだって? じゃあ何者?」
「失礼なこと言うな! ワシは神じゃ!」
「こんなにヘタレな神様がいてたまるか。このヘタレ!」
久しぶりに攻撃的で口の悪い神凪を見た。綺麗な顔なのに、眉間にしわを寄せて、嫌味な顔でロリ神様(?)を睨んでる。
「ちょっと待ちなさい、お嬢さん。あなたは神の姿が見えて、しかも話までできるようだが、何者なのか?」
ロリ神様の横に立つ男が、横から口を挟んだ。
「私は神凪神社の巫女《みこ》よ」
「ほぉ、巫女さんか。でも巫女だからといって、誰もが私たちの姿を見れるというわけではない。ましてや話までできるなんて、よっぽど強い霊力の持ち主であるな」
この髭のオッサン、なんだか偉そうだな。
そうだよ。神凪は大邪神ですら倒すほどの霊力を持ってる、凄い巫女さんなんだぞ。
「あなたはこの神を語る、不届きなロリっ子の親玉?」
「親玉? まあそうと言えばそうだな。私はこの子の教育係だ」
「教育係?」
このオッサンは気品がある話し方だし、悪いヤツには見えない。教育係とか言ってるけど誰なんだ?
「そう。この子は神としてはまだ経験不足で、見習い神だ。まだたった100歳の小童《こわっぱ》なのだ」
100歳!? このロリが!?
そして見習い神?
驚きの連続パンチだ。このロリっ子は、一応は神様ってことか。神様って100歳でもまだまだ子供で見習いなのか?
「まだ一人前の神ではないのだから、本来は神事《しんじ》に呼ばれて降臨する立場ではない。だが現在天の国では色々事情があって、手が回らなくてこやつにここの地鎮祭に行かせたのだ」
「じゃあ、このロリっ子は、本物の神様ってこと?」
「まあそうじゃな。見習いではあるが。こやつの名は、豊姫美《とよきみ》という。そして私は荒菅神《あらすがのかみ》と申す」
「荒菅神《あらすがのかみ》様と言えば、この地域の荒神《こうじん》神社の主神様?」
「まあそうじゃな」
神凪は突然両手で頬を押さえて「ぎゃああああああ」という奇声を発した。
「神様、神様、神様。大変失礼をば、してしまいました。申し訳ございません!」
神凪は慌てて、男の神様に何度も頭を下げてる。
「こら、巫女。謝るなら、ワシにじゃろ?」
ロリ神様は胸の前で腕を組んで、偉そうな態度で見下すように言うけど、ちびっ子なんで全然威厳がないな。神凪も、ふふんって感じで鼻で笑ってる。
「いや、アンタには謝らない。所詮見習いでしょ? 一人前になったら、その時は敬《うやま》ってあげるわ」
うわ、神凪のヤツ、ロリ神様に喧嘩腰だ、よっぽど嫌いなのか、イライラしてるな。
「な~に~?」
顔を真っ赤にして怒ったロリ神様が、神凪につかみかかろうとする。やっべっ! 止めなきゃ。
応援ありがとうございます!
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