同級生で美少女の巫女さんが、陰キャの俺に興味を持って追いかけてくるのは何故なのか?

波瀾 紡

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【55:日和からのメッセージ】

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 突然日和がトイレに行ってしまったから、夜のショッピングモール屋上の公園で、俺とさくらが二人きりになってしまった。

 二人きりと言っても、周りはカップルだらけで、俺たちの左右のベンチにも肩を組んで頭を寄せ合うカップルが座ってる。

 ──凄く、めちゃくちゃ、はなはだ気まずい。

 さくらは何も言わずに、ただひたすら夜景をまっすぐに見てる。俺も何を言ったらいいのかわからなくて、しばらく黙ってた。

 こんな薄暗くてカップルだらけの場所で、さくらと二人っきり。心臓がドキドキして止まらない。

 でも何か言わなきゃ、気まずくて仕方ない。

「あ、あの……日和のトイレは、大かな? 小かな?」
「はぁっ?」

 さくらが眉をひそめて俺を睨んだ。何を聞くんだって顔をしてる。

 お、俺は何を言ってるんだ。そんなことを知りたいんじゃないのに。違う意味でさらに心臓の鼓動が高まる。うん、そう。失敗しちまったっていうことでのドキドキだ。

「あ、いやごめん。何を話したらいいのかわからなくて、ついワケのわからんことを言ってしまった」
「えっ? あ、ああそうなの?」

 さくらはちょっと苦笑いして、固い表情のまま、また前を向いて、夜景を眺める。そしてそのままじっと夜景を眺め続ける。

 また沈黙が流れる──
 気まずい。なにか言わなきゃ。

「ひ、日和は遅いな。早く戻ってきたらいいのに」
「そ、そうね」

 そしてまた沈黙が流れる。何を言ったらいいのかわからないから、すぐに会話が途切れてしまう。気まずさ満点だ。ホントにもう、どうしたらいいかのかわからん。

 その時、スマホがぶるぶると震えた。日和からメッセージだ。なんだろ?

『ちょっと用事を思い出したから、このまま先に帰るデス。ごゆっくり~』

「はぁっ!?」

 画面を見つめて、思わず声が出てしまった。さすがにこの声には、左右のカップルからいぶかしげな顔で睨まれた。

「す、すみません」

 両方のカップルにぺこりと頭を下げて詫びた。

「どうしたの?」
「いや、あの、日和が……」

 そこまで言った時にさくらのスマホからもブーブーと震える音が聞こえて、さくらがスマホをポケットから取り出した。

「ええっ!?」

 さくらも叫び声を上げた。またまた隣のカップル達がこちらを睨む。今度はさくらと俺と二人揃ってぺこぺこと頭を下げた。

 日和はさくらにも、おんなじメッセージを送ったのか?

 そう思ってさくらの手の中のスマホを覗き込んだ、さくらはパッとスマホを体の横に隠した。そして焦った表情で顔を上げて、俺の顔を見た。

「み、見た?」
「いや、見えなかった。俺のんとこにも来たけど、日和からのメッセージか?」
「あ、うん。そう」
「日和、戻ってこないみたいだな」
「そうだね……」

 さくらは苦笑いして、また顔を夜景の方に向けた。薄暗くてちょっとわかりにくいけど、かなり緊張してる感じ。

 そりゃそうだ。さくらには『見えなかった』って言ったけど、ホントは日和からさくらへのメッセージは、バッチリ見えてた。

 そこには俺へのメッセージと同じ、『このまま先に帰る』っていう文章の後ろに、こんなことが書いてあった。

『キスをすると天心君の秘めたる力が現れるってのはホントだよ。でもそれがどんな力なのかは、さくらちゃん自身で確かめてね~ ガンバレー!』

 ちょい待て日和。それってさくらに、俺とキスするように勧めてるってことだよな?

 そしてカップルに囲まれた薄暗くて夜景が綺麗な公園という、このシチュエーション。

 心臓がばっくばく鳴ってるのが聞こえてくるかと思うくらい、胸が苦しい。そして喉がからっからになってきた。

 俺はいったい、どうしたらいいんだっ!?

「あ、あの……さくら?」
「えっ!? な、なにかなっ?」

 さくらは急に素っ頓狂な声を上げて、俺の顔を見た。なにもそんなに驚かなくても……あ、さくらも凄く緊張してるのか?

 もしかして、日和からのメッセージのせいかも。ということは、キスという言葉に期待してるとか? いや、まさかな。

「や、夜景が綺麗だね」

 うわっ。なんてありふれたセリフだ。しかもなんかキザで、寒すぎる! まさか自分がそんなセリフを吐くなんて、思ってもみなかった。

 こんな臭いセリフを聞いて、さくらは鼻で笑うだろうな。

 そう思ってさくらをちらっと見たら、さくらはぎくしゃくした動きで俺の方に顔を向けて、すっごく固い表情で無理やりにっと笑顔を浮かべた。

「き、綺麗だね。夜景。すごく」

 さくらの日本語が、なぜか片言みたいになってる。かっちんこっちんに緊張してるさくらは、とっても可愛い。

 ぱっちりした目に夜景の明かりが反射して、瞳がきらきらと輝いてる。その瞳に、まるで吸い込まれそうになる。

 やばい、と思ってさくらの瞳から目をそらすと、今度はつやつやと光る唇が目に入った。

 唇。さくらの唇。──唇と言えばキス。

 あーっ、待て待て! やばいことを思い浮かべてしまった!
 一度頭にそんなことが浮かぶと、どんどん頭の中にそれが広がっていく。

 キス。キス。キッス。
 さくらとのキス。さくらの唇。

 ああ、もう頭がおかしくなりそうだ。のどが渇いて、ごくっと唾を飲み込んだ。

「て、天心君……」
「な、なに?」
「あのね。私ね。天心君と……キ、キ……」

 うわっ、まさかさくらの方からキスを求めてるとか!?
 さくらは唇を尖らせて、すごく言いにくそうにしてる。

 お、俺はさくらとキスを……さくらとキスを……

 めちゃくちゃ、さくらとキスをしたいっ!!

 急にそんな気持ちが心の中で膨らんでいった。
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