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17. 世界で一番尊い血
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重傷者エリアとした倉庫の中は、次々に運ばれてくる老若男女ですぐに八割方が埋まった。
扉や窓には生地屋から拝借した黒い布を貼り、中の様子が探られないようにした。
ブラッドリーは、信頼できる騎士数名と水の入った樽を運び、部屋の最奥に置いた盥に移していく。
木箱に入っていた赤い花を千切って水に浮かべ、混ぜて溶かす。
命の手綱を今にも手放そうとしている瀕死者には花自体を飲み込ませるのが最も有効だと分かってはいたが、意識の朦朧とした状態では固形物は嚥下しにくい。
ならば液体にしてしまって流し込んだ方が有効だ。
水溶性だとシェルエンから聞いていたが、確かに、溶けるのが早い。
ほんのりと染まった水をグラスで掬って、怪我人に飲ませていく。
口を半ばこじ開けてでも、それを体内へと入れた。
時間との勝負だ、躊躇ってなどいられない。
時には三人がかりで無理やり飲ませた。
苦労した甲斐は時間を置かずに現れた。
みるみるうちに、皮膚の外傷が消えていく。
ひどく損傷していた箇所も、内側から新しい組織が作られ何事もなかったように閉じていく。
残るのは、肌の上に乗る血や土だけ。
傷は跡形もなく消滅した。
この様子だと、身体の内部の損傷も癒されているだろう。
ほっと、誰かのため息が聞こえる。
「ジャックバートさん、ここはお願いします。俺は重傷者を運んできます」
「かしこまりました。お気をつけて」
ブラッドリーは外に出た。
惨憺たる有り様は変化なし、というよりもむしろ悪化していた。
木の焦げる匂い、目に沁みる風、咳の音、血に塗れた地面、泣き叫ぶ赤ん坊。
倒れていた老爺を背負って運ぶ傍らで、腹から血を流していた犬も拾って倉庫の片隅に寝かせた。
「石炭の山が崩れるぞ!」
「まずい、離れろ! 爆発する!」
怒号が聞こえた直後、轟音と共に少し遠くの建物が吹き飛んだ。
逃げ惑う人々の上に、瓦礫が降ってくる。
悪夢の手はさらなる広がりを見せる。
「ナーファ! 消火活動は停滞してるのか?」
「不運にも今日は夜風が強い。しかも小ファーセスは家屋が密集しているせいで、壊しても壊しても火の粉が飛んで燃え移っちまう!」
「一旦軽傷者の治療は後回しにしろ。人員を割いて消火最優先だ!」
「御意! 湖上庭園で警備してた第三の奴らも、もうすぐ到着予定だ。踏ん張れ!」
黒と碧の騎士服が連なって前方へと向かって行く。
それと入れ替わりに、先ほどの爆発で負傷した人々が運ばれてきた。
ブラッドリーも燃え盛る炎の根元まで行き、気絶した身体を背負って何十往復も往来した。
髪は汚れ、頬も汚れ、服も手足も汚れて、筋肉が限界を訴えようとも無視して歩んだ。
すっかり底をついた体力を気力だけで補いながら、またひとり担ぎ上げる。
ふと、火の唸り声の中で、石畳が脈打つほどの地鳴りが遠くから聞こえ始めた。
それは徐々に徐々にこちらへと近づいてくる。
『碧い夕凪』の集団だった。
先頭を走っていた者がブラッドリーに深い一礼をして擦れ違っていく。
清らかな風が通り抜けた気がした。
「ブラッドリー様!」
そう思ったのも束の間、倉庫の入口からジャックバートが顔を出していた。
緊急事態か。
この状況ではそれは即ち人の死を意味する。
「どうしました?」
「花を溶かした水がもうすぐ枯渇しそうでございます。今ここにいる方々の分しか確保できない見込みでございます」
盥を確認すると、底に薄く膜を張る程度しか残っていなかった。
重傷者は想像以上に多く、さらには先の爆発でその数が増えた。
しかし、火の手は未だ収まらない。
これからも運ばれてくるだろうし、重傷者以外にも赤い花を必要としている人は沢山いるのに。
救えない命が出てしまう。
死の番人が迎えにくるのを、何も出来ずに待たせることになってしまう。
「どうすれば……!」
万策尽きて行き止まりにぶち当たる。
そのとき、倉庫に入ってくる男がいた。
「ここは重傷者専用エリアですか? ……ブラッドリー! よかった、会えなかったらどうしようかとヒヤヒヤしました」
フットマンのデーヨだった。
その人物は、ここにいてはいけないはずだった。
「デーヨさん、殿下は? まさか馬車の中にひとりで置いてきたんですか?」
「主のご命令を受けて、こちらをお届けに参りました。馬車は第一騎士団の方々が警護してくださっているので、ご心配には及びません」
差し出されたのは大きめの木箱だ。
ジャックバートたちが持ってきたものよりも一回りほど幅が広い。
それは白い布で覆われていた。
知っている、その白さを。
いつも隣で寝る時にその人が着ているから、その生地の質感も肌触りも、いつの間にか憶えてしまった。
これは、まさか。
いや、きっとそうだ。
誰か、違うと言ってくれ。
「デーヨさん、これは……?」
「言付けも預かっています。『領主として尽力できることの最大限です。ひとりでも多くの人を救ってください。ブラッドリー、頼みます』」
言葉の終わりに布がそっと捲られた。
嗚呼……なんてことだ……。
ブラッドリーは膝から崩れ落ちて、地面に座り込んでしまいそうになった。
アクアブルーの瞳に映る、鮮やかな色。
そこには、満杯の赤い花が収められていた。
邸の在庫は使い切った。
ならばこれは、新しく咲かせた花だろう。
その身を切り割いて一体どれほどの血を流せば、こんなにも沢山の花となるだろうか。
それは覚悟であり、責任感であり、慈悲と勇敢さが作り出した結晶だ。
誰かを救うために己が犠牲になる。
そうまでして生み出した奇跡の行く末を、他人に任せてしまえる潔さ。
思わず目を閉じたブラッドリーの瞼に、シェルエンの優しい微笑みが浮かぶ。
込み上げる激しい感情に、拳を強く握るしか出来なかった。
「……殿下はご無事ですか」
「物理的に血を失っているので貧血の症状が見られますが、お元気にしていらっしゃいます。ご自身の傷の回復は速いので、負傷した場所ももうしばらくすれば塞がると思われます」
「お帰りにはならないと?」
「馬車の中で待機する、と断固として動かれません。ブラッドリーが全ての民衆を救って帰還するのを待つ、と仰られています」
思わず両手で顔を覆った。
こんな鼓舞の仕方があるだろうか。
それはともすれば、武骨な騎士団員よりも強烈な張り手でブラッドリーの頬を叩く。
ブラッドリー・ジェスフォードならばひとり残らず救えるだろう、と己以上に信じる強い気持ち。
それは、どんな激励よりも確かに背中を押す。
暗闇の中でブラッドリーは、ひとつ大きな息を吐く。
「頂きます。デーヨさん、殿下に伝言をお願いしてもいいですか?」
「はい。どんな内容でも」
「では、こう伝えてください。殿下の慈愛の助けを借りて、必ず全員を救います。どうか俺を信じて待っていてください、と」
「承りました」
デーヨを見送る。
木箱を受け取ったブラッドリーは、一瞬それを強く強くかき抱いて、そして前を向いた。
シェルエンを思い出すだけで、底をついていた体力が復活するような気がした。
∞∞∞∞∞∞∞
夜空の天辺にあった上弦の月が、西の空へと傾く頃。
「終わった……」
「ブラッドリー様、これ以上の怪我人は出ないだろうとのことです」
増員した消火隊と大工集団の必死の頑張りが実り、囂々と燃えていた炎は半刻ほど前にこれ以上の延焼の可能性はないというところまで弱められた。
運河から調達した大量の水を直接火の元にかけた住民の機転も奏功した。
破壊された建物は数えきれない。
燃えてしまった宝物や、大事にしていた生活そのものは取り戻せない。
けれど、誰ひとりその命を落とすことはなかった。
誰も死ななかった。
大切な人を失わなかった。
それだけで、その事実だけで、人はきっとまた生きていけるだろう。
再会を喜ぶ住民の隙間を縫ってブラッドリーは走った。
背中にナーファの呼び止める声が突き刺さったが、一切振り返らなかった。
最後の気力を振り絞って、走って走って、そして辿り着いた。
もうどれくらいの時間が経っているかも曖昧になるほどに、しばらくぶりに見た小道に停まっている馬車。
四隅に立っていた黒い騎士服に礼を言って離れさせる。
無言で扉を開けた。
その箱の中は、もう一輪もないというのに、どこからか芳しい香りがした。
「ブラッドリー、お帰りなさい」
右側に座っていたデーヨだけが言葉を紡いだ。
左に座る皇子、シェルエンは瞼を閉じて深い呼吸を繰り返している。
「殿下は寝てますか?」
「夜中に起きてここまで移動して、そして沢山の血を抜きましたから。とてもお疲れのようです。ついさっきまでブラッドリーを迎えるんだと起きていらっしゃったんですが、限界が来たようです」
馬車を揺らさないように、細心の注意を払いながらブラッドリーは馬車に乗った。
シェルエンのすぐ横に腰かける。
「僕は後片付けを手伝ってきますので、しばしここで休憩をしてください」
扉は閉じられて、密室となる。
ふたりだけの空間には、小さな寝息だけが響く。
頬にかかる銀白の髪。
触れてしまったら起きてしまうだろうか。
そう案じるのに、顔が見たいという気持ちが強すぎて自分の行動を制御できなかった。
髪を耳の後ろへと流すと現れる血色を失った頬。
顔全体から首の下まで、一様に真っ青だった。
早く邸に帰ってあたためなければ具合を悪くしてしまう、そうした考えが頭に浮かんだとき、目の前の人の睫毛が震えた。
「……んん」
そしてゆっくりと開いていく瞼。
紫シルバーの瞳はぼんやりと鈍く微睡んだあと、確かな意識を持ってアクアブルーの瞳に焦点を合わせた。
「……ブラッドリー?」
「戻りました、殿下」
「お帰りなさい。お疲れ様でした」
凭れていた身体を起こす手伝いをする。
背中に腕を回すと、真っ直ぐにしていられないのか、くたりと身体を預けられる。
胸の中に収めてしまえば、至近距離で見つめ合う。
顔色が本当に悪い。
馬車に差し込む街灯のオイルランプに照らされてもなお、真っ白だ。
「住民の皆さんは無事ですか?」
「はい。皆、無事です」
「救えなかった命は?」
「ありません」
シェルエンが満足そうに大きく頷いた。
そして、儚げに優しく微笑む。
「優秀です。さすが私の護衛騎士ですね」
「殿下が新しく届けてくださった花がなかったら成し得ませんでした。俺は零れていく命を前に絶望の真っただ中で、ただ茫然と立ち尽くしていたと思います」
「きっとそんなことはないでしょう? どんなに危機的状況に瀕しても、あなたは決して諦めない。護るべきものを前にして、突き進まないブラッドリー・ジェスフォードではありませんから」
「殿下が断言するんですね」
「ええ、私が疑う心を持たぬほどに、あなたはいつも真っ直ぐですから」
細い指先が、ブラッドリーの頬を撫でる。
様々な汚れで地肌の色も判別が難しくなっているはずだ。
その手を剥がそうとするけれど、頬から滑り降りて顎先を掴んだシェルエンは、確認するように護衛騎士の顔を左右に振った。
「切り傷か擦り傷がありますか? それとも身体のどこかを怪我していますか?」
こびりついた血を見たのだろう。
それはもう、いつ付着したかも分からないほどに乾ききっている。
「これは俺の血ではありません。運んだ誰かのものです。殿下、俺はいまあり得ないほどに汚れているので、少し距離を置いた方がいいです」
「頑張りましたね。持てる全てを尽くして、救いましたね」
指先は相も変わらず頬を撫でる。
色の違うひとつひとつを確かめるように。
そのひとつひとつを、褒め称えるように。
自分が一番自分を犠牲にしたというのに。
持てる全てで人々を救ったのは、命を懸けて人々を救ったのは、シェルエンだというのに。
ブラッドリーは、右頬に添わされていた手を掴んで、指先に口づけをした。
何の意味があるかは己にも分からない。
衝動的に、触れたいと思った。
束の間そうして唇を寄せていた指先の下に、なんとはなしに視線を移す。
そして驚愕に息を飲んだ。
シェルエンの寝間着の袖先は、真っ赤に染まっていた。
手首には拭いきれなかった血が線を描いている。
もう片方も確認した。
全く同じ状態だった。
よく見ると、胴の部分や足にも血痕は散らばっている。
皇子は赤い花を咲かせるために、両の手首を傷つけていた。
袖にこんなにも滲んでいるということは、想像以上の大量出血だったに違いない。
手首を凝視して動かないブラッドリーに、シェルエンは穏やかな声音でこう告げた。
「奇病のせいか、私は傷が治るのが人一倍早いんです。知っているでしょう? 悲惨な格好をしていますが、血は止まっていますし傷口もほぼ閉じています。心配することはありません」
「痛かったでしょう……」
「慣れていますから、大丈夫です」
「自分を傷つけることには慣れても、痛みには慣れないものです。苦痛の記憶は脳が忘れてしまいやすいと聞いたことがあります。それが一度きりならばさっさと手放せばいいですが、殿下は赤い花を咲かすために何度も身体を切る。その度に……その度にいつもいつも痛みに襲われるんですね」
深ければ深いほどに激痛だろう。
時間を掛けて訓練を積んだ騎士でさえもいざ実戦となれば、斬られる恐怖に動けなくなる者は意外と多い。
足を震わせてうずくまる者も、這いつくばって逃げ出す者もいる。
痛みと、それに伴う苦しみに、人間はどうしたってその身を竦ませる。
タイミングの計れない他者相手でもそうなのだ。
自らを大きく傷つけることには、更なる恐怖と躊躇いが生じるだろう。
けれどシェルエンは、両の手首を切り裂いた。
痛みの記憶がまだ新しいうちにもう片方に刃を突き立てるのは、どんなに怖かっただろう。
勇敢だ。
高潔だ。
真の英雄だ。
「大丈夫ですから、そんなに悲しそうな顔をしないでください。ブラッドリー……ブラッドリー?」
ブラッドリーは、掴んでいた手首にそっと唇を寄せた。
口づけを落として、白い肌に散る赤い血を舐め取っていく。
「っ、やめなさい、ブラッドリー! 汚いですから、やめなさい!」
制止など聞かない。
汚い? 何を言うんだ。
こんなにも綺麗なのに。
世界で一番綺麗な血だ。
世界で一番気高い血だ。
世界で一番尊い血だ。
民を救った、思いやりに溢れた血だ。
「殿下……殿下……」
「っ……」
ブラッドリーの手はシェルエンの指先を絡めて離さない。
袖口を捲って肘まで露出した肌に舌を這わす。
時折、軽く吸った。
どうしてそうしているのか、自分でも分からない。
どうしてそうしたいのか、今はまだ分からない。
生まれたばかりの衝動に抗えず、ただひたすらにその赤を追いかけていた。
白む空に消えかかる満天の星だけが、見ていた。
海沿いの暗闇で。
伝書鳩から外した手紙を開いたその人は、忌々しげにそれをぐしゃりと握りつぶした。
「おのれ……!」
右手の指輪だけが、冷ややかに輝いていた。
扉や窓には生地屋から拝借した黒い布を貼り、中の様子が探られないようにした。
ブラッドリーは、信頼できる騎士数名と水の入った樽を運び、部屋の最奥に置いた盥に移していく。
木箱に入っていた赤い花を千切って水に浮かべ、混ぜて溶かす。
命の手綱を今にも手放そうとしている瀕死者には花自体を飲み込ませるのが最も有効だと分かってはいたが、意識の朦朧とした状態では固形物は嚥下しにくい。
ならば液体にしてしまって流し込んだ方が有効だ。
水溶性だとシェルエンから聞いていたが、確かに、溶けるのが早い。
ほんのりと染まった水をグラスで掬って、怪我人に飲ませていく。
口を半ばこじ開けてでも、それを体内へと入れた。
時間との勝負だ、躊躇ってなどいられない。
時には三人がかりで無理やり飲ませた。
苦労した甲斐は時間を置かずに現れた。
みるみるうちに、皮膚の外傷が消えていく。
ひどく損傷していた箇所も、内側から新しい組織が作られ何事もなかったように閉じていく。
残るのは、肌の上に乗る血や土だけ。
傷は跡形もなく消滅した。
この様子だと、身体の内部の損傷も癒されているだろう。
ほっと、誰かのため息が聞こえる。
「ジャックバートさん、ここはお願いします。俺は重傷者を運んできます」
「かしこまりました。お気をつけて」
ブラッドリーは外に出た。
惨憺たる有り様は変化なし、というよりもむしろ悪化していた。
木の焦げる匂い、目に沁みる風、咳の音、血に塗れた地面、泣き叫ぶ赤ん坊。
倒れていた老爺を背負って運ぶ傍らで、腹から血を流していた犬も拾って倉庫の片隅に寝かせた。
「石炭の山が崩れるぞ!」
「まずい、離れろ! 爆発する!」
怒号が聞こえた直後、轟音と共に少し遠くの建物が吹き飛んだ。
逃げ惑う人々の上に、瓦礫が降ってくる。
悪夢の手はさらなる広がりを見せる。
「ナーファ! 消火活動は停滞してるのか?」
「不運にも今日は夜風が強い。しかも小ファーセスは家屋が密集しているせいで、壊しても壊しても火の粉が飛んで燃え移っちまう!」
「一旦軽傷者の治療は後回しにしろ。人員を割いて消火最優先だ!」
「御意! 湖上庭園で警備してた第三の奴らも、もうすぐ到着予定だ。踏ん張れ!」
黒と碧の騎士服が連なって前方へと向かって行く。
それと入れ替わりに、先ほどの爆発で負傷した人々が運ばれてきた。
ブラッドリーも燃え盛る炎の根元まで行き、気絶した身体を背負って何十往復も往来した。
髪は汚れ、頬も汚れ、服も手足も汚れて、筋肉が限界を訴えようとも無視して歩んだ。
すっかり底をついた体力を気力だけで補いながら、またひとり担ぎ上げる。
ふと、火の唸り声の中で、石畳が脈打つほどの地鳴りが遠くから聞こえ始めた。
それは徐々に徐々にこちらへと近づいてくる。
『碧い夕凪』の集団だった。
先頭を走っていた者がブラッドリーに深い一礼をして擦れ違っていく。
清らかな風が通り抜けた気がした。
「ブラッドリー様!」
そう思ったのも束の間、倉庫の入口からジャックバートが顔を出していた。
緊急事態か。
この状況ではそれは即ち人の死を意味する。
「どうしました?」
「花を溶かした水がもうすぐ枯渇しそうでございます。今ここにいる方々の分しか確保できない見込みでございます」
盥を確認すると、底に薄く膜を張る程度しか残っていなかった。
重傷者は想像以上に多く、さらには先の爆発でその数が増えた。
しかし、火の手は未だ収まらない。
これからも運ばれてくるだろうし、重傷者以外にも赤い花を必要としている人は沢山いるのに。
救えない命が出てしまう。
死の番人が迎えにくるのを、何も出来ずに待たせることになってしまう。
「どうすれば……!」
万策尽きて行き止まりにぶち当たる。
そのとき、倉庫に入ってくる男がいた。
「ここは重傷者専用エリアですか? ……ブラッドリー! よかった、会えなかったらどうしようかとヒヤヒヤしました」
フットマンのデーヨだった。
その人物は、ここにいてはいけないはずだった。
「デーヨさん、殿下は? まさか馬車の中にひとりで置いてきたんですか?」
「主のご命令を受けて、こちらをお届けに参りました。馬車は第一騎士団の方々が警護してくださっているので、ご心配には及びません」
差し出されたのは大きめの木箱だ。
ジャックバートたちが持ってきたものよりも一回りほど幅が広い。
それは白い布で覆われていた。
知っている、その白さを。
いつも隣で寝る時にその人が着ているから、その生地の質感も肌触りも、いつの間にか憶えてしまった。
これは、まさか。
いや、きっとそうだ。
誰か、違うと言ってくれ。
「デーヨさん、これは……?」
「言付けも預かっています。『領主として尽力できることの最大限です。ひとりでも多くの人を救ってください。ブラッドリー、頼みます』」
言葉の終わりに布がそっと捲られた。
嗚呼……なんてことだ……。
ブラッドリーは膝から崩れ落ちて、地面に座り込んでしまいそうになった。
アクアブルーの瞳に映る、鮮やかな色。
そこには、満杯の赤い花が収められていた。
邸の在庫は使い切った。
ならばこれは、新しく咲かせた花だろう。
その身を切り割いて一体どれほどの血を流せば、こんなにも沢山の花となるだろうか。
それは覚悟であり、責任感であり、慈悲と勇敢さが作り出した結晶だ。
誰かを救うために己が犠牲になる。
そうまでして生み出した奇跡の行く末を、他人に任せてしまえる潔さ。
思わず目を閉じたブラッドリーの瞼に、シェルエンの優しい微笑みが浮かぶ。
込み上げる激しい感情に、拳を強く握るしか出来なかった。
「……殿下はご無事ですか」
「物理的に血を失っているので貧血の症状が見られますが、お元気にしていらっしゃいます。ご自身の傷の回復は速いので、負傷した場所ももうしばらくすれば塞がると思われます」
「お帰りにはならないと?」
「馬車の中で待機する、と断固として動かれません。ブラッドリーが全ての民衆を救って帰還するのを待つ、と仰られています」
思わず両手で顔を覆った。
こんな鼓舞の仕方があるだろうか。
それはともすれば、武骨な騎士団員よりも強烈な張り手でブラッドリーの頬を叩く。
ブラッドリー・ジェスフォードならばひとり残らず救えるだろう、と己以上に信じる強い気持ち。
それは、どんな激励よりも確かに背中を押す。
暗闇の中でブラッドリーは、ひとつ大きな息を吐く。
「頂きます。デーヨさん、殿下に伝言をお願いしてもいいですか?」
「はい。どんな内容でも」
「では、こう伝えてください。殿下の慈愛の助けを借りて、必ず全員を救います。どうか俺を信じて待っていてください、と」
「承りました」
デーヨを見送る。
木箱を受け取ったブラッドリーは、一瞬それを強く強くかき抱いて、そして前を向いた。
シェルエンを思い出すだけで、底をついていた体力が復活するような気がした。
∞∞∞∞∞∞∞
夜空の天辺にあった上弦の月が、西の空へと傾く頃。
「終わった……」
「ブラッドリー様、これ以上の怪我人は出ないだろうとのことです」
増員した消火隊と大工集団の必死の頑張りが実り、囂々と燃えていた炎は半刻ほど前にこれ以上の延焼の可能性はないというところまで弱められた。
運河から調達した大量の水を直接火の元にかけた住民の機転も奏功した。
破壊された建物は数えきれない。
燃えてしまった宝物や、大事にしていた生活そのものは取り戻せない。
けれど、誰ひとりその命を落とすことはなかった。
誰も死ななかった。
大切な人を失わなかった。
それだけで、その事実だけで、人はきっとまた生きていけるだろう。
再会を喜ぶ住民の隙間を縫ってブラッドリーは走った。
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最後の気力を振り絞って、走って走って、そして辿り着いた。
もうどれくらいの時間が経っているかも曖昧になるほどに、しばらくぶりに見た小道に停まっている馬車。
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無言で扉を開けた。
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「ブラッドリー、お帰りなさい」
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左に座る皇子、シェルエンは瞼を閉じて深い呼吸を繰り返している。
「殿下は寝てますか?」
「夜中に起きてここまで移動して、そして沢山の血を抜きましたから。とてもお疲れのようです。ついさっきまでブラッドリーを迎えるんだと起きていらっしゃったんですが、限界が来たようです」
馬車を揺らさないように、細心の注意を払いながらブラッドリーは馬車に乗った。
シェルエンのすぐ横に腰かける。
「僕は後片付けを手伝ってきますので、しばしここで休憩をしてください」
扉は閉じられて、密室となる。
ふたりだけの空間には、小さな寝息だけが響く。
頬にかかる銀白の髪。
触れてしまったら起きてしまうだろうか。
そう案じるのに、顔が見たいという気持ちが強すぎて自分の行動を制御できなかった。
髪を耳の後ろへと流すと現れる血色を失った頬。
顔全体から首の下まで、一様に真っ青だった。
早く邸に帰ってあたためなければ具合を悪くしてしまう、そうした考えが頭に浮かんだとき、目の前の人の睫毛が震えた。
「……んん」
そしてゆっくりと開いていく瞼。
紫シルバーの瞳はぼんやりと鈍く微睡んだあと、確かな意識を持ってアクアブルーの瞳に焦点を合わせた。
「……ブラッドリー?」
「戻りました、殿下」
「お帰りなさい。お疲れ様でした」
凭れていた身体を起こす手伝いをする。
背中に腕を回すと、真っ直ぐにしていられないのか、くたりと身体を預けられる。
胸の中に収めてしまえば、至近距離で見つめ合う。
顔色が本当に悪い。
馬車に差し込む街灯のオイルランプに照らされてもなお、真っ白だ。
「住民の皆さんは無事ですか?」
「はい。皆、無事です」
「救えなかった命は?」
「ありません」
シェルエンが満足そうに大きく頷いた。
そして、儚げに優しく微笑む。
「優秀です。さすが私の護衛騎士ですね」
「殿下が新しく届けてくださった花がなかったら成し得ませんでした。俺は零れていく命を前に絶望の真っただ中で、ただ茫然と立ち尽くしていたと思います」
「きっとそんなことはないでしょう? どんなに危機的状況に瀕しても、あなたは決して諦めない。護るべきものを前にして、突き進まないブラッドリー・ジェスフォードではありませんから」
「殿下が断言するんですね」
「ええ、私が疑う心を持たぬほどに、あなたはいつも真っ直ぐですから」
細い指先が、ブラッドリーの頬を撫でる。
様々な汚れで地肌の色も判別が難しくなっているはずだ。
その手を剥がそうとするけれど、頬から滑り降りて顎先を掴んだシェルエンは、確認するように護衛騎士の顔を左右に振った。
「切り傷か擦り傷がありますか? それとも身体のどこかを怪我していますか?」
こびりついた血を見たのだろう。
それはもう、いつ付着したかも分からないほどに乾ききっている。
「これは俺の血ではありません。運んだ誰かのものです。殿下、俺はいまあり得ないほどに汚れているので、少し距離を置いた方がいいです」
「頑張りましたね。持てる全てを尽くして、救いましたね」
指先は相も変わらず頬を撫でる。
色の違うひとつひとつを確かめるように。
そのひとつひとつを、褒め称えるように。
自分が一番自分を犠牲にしたというのに。
持てる全てで人々を救ったのは、命を懸けて人々を救ったのは、シェルエンだというのに。
ブラッドリーは、右頬に添わされていた手を掴んで、指先に口づけをした。
何の意味があるかは己にも分からない。
衝動的に、触れたいと思った。
束の間そうして唇を寄せていた指先の下に、なんとはなしに視線を移す。
そして驚愕に息を飲んだ。
シェルエンの寝間着の袖先は、真っ赤に染まっていた。
手首には拭いきれなかった血が線を描いている。
もう片方も確認した。
全く同じ状態だった。
よく見ると、胴の部分や足にも血痕は散らばっている。
皇子は赤い花を咲かせるために、両の手首を傷つけていた。
袖にこんなにも滲んでいるということは、想像以上の大量出血だったに違いない。
手首を凝視して動かないブラッドリーに、シェルエンは穏やかな声音でこう告げた。
「奇病のせいか、私は傷が治るのが人一倍早いんです。知っているでしょう? 悲惨な格好をしていますが、血は止まっていますし傷口もほぼ閉じています。心配することはありません」
「痛かったでしょう……」
「慣れていますから、大丈夫です」
「自分を傷つけることには慣れても、痛みには慣れないものです。苦痛の記憶は脳が忘れてしまいやすいと聞いたことがあります。それが一度きりならばさっさと手放せばいいですが、殿下は赤い花を咲かすために何度も身体を切る。その度に……その度にいつもいつも痛みに襲われるんですね」
深ければ深いほどに激痛だろう。
時間を掛けて訓練を積んだ騎士でさえもいざ実戦となれば、斬られる恐怖に動けなくなる者は意外と多い。
足を震わせてうずくまる者も、這いつくばって逃げ出す者もいる。
痛みと、それに伴う苦しみに、人間はどうしたってその身を竦ませる。
タイミングの計れない他者相手でもそうなのだ。
自らを大きく傷つけることには、更なる恐怖と躊躇いが生じるだろう。
けれどシェルエンは、両の手首を切り裂いた。
痛みの記憶がまだ新しいうちにもう片方に刃を突き立てるのは、どんなに怖かっただろう。
勇敢だ。
高潔だ。
真の英雄だ。
「大丈夫ですから、そんなに悲しそうな顔をしないでください。ブラッドリー……ブラッドリー?」
ブラッドリーは、掴んでいた手首にそっと唇を寄せた。
口づけを落として、白い肌に散る赤い血を舐め取っていく。
「っ、やめなさい、ブラッドリー! 汚いですから、やめなさい!」
制止など聞かない。
汚い? 何を言うんだ。
こんなにも綺麗なのに。
世界で一番綺麗な血だ。
世界で一番気高い血だ。
世界で一番尊い血だ。
民を救った、思いやりに溢れた血だ。
「殿下……殿下……」
「っ……」
ブラッドリーの手はシェルエンの指先を絡めて離さない。
袖口を捲って肘まで露出した肌に舌を這わす。
時折、軽く吸った。
どうしてそうしているのか、自分でも分からない。
どうしてそうしたいのか、今はまだ分からない。
生まれたばかりの衝動に抗えず、ただひたすらにその赤を追いかけていた。
白む空に消えかかる満天の星だけが、見ていた。
海沿いの暗闇で。
伝書鳩から外した手紙を開いたその人は、忌々しげにそれをぐしゃりと握りつぶした。
「おのれ……!」
右手の指輪だけが、冷ややかに輝いていた。
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ルイとレオ~幼い夫が最強になるまでの歳月~
芽吹鹿
BL
夢を追い求める三男坊×無気力なひとりっ子
孤独な幼少期を過ごしていたルイ。虫や花だけが友だちで、同年代とは縁がない。王国の一人っ子として立派になろうと努力を続けた、そんな彼が隣国への「嫁入り」を言いつけられる。理不尽な運命を受けたせいで胸にぽっかりと穴を空けたまま、失意のうちに18歳で故郷を離れることになる。
行き着いた隣国で待っていたのは、まさかの10歳の夫となる王子だった、、、、
8歳差。※性描写は成長してから(およそ35、36話目から)となります
ヤンデレ王子と哀れなおっさん辺境伯 恋も人生も二度目なら
音無野ウサギ
BL
ある日おっさん辺境伯ゲオハルトは美貌の第三王子リヒトにぺろりと食べられてしまいました。
しかも貴族たちに濡れ場を聞かれてしまい……
ところが権力者による性的搾取かと思われた出来事には実はもう少し深いわけが……
だって第三王子には前世の記憶があったから!
といった感じの話です。おっさんがグチョグチョにされていても許してくださる方どうぞ。
濡れ場回にはタイトルに※をいれています
おっさん企画を知ってから自分なりのおっさん受けってどんな形かなって考えていて生まれた話です。
この作品はムーンライトノベルズでも公開しています。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました
藤吉めぐみ
BL
12/23後日談追加しました。
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高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。
ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。
そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。
冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで……
優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。
影武者は身の程知らずの恋をする
永川さき
BL
孤児院出身のライリーは農場で働いている傍ら、冒険者を副業としている。
しかし、農場では副業が禁止である上に、冒険者は孤児院で嫌悪の対象となっている。
解雇や失望されてしまう可能性があっても冒険者として働くのは、貧しい孤児院に仕送りをするためだった。
そんなある日、冒険者ギルドから帰宅する途中、正体不明の男に尾行される。
刃を交え、ギリギリのところで男を振り切ったが、逃げ切れていなかったとわかったのは、その数日後のこと。
孤児院に現れたのは王宮の近衛騎士の三人。
そのうちの一人であるユリウスは、ライリーが尾行を振り切った正体不明の男だった。
自身の出自を餌に、そして言外に副業やその内容をバラすと脅され、王宮に行くことを決意したライリーを待ち受ける運命とは……。
近衛騎士×元孤児の影武者の切ない身分差BL。
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