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本拠地7

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 李という旗に導かれ湾の中に入る。アユタヤの湾など問題外の船の数だ。まるで海の碁の争いのようだ。イギリスの商船がひと際は大きい。南蛮船はゆっくりと一番奥の港に着く。素早く荷が下ろされる。宗久と茉緒は馬車に乗せられ山の中腹まで登る。
 高台に聳える白い屋敷が李の自宅のようだ。門には30人ほどの私兵がいる。門から玄関までさらにある。馬車を降りると白髪の老人と若い男が立っている。宗久が白髪の老人と抱き合う。そのまま応接室に入る。お茶が運ばれてくる。
「堺ぶりですな?どうしてアユタヤに?」
 見事な日本語だ。
「徳川の世になって儂のような商人は無用になった」
「鎖国を引きましたな。平和かもしれないが世界から取り残される。こちらの美しい方は?」
「一番下の娘ですわ。そちらは?」
「こちらも3男で商売を継がせるつもりです。一人は提督の娘と結婚して警備隊長をしていますよ。次男はイギリスの商社に勤めていますよ」
 茉緒と若者が頭を下げる。
「今回はこの香港に商店を出そうと?」
「聞いておりますよ。明日でも息子に案内させましょう」
「汎王とは?」
 茉緒が口を挟んだ。
「汎王は恐ろしい男ですよ」
 息子が茉緒を見て真剣に言う。
「汎王には娘がいますか?」
「和寇の実質的な頭ですよ。護衛の中国の女忍者の間に生まれた娘です。有名な酒飯店に明日の夜に案内します。そこで汎王に会えますよ」










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