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東インド会社4

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 イギリス商船は1艇をアユタヤの港に残しインドに戻っていった。課長と事務員と警備隊が取りあえず凜の料亭に入った。
「料亭の女将の凜さんは茉緒さんの妹さんなのですね?」
 今日は茉緒は李課長を馬で開拓地に案内している。
「あれは怖いですよ。私より荒っぽい忍者ですから」
「女将も同じことを言っていましたよ。汎王を倒したと」
「汎王はどうなったか知りませんか?」
「沈んだ船から助け出されたが、死んだかどうかの話は聞いていないです」
 茉緒の手にまだ胸を突き通した感触が残っている。
 目の前に新田が拡がっている。茉緒の後ろに九郎が見守っている。戦いが済んでここには5千の近衛軍と開拓民が動員されている。屯田兵制度を導入している。
「来年には米の輸出も考えています」
「そうですね。ここは屯田兵だそうですね?」
 よく調べている。
「と言うことはアユタヤが1万の兵を持つ時代も近いですね?今この地域はビルマの力が衰えて実に不安定になっています。ラオスとアユタヤの関係はいいと聞いています。ここ辺りがまとまると強くなりますね」
「東インド会社はどう考えているのですか?」
「中で意見は分かれているのです実は。イギリスだけでなくどの国も商船と言いながら軍船です。契約を力で行うこともしばしばです。香港もそうです。でもアユタヤは慎重になっています」
 彼は正直だ。
「私の屋敷で夜飲みませんか?」




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