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東インド会社10

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 まず警備隊長が酒場の女と姿を消したと言う噂が流れた。これは夜に忍び込む女を見たと言う隊員の証言も出ている。さっそく統括部長が警備隊に探索命令を出した。これに合わせて王も近衛軍に同様の探索の指示を出した。翌日には商人隊からタオの納屋から大量のアヘンが出たと言う報告が上がった。これにはゴラクが九郎の近衛軍の調査に立ち合った。
 東インド会社の商館に李課長から茉緒が呼ばれた。2階の彼の執務室に入る。給仕がコーヒーを運んでくる。
「統括部長は?」
「今警備隊を50人連れてタオの商館に近衛軍と出かけています。あの方はこれを大きくして圧力をかけると心配しています。まず茉緒さんに聞くのが一番早いと?」
 彼はアユタヤ全体を裏で押さえているのは茉緒だと思っている。茉緒は表向きにはどんな官職にもついていない。南蛮船の持ち主と言うくらいだ。
「警備隊長は商船から毎回アヘンの包みを海に落としタオがそれを回収しています。これは会社の指示のようです。だが彼はそれとは別にアヘンを荷に隠して持ち込んでいます」
「すでに調べられているのですね?」
 どうも李課長も分かっていたようだ。
「アユタヤは東インド会社と揉めたくはないですが、アヘンの持ち込みは困ります」
「だが恐らく統括はイギリス商船を3艇を海に浮かべて交渉に入ります」
「そうでしょうね」
「あくまでも個人の犯罪で処理をしたいと考えています」
 茉緒は李課長と別れると王宮に入る。リーが迎えに来て王の部屋に案内する。サンベット王は机に向かって書類に印を押している。
「統括部長はイギリス商船を3艇こちらに向けたと脅してきたどうする?」
「ゴラクさんがタオの中の和寇の商人を捕縛しています。タオと警備隊長はすでに監禁済みです。一つ芝居を打ちます」
 











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